マルマエ、半導体需要回復とKMアルミニウム子会社化で大幅増収増益、株価も堅調推移

 マルマエ<6264>(東証プライム)は半導体・FPD製造装置向け真空部品などの精密切削加工を展開し、25年4月にKMアルミニウム(以下、KMAC)を子会社化した。長期ビジョンとして「幅広い分野の総合メーカーを支える部品加工のリーディングカンパニー」を目指している。25年8月期第3四半期累計(第3四半期より連結決算に移行)は、半導体分の需要回復やKMACの新規連結により大幅増収増益だった。そして通期も収益が大幅に拡大する見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は戻り高値圏で堅調だ。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。

■半導体・FPD製造装置向けの精密切削加工を展開

 半導体・FPD(フラットパネルディスプレー)製造装置に使用される真空部品や電極などの精密切削加工、および電子ビーム溶接(EBW)を展開し、半導体・FPD製造装置の真空パーツを作るノウハウ、同業他社に比べて高い生産性・低コスト、急変動する半導体・FPD市場に柔軟に対応できる設備力、ワンストップ受注に対応する多工程生産能力などを強みとしている。25年4月には半導体スパッタリングターゲット用超高純度アルミニウム製品等を製造・販売するKMアルミニウム(以下、KMAC)(福岡県大牟田市)を子会社化した。

 作業補助・介護ロボットの開発(鹿児島大学と共同研究)では、18年7月に第二種医療機器製造販売業の許可を取得し、医療機器製造業の登録を行った。

 24年8月期の全社受注高は23年8月期比0.6%増の51億97百万円(内訳は半導体分野が13.4%増の37億94百万円、FPD分野が72.6%増の13億14百万円、その他分野が91.7%減の88百万円)だった。半導体分野の受注高を四半期別に見ると第1四半期が6億39百万円、第2四半期が8億49百万円、第3四半期が11億80百万円、第4四半期が11億26百万円で回復基調となっている。

 分野別の売上高は、半導体分野が21.5%減の35億58百万円、FPD分野が30.2%増の10億08百万円、その他分野が97.0%減の41百万円だった。半導体分野は通期ベースで大幅減収だが、在庫調整進展によって消耗品の受注が回復傾向となった。FPD分野はOLED向けが好調に推移した。その他分野は太陽電池製造装置部品の受注遅延が影響した。利益面は売上減少と稼働率低下で大幅減益だった。なお受注損失引当金は46百万円減少した。なお24年8月期の消耗品売上比率は半導体分野が53.2%、FPD分野が13.3%だった。

■消耗品強化で受注安定化を推進

 長期ビジョンとして「幅広い分野の総合メーカーを支える部品加工のリーディングカンパニー」を目指し、中期事業計画では成長戦略として消耗品拡大による受注安定化、市場シェア拡大に向けた能力増強投資、ESG経営などを推進している。

 また25年7月には、KMAC連結を反映した新たな中期事業計画「Fusion2028」を策定し、最終年度28年8月期の計画として売上高250億円、営業利益56億円、ROIC15%を掲げている。株主還元については年間30円を最低配当額(通期最終損益赤字時は再検討)として、配当性向35%以上を目標とする。

 セグメント別計画は、精密部品事業(マルマエ)の売上高120億円(半導体既存分野60億円、半導体新規分野40億円、FPD・その他20億円)、営業利益36億円、営業利益率30%、機能材料事業(KMAC)の売上高130億円(IT器材分野38.7億円、半導体装置部材分野36.1億円、基礎素材分野55.1億円)、営業利益23億円、営業利益率18%、共通営業費用3億円としている。

 また中長期的な取り組みとしてESG経営を推進する。太陽光・蓄電池導入などによりサプライチェーン全体でのGHG削減に取り組み、2040年までにネットゼロ達成を目指す。さらに人材・ガバナンス面では、人材戦略の進化、次世代経営陣の育成、全社的リスク管理強化などを推進する。

 25年2月には、国際的な環境非営利団体CDPによる2024年度の気候変動に関する調査において、中小企業向け評価(SME)で最高スコアとなる「B」スコア(マネジメントレベル)を取得した。22年度には「D」スコア(情報開示レベル)、そして23年度には「C」スコア(認識レベル)を取得しており、着実なスコアの向上を実現している。

■25年8月期は半導体分野の需要回復やM&Aにより収益拡大

 25年8月期第3四半期累計の連結業績は売上高が72億69百万円、営業利益が14億50百万円、経常利益が13億38百万円、そして親会社株主帰属四半期純利益が9億39百万円だった。KMACを新規連結して第3四半期より連結決算に移行したため前年同期との単純比較はできないが、前年同期の非連結決算(売上高33億44百万円、営業利益24百万円、経常利益58百万円の損失、四半期純利益51百万円)に対して大幅増収増益だった。

 精密部品事業(マルマエ)の売上高は58億42百万円、営業利益(全社費用等調整前)が14億06百万円だった。半導体分野を中心とする需要回復に伴って大幅増収増益だった。分野別売上高は半導体分野が前年同期比85.3%増の45億91百万円、FPD分野が39.1%増の10億26百万円、その他分野が103.1%増の58百万円だった。

 機能材料事業(KMAC、25年4月~5月の2ヶ月分)は売上高が14億26百万円、営業利益が1億49百万円だった。IT器材分野(半導体・FPD製造用ターゲット材向け消耗材、アルマイト処理など)は、北米ロジックメーカー向けアルマイト処理が停滞したが、半導体・FPD製造用ターゲット材向け消耗材が好調に推移した。半導体装置部材分野(半導体エッチング装置用の真空チャンバーなど)は顧客の在庫調整の影響が継続している。基礎素材分野(電解コンデンサ用・HDD用の高純度アルミなど)は戦略的な価格適正化や低付加価値受注削減などにより利益率が改善した。

 通期の連結業績予想(KMACの25年4月~8月分を新規連結、25年6月20日付で公表)は売上高が112億54百万円、営業利益が19億円、経常利益が17億14百万円、親会社株主帰属当期純利益が12億65百万円としている。配当予想は前期比10円増配の40円(第2四半期末15円、期末25円)で、予想配当性向は40.0%となる。

 前期の非連結業績(売上高47億49百万円、営業利益1億56百万円、経常利益42百万円、当期純利益19百万円)に対して大幅増収増益の形となる。売上高の内訳はマルマエが前期比60.7%増の76億32百万円、KMACの5ヶ月分が36億22百万円としている。コスト面はM&A関連一時費用(営業利益段階で1.1億円、営業外で0.6億円)、当期のれん等償却1.2億円、借入金増加による金利負担0.8億円が発生するが、マルマエの営業利益上振れやKMACの営業利益4億円などを見込んでいる。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は毎年8月末時点で6ヶ月以上継続保有株主対象

 株主優待制度(詳細は会社HP参照)については、毎年8月末日現在で6ヶ月以上継続1単元(100株)以上保有株主を対象としてクオカードを贈呈している。

■株価は戻り高値圏

 株価は戻り高値圏で堅調だ。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。7月30日の終値は1574円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS99円93銭で算出)は約16倍、今期予想配当利回り(会社予想の40円で算出)は約2.5%、そして時価総額は約205億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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