NTTと三菱重工、レーザ無線給電で世界最高効率を実証、1km先に152W送電成功

■ビーム整形と出力平準化技術を融合し大気揺らぎを克服

 NTT<9432>(東証プライム)と三菱重工業<7011>(東証プライム)は9月17日、レーザ光を用いた長距離光無線給電の実験で世界最高効率を達成したと発表した。両社は、和歌山県白浜町の旧南紀白浜空港滑走路において1km先にレーザ光を照射し、1kWの送光から152Wの電力を得ることに成功した。これは大気の揺らぎが強い環境下でシリコン製光電変換素子を用いた給電として世界最高効率15%に相当する成果である。送光側では長距離伝搬後に光を均一化する「フラットビーム整形技術」を、受光側では大気変動の影響を抑える「出力電流平準化技術」を適用し、30分間の連続給電実証にも成功した。成果は英国科学誌「Electronics Letters」に掲載され、国内外で注目を集めている。

 背景として、スマートフォンや電気自動車など無線給電のニーズが高まり、特に災害時や離島など電力供給が難しい地域での応用が求められてきた。従来のレーザ無線給電は効率の低さが課題であったが、両社の技術を組み合わせることで屋外長距離環境下でも安定した給電が可能であることを示した。実験は滑走路上に送光ブースと受光ブースを設置し、回折光学素子や方向制御ミラーを駆使して高精度のビーム伝送を実現した。受光部ではホモジナイザと平準化回路を活用し、変動を抑えて安定出力を確保した。これにより従来困難とされた遠隔地への高効率給電が現実味を帯びてきた。

 今後は波長に最適化した光電変換素子や大出力レーザの採用でさらなる高効率化が期待される。応用分野は広く、離島や被災地への電力供給に加え、飛行中のドローンへの給電による長時間運用、通信中継の拡大、さらにはNTTが進める宇宙事業「NTT C89」の一環としてHAPSや宇宙データセンタ、月面探査機への給電などが想定されている。レーザ無線給電技術は、社会インフラから宇宙開発に至る多様な分野で新たな市場を切り開く基盤となる可能性が高い。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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