神鋼商事、26年3月期は経常・最終増益予想、営業外収支改善で増益を確保

 神鋼商事<8075>(東証プライム)は、KOBELCO(神戸製鋼グループ)の中核商社として鉄鋼、アルミ・銅、原料、機械、溶接分野に展開している。成長戦略としては、重点分野と位置付けているEV・自動車軽量化関連および資源循環型ビジネス関連の拡大を推進している。26年3月期は鋼材価格下落や販管費増加などで営業減益だが、営業外収支改善により経常・最終増益予想としている。中間期は減収減益だったが、積極的な事業展開で通期ベースでの収益拡大を期待したい。株価は年初来高値圏から反落したが、低PER、高配当利回り、低PBRといった指標面の割安感も評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。

■KOBELCO(神戸製鋼グループ)の中核商社

 神戸製鋼所<5406>系で、KOBELCO(神戸製鋼グループ)の中核商社として鉄鋼(特殊鋼・鋼板製品等)、アルミ・銅(銅製品、アルミ製品、非鉄金属地金・スクラップ等)、原料(鉄鋼原料、資源循環ビジネスの鉄スクラップ・バイオマス燃料等)、機械(製鉄・非鉄機械、化学機械、環境関連機器、建機部品、電池材料等)、溶接(溶接材料、溶接関連機器等)分野に展開している。成長戦略としては、重点分野と位置付けているEV・自動車軽量化関連および資源循環型ビジネス関連の拡大を推進している。

 直近のM&A・アライアンスとしては、24年4月に超小型モビリティの製造・販売やMaaS事業を展開するKGモーターズ(広島県東広島市)に出資、子会社のマツボーとともに珈琲豆用や医薬・化学業界向けの粉砕製粒機(グラニュレーター)を展開する日本グラニュレーターの全株式を取得して連結子会社化、24年6月に神和アルミ工業と共同で半導体製造装置向けアルミチャンバーの加工会社を設立、25年1月に山陽精機に追加出資して関係会社(持株比率34%)とした。25年6月には田口金属と、非鉄金属スクラップのリサイクル事業を行う合弁会社設立の検討を行うことで基本合意(26年4月に関東エリアにおいて設立する予定)した。

 25年3月期のユニット別経常利益は、金属本部の鉄鋼ユニットが56億02百万円、アルミ・銅ユニットが30億94百万円、原料ユニットが1億73百万円、機械・溶接本部の機械ユニットが22億85百万円、溶接ユニットが7億03百万円、その他(不動産賃貸事業等)が97百万円の損失だった。取扱数量と市況の影響で変動しやすい特性がある。

■中期経営計画2026

 24年5月に策定した新中期経営計画2026(25年3月期~27年3月期)では、長期経営ビジョン2030で掲げた「明日のものづくりを支え、社会に貢献する商社」の実現に向けて、重要目標達成指標(KGI)として最終年度27年3月期の経常利益145億円、ROE(自己資本利益率)10.0%以上、ROIC(投下資本利益率)6.5%、自己資本比率21%以上、D/Eレシオ0.7倍以下目安を掲げている。

 また25年5月には新たに目標値を定めた政策保有株式縮減方針を発表した。27年3月期までに連結純資産に対する政策保有株式の割合を15%以下にする。また将来的には同割合を10%以下とすることを目指し、縮減によって得られた資金を成長投資に活用する。なお25年3月期末時点の割合は24年3月期末比13.0ポイント低下して18.3%となった。

 株主還元については「連結配当性向30%以上または1株当たり配当300円のいずれか高い方」とする。なお25年4月1日付で株式3分割を実施したため、26年3月期より「連結配当性向30%以上または1株当たり配当100円のいずれか高い方」となる。

 基本戦略としては、本計画期間を「第二の創業」の本格化のステージ(前計画で掲げた質の高い経営と真のグローバル企業への変革を具現化するステージ)と位置付けて、事業ポートフォリオ変革等による収益力強化、重点分野・地域や新規事業等への投資促進、DX推進等による商社機能強化、経営基盤の強化に加え、サステナビリティ・人的資本・資本コスト経営を推進し、企業価値向上を目指すとしている。これに伴い25年3月期より、従来の5本部体制を金属本部(鉄構ユニット、アルミ・銅ユニット、原料ユニット)と機械・溶接本部(機械ユニット、溶接ユニット)の2本部制に再編するとともに、営業本部から独立した新事業推進室を設置した。

