【小倉正男の経済コラム】アメリカの利上げ――世界経済の先行きを左右

■利上げのタイミングが接近か

 アメリカの雇用の増加が凄まじい。この7月の非農業部門雇用者の増加は25万5000人、事前の予想は18万人だったが、大きく上回った。
6月の雇用者増加は28万7000人、2ヶ月連続で大幅増となっている。

 2ヶ月連続で雇用者増加が25万人を上回ったのはあまりないことだ。2014年11月~2015年2月まで4ヶ月連続で順調な雇用者増加がみられた。それ以来の動きである。

 アメリカの景気回復は本物とみられる。失業率は4.9%と5%割れを実現している。2012年8%台、2013年7%台の失業率からみると、失業率も極限まで改善している。

 これで賃金が顕著に上昇に転ずることになれば、インフレリスクが生じることになる。利上げのタイミングが生じることになる。

■トランプ氏が世界経済の最大のリスク要因

 アメリカの人口だが、2014年3億1913万人、2015年3億2160万人と増加している。経済のベースには人口増加があり、アメリカ経済の底力を支えている。

 共和党の大統領候補であるトランプ氏など「自由貿易主義」に反対し、人口増加を牽引する移民に異を唱えている。アメリカ経済の底力を根底から否定する動きである。

 トランプ氏が大統領になることはないとみられる。だが、まさかの事態になればアメリカ資本主義のダイナミズムが失われることになりかねない。

 そうなれば世界は、英国のEU離脱などとは比較にならない経済危機に直面する。アメリカから、例えばカナダあたりに移住しても、そのリスクからは逃れられないに違いない。

■アメリカは利上げに踏み込めるか

 ともあれアメリカの景気が回復に向かうとすれば、利上げ局面を迎えることになる。
 世界全体が不透明な経済になっているのにアメリカだけが景気がよい。利上げに踏み込む。――アメリカ経済には凄まじい回復力があるというしかない。

 アメリカの利上げを阻むものは外部のファクターにほかならない。
 世界経済では、中国経済のバブル崩壊など問題が内在している。アメリカが利上げを急げば、中国経済の崩壊現象などを惹起することになる。

 アメリカの利上げは、世界経済を睨んで行われる必要がある・・・。となれば、アメリカの利上げは、年内は見送りということになるのかどうか。

 アメリカが順調に利上げを行えるだけ世界経済の体力が回復していることがベストのシナリオになる。アメリカの利上げがスムーズに行われるとすれば、世界経済はほどほどよいという大きな指標になるのではないか。

(経済ジャーナリスト 『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所)など著書多数。東洋経済新報社編集局・金融証券部長、企業情報部長,名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事など歴任して現職)

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