富士通と山口大学、小型衛星で10分以内の画像処理実現へ、低電力エッジ技術を開発

■20W級で動作、宇宙放射線に強い冗長構成システムと新ライブラリ「FRSORA」

 富士通<6702>(東証プライム)と国立大学法人山口大学は11月27日、低軌道合成開口レーダー(SAR)衛星向けに、小型衛星の電力制限下でも冗長構成GPUを用いて10分以内の準リアルタイム画像処理を可能にする低電力エッジコンピューティング技術を開発したと発表した。同技術は宇宙放射線による誤作動に強い耐性を備え、20W程度で動作するコンピュータシステムと、対応するプログラミング環境「FRSORA」から構成される。衛星データ処理の中心であるL1処理とL2処理を衛星上で完結させ、洋上の風速算出に成功した点が特徴となる。

 両者は富士通のAI・スーパーコンピュータ技術と山口大学のリモートセンシング解析を組み合わせ、誤作動検出のための2プロセッサ並列処理を、電力制約下でも実行できる環境を構築した。さらに、誤作動発生時の再計算を効率化するジョブ分割技術を導入し、20W以下のシステムでSAR衛星の演算量が多い処理を10分以内に完了させた。また、生データを通常の画像に変換するL1処理に加え、風速など物理量を推定するL2処理にも対応し、海域の風速を数100m単位で衛星から即時的に把握できることを確認した。これにより船舶運航の安全向上など、即時性が求められる領域での活用が見込まれる。

 今回の成果はSAR衛星に限らず、光学衛星やマルチ・ハイパースペクトル衛星への応用も期待される。富士通は開発したプログラミング環境を2026年2月にライブラリとして公開する予定で、衛星上での高度なAI処理や即時判断が必要なサービスの実現を目指す。両者は今後、大気データなどを用いた衛星上での補正処理の高度化および宇宙実証を進め、堅牢で普及しやすい衛星データ処理システムの確立に取り組む方針である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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