 ビジネスの3つの柱として、現在のKOBELCOグループビジネス、および神鋼商事オリジナルサプライチェーンビジネスから得られる利益を拡大するとともに、サステナビリティをキーワードにSX新規事業推進案件への投資を進め、将来の収益柱育成を目指す。

 3ヶ年合計の投融資額は230億円(うちDX&IT関連投資30億円)の計画としている。オリジナルサプライチェーンへの投資を拡大するとともに、エリア的にはアセアン・インドを成長地域と捉えて重点投資を行う方針で、本中計期間中の投資による利益貢献額は15億円程度を見込んでいる。なお25年3月期の投資実績は19億円で、26年3月期の投資計画は77億円としている。

 25年4月には、熊谷組および清水鉄工が推進するが愛媛県西条市で推進する脱炭素バイオマス燃料「木質ブラックバークペレット(国産バーク材原料)製造・販売事業に参画した。また北陸の金属リサイクル企業であるクルマ商事と新たなパートナーシップを築き、建材用アルミサッシ向けのアルミ原料を集荷・選別・販売する同社独自のサプライチェーンの中核の一つとなる「アルミスクラップ格上げ事業」へ参入した。

 25年8月にはグループ会社の神商精密が真岡市と工場建設用地の予約譲渡に関する協定を締結した。27年3月の土地引き渡し後に着工し、28年7月よりアルミ精密加工事業および水平リサイクル事業を開始する。25年9月にはマレーシア現地法人と、マレーシアにおけるバイオマス燃料関連ビジネスをPalmitco社とともに推進していくLOI(意向表明書)を締結した。PKS(パーム椰子殻)の安定供給などサプライチェーン強化を推進する。

 25年11月には、航空・宇宙および防衛分野の販売業者に対するマネジメントシステム規格であるAS9120B認証を取得した。今回の認証取得により、今後一層の成長が期待される航空宇宙分野でのサービスのさらなる品質向上および販売拡大を推進する。

■サステナビリティ経営

 サステナビリティ経営に関しては、22年4月にサステナビリティ基本方針と重要課題(マテリアリティ)を制定した。23年2月には光変換光合成促進農法社(長野県岡谷市、以下:光変換社)へ資本参加して業務提携した。光変換社は、光変換光合成促進農法による農作物栽培用資材および農作物の生産販売を目的として09年に設立された農業法人で、高麗人参を短周期で収穫する短期促成栽培システム(19年に特許登録)を開発している。

 23年9月には、ちとせグループの統括会社であるCHITOSE BIO EVOLUTION(シンガポール)に出資し、藻類基点の新産業を構築する「MATSURIプロジェクト」に参画した。同グループと協業し、微細藻類によるカーボンリサイクルや微細藻類を使った新規事業開津など、新たな資源循環型ビジネスモデルの構築を目指す。23年10月には「神鋼商事グループ人権基本方針」を制定した。

 23年12月には、奥村組<1833>、丸紅クリーンパワー、大成建設<1801>とともに、北海道石狩市における早生樹の植樹実証事業の開始を発表した。植樹した早生樹を石狩市内のバイオマス発電所で燃料の一部として使用することを見据えており、地産地消によるエネルギー事業の可能性を検討する。24年7月には奥村組および国立大学法人室蘭工業大学と共同で、木質バイオマス発電所から発生する木質系バイオマス燃焼灰の有効活用に向けた研究を開始した。

 25年2月には、環境情報開示システムを提供する国際環境非営利団体であるCDPによる「気候変動」に対する取り組みや情報開示の評価において、気候変動分野が3年連続の「B」評価、水セキュリティ分野が初の「B―」評価を取得した。また厚生労働省東京労働局より子育てサポート企業として「くるみん認定」を受けた。25年3月には、経済産業省と日本経営会議が選定する健康経営優良法人認定制度において、23年から継続して「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」に認定された。

 25年11月には、経済産業省が主導するサーキュラーエコノミーに関する産官学連携パートナーシップ「サーキュラーパートナーズ」に参画した。

■26年3月期経常・最終増益予想

 26年3月期の連結業績予想は売上高が前期比3.2%増の6370億円、営業利益が10.0%減の119億円、経常利益が2.0%増の120億円、親会社株主帰属当期純利益が7.4%増の92億円としている。配当予想は106円(第2四半期末53円、期末53円)としている。25年4月1日付の株式3分割を遡及換算すると25年3月期の100円(第2四半期末50円、期末50円)に対して6円増配となる。予想配当性向は30.4%である。

 中間期の連結業績は、売上高が前年同期比4.5%減の2927億51百万円、営業利益が24.9%減の52億73百万円、経常利益が5.3%減の57億83百万円、そして親会社株主帰属中間純利益が10.8%減の40億73百万円だった。

