【どう見るこの相場】地政学リスクの高まりでリスクオフ継続か?逆行高銘柄に追随買いの兆し

■ホルムズ海峡封鎖なら「油の一滴は血の一滴」、日本経済は瀬戸際へ

 コメ価格が高騰する「食料安全保障問題」の解消も、まだ道半ばというのに、今度は予期もしない「エネルギー安全保障問題」に見舞われた。前週13日にイスラエルが、イランの核関連施設や軍事施設を攻撃し、イランが、ドローン(無人機)やミサイルによる報復攻撃に応じ、中東情勢が緊迫化した。この情勢緊迫化が原油価格に影響するとして、13日の米国のマーカンタイル取引所では、原油先物(WTI)価格が一時、1バーレル=77.62ドルと9.58ドル高(14.0%高)と急騰し、今年1月以来の高値となったからだ。その後も、両国の交戦の激化が伝えられており、度重なる災禍は、「前門の虎 後門の狼」と言い表すが、前門の「コメ価格」、後門の「アブラ価格」の挟撃である。

■ホルムズ海峡の動向が日本の生命線

 原油価格の高騰だけなら、資産大国の日本にとっては、相対的に軽微な影響にとどまるはずである。しかしこれが、第5次中東戦争に悪化し、イランが、原油輸送の大動脈のホルムズ海峡の封鎖することがあれば、日本の原油輸入の約9割がそのホルムズ海峡経由となるだけ首根っこを抑え込まれ、またかつての第4次中東戦争時のように、湾岸産油国が一枚岩になって、原油の禁輸措置などが発動されるようなら原油の供給不安が一気に高まる。まさにかつていわれていた「油の一滴は血の一滴」になり日本経済は瀬戸際に追い込まれる。石破茂首相は、産油国への「油乞い外交」を迫られることにもなり兼ねない。

■鉱業・石油株:原油価格高騰:株価上昇

 このイスラエルのイラン攻撃は、13日朝の取引開始直後に伝えられ、リスク回避売りが増勢となり、13日の日経平均株価は一時632円安と急落した。その一方で、少数ながら逆行高する銘柄も目立った。防衛関連株、鉱業株、石油株、海運株、金先物関連株などである。いずれも軍事情勢の緊迫化や原油先物価格高騰が、むしろピンチがチャンスになると期待された銘柄ばかりで、INPEX<1605>(東証プライム)や三菱重工業<7011>(東証プライム)などは、年初来高値を更新した。INPEXは、経営統合した帝国石油が、かつての第1次石油危機後に磐城沖ガス田開発を材料に演じた大相場の記憶が、遥か遠く彼方から甦りさらに投資意欲を刺激することになるかもしれない。

■地政学リスク:逆行高銘柄、買い継続か

 逆行高銘柄が、今週週明けもなお買い物を集めるかどうかは、イスラエル・イランの軍事衝突の先行き次第となるのはいうまでもない。かつての中東戦争は、短期間でイスラエルの勝利となったが、今回はパレスチナのガザ問題と同様にドル沼化するのか、米国が、両国の戦争に引き込まざるを得なくなるか、湾岸産油国が、石油禁輸に踏み切るのか、イランがホルムズ海峡を封鎖するのかなどなど、どれもこれもまだ不透明なまま推移することになる。ということは、いましばらくはリスクオンよりリスクオフが正解で、後追いとはなるが、前週末に逆行高した銘柄への順張り、追随買いが無難となる。「コメ」関連株も「アブラ」関連株も、価格が高いうちは買いということになりそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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