【小倉正男の経済コラム】トランプ大統領はグリーンランド併合に本気「米国第一」元祖はマッキンリー大統領

■プーチン大統領は米国のグリーンランド領有を容認

 トランプ大統領は、間違いなくグリーンランド領有(併合)に執念をみせている。おそらく、どこかの時点で本格的に仕掛ける。

 いまやトランプ大統領の“盟友”となっているロシアのプーチン大統領は、トランプ大統領の執念は「本気」と表明している。米国のグリーンランド領有案には長い歴史があるとしたうえでプーチン大統領は、「我々が問題にしているのは米国の真剣な計画だ」(AFP=時事)と警告めいた発言をしている。

 ただ批判色は抑えており、どこか余裕をのぞかせている。それどころか、米国のグリーンランド領有は「特定の2国間の問題で、我々とは関係ない」と語っている。

 グリーンランドはデンマークが主権を持っており、自治政府が統治している。プーチン大統領はそうしたことはおかまいなしに発言している。当然ながら、北極圏でも米露接近かと揶揄されている。ただし、ロシアとしては思うツボというか罠を用意しているのかもしれない。

 折も折だが、グリーンランド視察に訪れているヴァンス副大統領は、「デンマークはグリーンランドの安全保障に十分投資していない」と演説している。「米国の安全保障体制に入った方がずっとよい」。こちらもデンマークの主権などまったく眼中にはない。あるのは米国の一方的な都合(利益)だけである。

■トランプ大統領が崇拝するマッキンリー大統領は「米国第一」のひな型

 ウィリアム・マッキンリー(1843~1901年)、米国25代大統領である。トランプ大統領が崇拝してやまない人物だ。

 このマッキンリー大統領は、アメリカ・ファースト(米国第一)の元祖といえる。「私はタリフマン(関税男)だ」というセリフは、この大統領が使ったものだ。高関税の保護主義を経済政策の基本にしている。当時の製造業は英国が全盛期にあり、米国はまだ脆弱だった。高関税にはそうした時代背景があった。

 対外政策では、米国の領土を最大限に拡張している。国内では西部開拓が終了し、「米西戦争」に勝利してフィリピン、キューバ、ガアム、そしてハワイなどを併合・占領している。MAGA(メイク・アメリカ・グレート・アゲイン)で唱える米国の偉大な時代とは、このマッキンリー大統領の治世を指している。いわば、世界は帝国主義の真っただ中だったわけだが、そこに米国が足を踏み込んだ時期にあたる。

■プーチン大統領はトランプ大統領を泳がせる策か

 トランプ大統領は、このマッキンリー大統領を崇拝してやまない。しかもマッキンリー大統領の歩んだ道を忠実にたどっている。トランプ大統領は「(米国の)安全保障にとってグリーンランドは重要であり、米国が併合すべきだ」といった発言を繰り返している。グリーンランドへの執念はどこからみてもジョークの域にとどまっていない。

 プーチン大統領としたら、米国のグリーンランド領有は本来的にはとんでもない事態である。米国が安全保障からグリーンランドが重要とすれば、ロシアには安全保障上では大きな損失となるのは必至だ。

 しかし、米国がグリーンランドに触手を伸ばせば、デンマークとしては黙ってはいられない。ひいてはNATO(北大西洋条約機構)に後戻りができない亀裂が入る。それどころか、NATO分裂・解体の危機を迎える。

 米国と欧州諸国は、ウクライナ戦争停戦交渉など安全保障をめぐってお互いに不信感を強めている。グリーンランド領有問題は、最悪では米国とEU、あるいは欧州諸国との“戦争”状態を惹起しかねない。

 プーチン大統領としては、眼前にある最大の敵にほかならないNATOが分裂・解体の危機に突入するわけだから、願ってもない事態だ。プーチン大統領は、当面のところトランプ大統領のグリーンランドへの執念をいたずらに邪魔するのではなく泳がせる策のようにみえる。グリーンランド領有問題は、NATO分裂・解体の導火線に火をつける可能性を秘めている。。(経済ジャーナリスト)

(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営~クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリスト。2012年から当「経済コラム」を担当)(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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