 減収減益だった。機械系は増益だったが、素材系の数量減少・価格下落、北米のコスト増加などが影響した。営業外では受取配当金が6億76百万円増加(前期は8億92百万円、当期は15億68百万円)したほか、為替差損益が15億20百万円改善(前期は差損14億37百万円、当期は差益83百万円)、デリバティブ評価損益が9億99百万円悪化(前期は評価益6億67百万円、当期は評価損3億32百万円)した。特別利益では投資有価証券売却益が1億42百万円減少(前期は6億70百万円、当期は5億28百万円)したほか、前期計上の負ののれん発生益1億79百万円が剥落した。

 金属セグメントの鉄鋼ユニットは、自動車生産台数の減少や建築分野の需要減少、鋼材価格の下落などにより売上高が1.3%減収だったが、経常利益については金融収支の改善(受取配当金増加)により27.6%増の29億92百万円だった。アルミ・銅ユニットは、端子コネクターおよび空調向け銅製品の数量減少、自動車向けアルミ製品の減少、地金価格の下落などにより売上高が11.7%減収となり、経常利益は34.4%減の11億30百万円だった。原料ユニットは、重点分野である資源循環ビジネスの鉄スクラップの輸出取扱量が増加したが、粗鋼生産が低調だったため神戸製鋼所向け主原料の価格が下落したほか、バイオマス燃料が取引先発電所の操業トラブルの影響で減少したため、売上高が全体として9.1%減収となり、経常利益は前期計上した一過性利益の剥落も影響して92.8%減の82百万円となった。

 機械・溶接セグメントの機械ユニットは、国内では電池材料の数量の増加、冷熱・ヒートポンプ等の脱炭素関連機器の本体納入の増加、海外は中国での建機部品輸出、韓国での半導体ガス向け機器の増加などにより、売上高が14.4%増収となり、経常利益は増収効果で131.2%増の13億95百万円となった。溶接ユニットは、溶接材料の数量が国内外で減少したほか、溶接関連機材も減少したため、売上高が全体として6.0%減収となり、経常利益は23.9%減の2億69百万円だった。

 全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が1476億77百万円、営業利益が22億24百万円、経常利益が29億38百万円、第2四半期は売上高が1450億74百万円、営業利益が30億49百万円、経常利益が28億45百万円だった。

 通期の連結業績予想は据え置いている。売上面はアルミ・銅ユニットの取扱量増加で増収だが、利益面は鋼材価格の下落、日系自動車生産台数の低迷、販管費の増加などで営業減益予想としている。ただし経常利益と親会社株主帰属当期純利益については営業外収支改善により増益予想、そして増配予想としている。なお想定為替レートは1米ドル=140円としている。

 ユニット別の経常利益計画は、金属本部小計が1億円増の90億円(鉄鋼が5億円減の51億円、アルミ・銅が5億円減の26億円、原料が11億円増の13億円)、機械・溶接小計が0億円増の30億円(機械が0億円増の23億円、溶接が0億円減の7億円)、その他が1億円増の0億円としている。

 鉄鋼は鋼材価格の下落や取扱量の減少等により減益、アルミ・銅は銅板・銅管やアルミ加工品が堅調だが中国の需要回復遅れ等により減益、原料はバイオマス燃料の取扱量増加や前期の一時的損失(貸倒引当金計上)の一巡等により増益、機械は圧縮機等の環境投資が次期にズレ込むが建機向けの緩やかな回復でカバーして横ばい、溶接は横ばいの計画としている。

 中間期の進捗率は売上高46%、営業利益49%、経常利益48%、親会社株主帰属当期純利益45%と概ね順調である。下期にかけて国内自動車生産台数の回復基調が見込まれるほか、販管費の抑制なども推進する。中間期は減収減益だったが、積極的な事業展開で通期ベースでの収益拡大を期待したい。

■株価は調整一巡

 25年8月には、JPX総研および日本経済新聞社が共同で算出するJPX日経中小型株指数の25年度(25年8月29日~26年8月28日)構成銘柄に、昨年に引き続き選定された。

 株価(25年4月1日付で株式3分割)は10月の年初来高値圏から一旦反落したが、低PER、高配当利回り、低PBRといった指標面の割安感も評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。11月19日の終値は2268円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS348円00銭で算出)は約7倍、今期予想配当利回り(会社予想の106円で算出)は約4.7%、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS3461円36銭で算出)は約0.7倍、そして時価総額は約603億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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