【どう見るこの相場】世界と日本を襲う「今、そこにある危機」にどう対処すべきか

どう見るこの相場

■インフルエンザ・大雪・トランプ…投資家は今、何をすべきか

 『今、そこにある危機(Clear and Present Danger)』は、CIA(米中央情報局)と麻薬組織の暗闘を描いた映画化もされたアクション小説である。その小説のタイトルを上回るように、現実に差し迫っている「今、そこにある危機」がある。米国のトランプ次期大統領である。1月20日の大統領就任式を前に不規則発言が止まらないからだ。メキシコ湾をアメリカ湾に改称することを主張したかと思えば、グリーンランドの取得やパナマ運河の国有化に言及して領土的な野心を隠さない。相手国の首脳は、強圧的なブラフの火消しに追われ続け国際的な物議を醸している。

 20日の大統領就任後は、「裸の王様」ではなく世界最大の権力者としての責任を自覚して不規則発言乱発の自粛を願いたいところだ。しかし、就任と同時に米議会襲撃事件で有罪判決を受けた受刑者の恩赦や、政権移行チームが、国際緊急経済権限法(IEEPA)を発動し関税引き上げにフリーハンドを握ることを検討しているとも伝えられており、予断を許さない。ただもともと予測不可能とされているトランプ次期大統領であり、不規則発言の方向性が真逆になり、ピンチがチャンスに一変することもあるかもしれない。そのケースでは、相次いでトランプ詣でをして揃って100万ドルの政治献金をした巨大テック株が、まずマーケットで買われる第一候補となりそうだ。

■トランプ大統領の暴言が世界を混乱に陥れる

 トランプ次期大統領のグローバルな「今、そこにある危機」とは別に、東京市場でも「今、そこにある危機」がある。前日の成人の日の13日午後9時過ぎに発生した日向灘を震源とする震度5弱の地震もさることながら、インフルエンザの過去最多の大流行と日本海側を中心とする大雪による雪害である。このうちインフルエンザは、昨年11月に例年より1カ月早く流行期入りし、厚生労働省は、2024年12月23日~29日の感染患者数は、31万7812人となり統計開始以来、過去最多と発表した。乳幼児ではインフルエンザ脳症で死亡したケースも報告された。一方、大雪も日本列島上空に強い寒気が流れ込み、すでに降雪量が例年の3倍に達した地域も報道され、屋根からの雪下ろし作業中の転落事故で死亡者が出ているケースも報告されている。

 ただこちらの「今、そこにある危機」は、季節性、一過性の危機にとどまり、冬を過ぎ春がくれば一巡することになる。とすればピンチは、任期4年のトランプ次期大統領とは異なって、チャンスに一変するカタリストを含有するはずである。現にマーケットでは、すでにこれを先取りして関連株買いが続いている。インフルエンザの流行では、インフルエンザの治療薬株やマスク株、雪害関連株では除雪機株やホームセンター株などである。

 3連休前の前週末10日は、日経平均株価が3営業日連続で大幅安となったことに重なり、インフルエンザ治療薬「タミフル」の需給ひっ迫に生産が追い付かず出荷調整を発表した中外製薬<4519>(東証プライム)の株価が急落した。これに引っ張られて治療薬株が、総じて売られた。それでもインフルエンザ感染症の抗原簡易検査キット株には高値反応をする銘柄もあり、また雪害関連株でも、一部除雪機関連株に動意がみられた。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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