マーチャント・バンカーズ、25年10月期は大幅営業・経常増益予想、3Q累計も順調、不動産売却が寄与
- 2025/9/22 07:05
- アナリスト銘柄分析

マーチャント・バンカーズ<3121>(東証スタンダード)はマーチャント・バンキング事業として不動産・企業投資関連事業を展開している。今後の投資方針としては27年10月期末を目標に、全体の投資金額の3分の1程度ずつを融資、エクイティ、不動産に投資するポートフォリオの構築を目指すとしている。25年10月期は大幅営業・経常増益予想としている。安定的な家賃収入をベースとして、賃貸用不動産の取得・売却を積極的に行う方針だ。第3四半期累計が大幅営業・経常増益と順調であり、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は安値圏に回帰して軟調だが、ボックスレンジの下限に到達した形だ。調整一巡して出直りを期待したい。
■マーチャント・バンキング事業を展開
マーチャント・バンキング事業として国内外における不動産・企業投資関連事業を展開している。グループは同社および連結子会社5社の合計6社(24年10月期末時点)で構成されている。
同社は国内不動産投資、国内企業投資、海外企業投資を展開し、連結子会社のMBKプロパティ(東京都)は不動産管理運営業務、エストニアン・ジャパン・トレーディング・カンパニー・ホールディングス(東京都)はエストニア共和国での事業展開に関する統括業務、Estonian Japan Trading Company AS(エストニア)はエストニア共和国での事業展開に関する統括業務、エストニアン・ジャパン・トレーディング・カンパニー日本(東京都)は国内および海外への不動産投資、O’Pen Eesti OU(エストニア)は海外展開に関するコンサルティング業務を展開している。
不動産投資関連は、主にネット利回り5%以上を期待できる大都市圏の賃貸用マンションを中心に、安定的収益源となる資産性の高い収益不動産の取得を推進するとともに、保有物件売却による売上利益の積み上げも推進している。
企業投資関連は、投資先とともに企業価値を創造するハンズオン型の投資を行い、バリューアップによるエグジットを目指す。投資実績としては、ブロックチェーンプラットフォーム開発のアーリーワークス、デジタルマーケティング支援のポイントスリー、ブライダル・ホテル運営のホロニック、見守り型介護ロボット開発のIVホールディングスなどがある。
23年3月にはセキュリティチップ開発・製造のEnova Technology社(台湾)に資本参加した。23年12月にはプラスチック循環再生事業を手掛ける循環資源ホールディングスと資本業務提携(5.77%出資)した。24年10月にはアジア市場中心にゲームソフト販売等を展開するGCL Global Limited(GCL社)が発行した転換社債200千米ドルを取得した。この転換社債の権利行使を行う際はGCL社のグループ会社であるGCL Global Holdings(GCLGH社)が発行する株式を取得することになる。
24年11月には、ColorsJapan社と、貸付型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)による資金を活用し、地方創生型のM&Aに取り組むと発表した。第1号案件として伊香保温泉「明野屋」など、ColorsJapan社のホテル・旅館プロジェクトのクラウドファンディングに着手した。
■今後の投資方針
25年5月に今後の投資方針を公表した。27年10月期末を目標に、全体の投資金額の3分の1程度ずつを融資、エクイティ、不動産に投資するポートフォリオの構築を目指すとしている。
具体的施策として、融資では上場株式担保融資(25年1月に株式担保融資事業の取組開始をリリース)を中心に、売掛金や不動産などを担保とした融資事業に取り組む。25年4月には株式担保融資事業で財全GROUP社と業務提携した。エクイティのM&Aでは、24年6月に業務提携したColorsJapan社をはじめとする協力先からの紹介・提案案件活用する。企業・案件への投資では、業務提携等も活用しながら再生エネルギーや系統系電池などの分野への投資を継続する。また不動産では、これまで注力してきた投資用マンション等の物件に加え、仲介事業にも注力して収益性を強化する。
