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【小倉正男の経済コラム】トランプ大統領「相互関税」発令から半年、中国に100%追加関税を表明、「米中貿易戦争」再燃
- 2025/10/13 10:00
- 小倉正男の経済コラム

■トランプ大統領が名付けた「解放の日」から半年・・・
振り返って考えてみたら、ちょうど半年を越えたことになる。4月2日、トランプ大統領は、全ての貿易相手国に「相互関税」を課すと発表。「米国の巨額かつ恒常的な財貿易赤字をもたらしている貿易慣行を是正する」と大統領令で宣言している。
トランプ大統領は、この4月2日を待ちに待った「解放の日」と名付けている。
「米国の産業が生まれ変わった日、米国が宿命を取り戻した日、そして米国を再び裕福になるために我々が動き出した日として記憶される」
関税の不利を回避したいなら、“米国に工場を作れ”というのが究極の狙いだ。工場を作れば、建設工事が始まり、製造機器・装置などを据え付ける設備投資が行われる。工場が建ち上がれば、製造などを担当する人々への雇用が生まれる。
■威信を捨てて「近隣窮乏化」=「失業の輸出」
これは「近隣窮乏化」の極致であり、ついに米国はそんなことを始めたかということになる。
貿易相手国のどこかが米国に工場を移せば、その国にとっては雇用が減少することを意味する。米国から失業を“輸出”されることに等しい。米国にとっては雇用の“輸入”にほかならない。
失業=窮乏化を貿易相手国に押し付けるのだから、公正なやり方かどうかといえば公正なやり方とはいえない。「解放の日」とか身勝手に名付けて世界に堂々と発表するようなこととは、本来的に対極にあるアジェンダである。
「米国第一」による一方的な貿易ルールの変更であり、米国が大幅に優位を確保するというやり方だ。「米国の産業が生まれ変わった日」といえば聞こえはよいが、他国の産業を移し変えるだけだから、米国の“ノブレスオブリージュ”、威信などはゴミ箱に捨てられたようなものである。
いわば、矜持を捨ててなりふり構わず世界経済の現状を変更する。他国の産業でも米国に移し替えれば、立派に米国産業に成り変わる。歌舞伎のセリフでいう「ヒビあかぎれを白足袋で隠す」といった現状変更だ。ロシアによるウクライナ侵攻などの「力による現状変更」とは違って、一応平和裏に他国の有望企業・産業を米国化するという目論見になる。
■「米中貿易戦争」再燃、自民党・公明党の連立解消
世界はたかだか半年で“トランプ疲れ“に陥っている。もうトランプ大統領のニュースは見たくない。トランプ大統領が何を発言しようがどう立ち回ろうが、無関心を装い意識的に係わりを絶つという人々も増加している。
ただし、“トランプ疲れ”はまだ早い。トランプ大統領を遮断しても、「トランプ劇場」はまだ閉幕したわけではない。
前週末、「米中貿易戦争」が再燃している。トランプ大統領は11月1日から中国製輸入品に100%追加関税、米国製重要ソフトウェアの輸出規制を課すと表明(10月10日)。中国がレアアース(希土類)の輸出規制を強化していることに反発している。
「トランプ劇場」、トランプ大統領は100%追加関税を振りかざして何やら中国・習近平主席に仕掛けている。中国は報復措置で応戦する構えだ。相変わらずのデジャブ(既視感)だが、週末のNYダウは878ドル安、NASDAQは820ドル安の大幅下落となっている。
日本のほうは自民党、公明党の連立解消(離脱)が決定した。一気に政権枠組みは不透明感を増している。前週は「高市トレード」により史上最高値更新で賑わった。相場は上げたり下げたりだが、3連休明けの東京市場は一転して大荒れとなりそうである。(経済ジャーナリスト)
(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営~クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリスト。2012年から当「経済コラム」を担当)(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)