25年7月にはHTソーラー並びにREITと、Non-Fit太陽光発電所(電力会社による固定買い取り制度を適用しない太陽光発電所)開発事業への投資に共同で取り組むことを目的に業務提携基本合意書を締結した。25年8月には第1弾のプロジェクトとして、耕作放棄地や遊休地20件をNon-Fit太陽光発電所に転用する事業に着手した。またREITと系統用蓄電池開発事業に関して業務提携した。
25年9月には台湾EUKA Powerと、九州を中心とした日本国内における系統用蓄電池開発プロジェクトを協業して取り組むことについて、正式契約締結に向けての協議を行う旨の基本合意書を締結した。最初のプロジェクトは日本最大級の蓄電容量の大規模蓄電発電所であり、25年までに建設を開始し、26年の系統連系・発電開始を予定している。
■25年10月期大幅営業・経常増益予想で2Q累計順調
25年10月期の連結業績予想は売上高が前期比3.5%増の46億円、営業利益が84.0%増の6億円、経常利益が152.5%増の2億50百万円、親会社株主帰属当期純利益が9.9%増の2億円としている。配当予想は24年10月期と同額の2円(期末一括)としている。予想配当性向は29.3%となる。
第3四半期累計(24年11月~25年7月)は売上高が前年同期比5.9%増の23億02百万円、営業利益が61.5%増の2億30百万円、経常利益が6.2倍の38百万円だった。親会社株主帰属四半期純利益は前期計上の特別利益(関係会社株式売却益90百万円)が剥落して71.8%減の25百万円だった。
不動産物件の売却が進み大幅営業・経常増益だった。不動産売却は4物件(札幌市中央区、東京都練馬区、東京都大田区、大阪府和泉市)合計で売上高15億31百万円、営業利益1億83百万円)だった。一方で1物件(東京都杉並区、取得経費26百万円)を取得した。また売上高のうち、保有不動産物件(販売用不動産を除く)の賃貸収入による売上高は6億77百万円だった。なお営業外費用では株式交付費38百万円、株主優待引当金繰入額13百万円を計上した。
全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が5億75百万円で営業利益が40百万円、第2四半期は売上高が10億52百万円で営業利益が64百万円、第3四半期は売上高が6億75百万円で営業利益が1億26百万円だった。
通期連結業績予想は期初計画を据え置いている。10億円体制を構築した安定的家賃収入をベースとして、賃貸用不動産の取得・売却を積極的に行う方針だ。なお25年6月には営業投資有価証券として保有していたCN Innovations Holdings Limited(香港に拠点を置く金属加工やカバーガラス事業を営む投資会社、以下:CNI社)の株式売却に伴い、CNI社より特別配当金43百万円並びに精算金37百万円の合計81百万円を受領したとリリースしている。25年10月期業績予想に織り込み済みで、25年10月期第3四半期の売上高並びに各利益段階に計上した。
第3四半期累計の進捗率は低水準(売上高50.0%、営業利益38.3%、経常利益15.2%、親会社株主帰属当期純利益12.5%)の形だが、第4四半期はすでに2物件(名古屋市中区、川崎市多摩区)の売却により売上高8億14百万円、営業利益70百万円を確保している。また不動産以外の案件投資への取り組みも強化する。第3四半期累計が大幅営業・経常増益と順調であり、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株主優待制度
なお24年6月3日に株主優待第3弾を発表した。24年10月31日から1年間3単元(300株)以上保有した株主を対象にクオカード5000円分を贈呈する。また24年10月28日に株主優待第4弾の実施を発表した。株主優待実施頻度を拡充し、25年4月末時点で60単元(6000株)以上保有株主を対象に、資本業務提携先であるColorsJapanが地域創生案件として取り組んでいる宿泊施設の6万円相当の宿泊券などを贈呈(1品を選択)する。
■株価は調整一巡
株価は安値圏に回帰して軟調だが、ボックスレンジの下限に到達した形だ。調整一巡して出直りを期待したい。9月19日の終値は273円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS6円83銭で算出)は約40倍、今期予想配当利回り(会社予想の2円で算出)は約0.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS142円71銭で算出)は約1.9倍、そして時価総額は約87億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)