【小倉正男の経済コラム】新型コロナ禍(withコロナ)と経済 長期低迷が不可避

小倉正男の経済コラム

■GDPは戦後最悪の落ち込み

 4~6月のGDPが27・8%減(年率換算)、戦後最悪ということだ。リーマンショック時(09年1~3月=17・8%減)を超えており、空前の落ち込みである。新型コロナ禍は、「リーマン級」を超えている。

 企業経営者の方々と話すと、「今年はサバイバル(生き残り)戦。ともあれ生き残りを果たして、来年にはなんとか業績の回復に取り組みたい」と。いまはこれまでやっていなかったオンライン営業、VR使用のバーチャル展示会、社内のウェブミーティングなどの定着を進めているということだ。

 確かに4月、5月は「緊急事態宣言」などもあって、都心部から人影が消えた。6月には事業再開となったが、7月、8月には新型コロナ感染の強烈なぶり返しが起こった。都心の百貨店などは休業から再開に転換しているが、客足の戻りはよいとはいえない状況だ。

 企業各社も大変である。内部留保を蓄えているとしても売り上げが伸びないと不安で仕方がない。「どうなるのですかね、日本経済――」。知り合いの企業経営者からは、そんなメールが届いている。

 都心部にお店を構える飲食店などもお客が戻ってこないのだから、高い家賃など固定費を抱えてどこまで体力が持つのかといった事態だ。厳しいことになっている。

■21年度まで長引けば最悪の局面に

 日本経済、あるいは企業決算などでいえば、6月からの事業再開で底入れを果たして、9月以降は正常化するという「最善の想定」に立っている。

 しかし、7月、8月の真夏に新型コロナ感染がぶり返しているところからみると秋冬に収まるだろうか。下手をすると、7月、8月も酷い状態だが、寒くなる秋冬はもっと厳しいことになる可能性のほうがよほど大きい。それでは、9月以降に経済が元に戻るという「楽観論」は吹き飛ぶことになる。

 「withコロナ」「コロナと共存する新しい生活」「GoToトラベル」といった調子では、新型コロナが終息するどころか、「集団免疫」に近づいているようなものだ。政府・分科会は、感染状況について「全国的に見るとだいたいピークに達した」(尾身茂会長・8月20日)など相変わらず楽観的な見通しを語っている。これだけ新型コロナ感染を蔓延させておいて気楽なものである。

 このまま進めば、20年度決算は、上期を大底にして下期は回復してなんとか格好をつける、というシナリオは達成できない。20年度中に経済復活のメドをつけるは絵空事になりかねない。それどころか、来21年度にしても、終息するどころか、新型コロナ感染を引きずる可能性すらある。

 「withコロナ」とは誰がつくったのか悪趣味なワードだが、来21年度もたぶんお付き合いしなければならない。それだけ長期戦になれば、日本経済、あるいは都心などの飲食店など「街の経済」も含めて、最悪の局面を迎えかねない。

■「世界大恐慌」に近い長期の低迷

 アメリカ、そしてEU諸国、英国など欧州、アジア諸国もインドなどを筆頭にどこも新型コロナ禍で経済は酷いことになっている。経済再開を行っているが、経済活動は思わしくない。

 新型コロナ感染の発生源である中国は、強権で新型コロナを抑え込んで、いち早く経済再開にこぎつけている。中国では国内向けの生産は再開されている。だが、アメリカ、欧州、日本などの経済再開がもたついている。それだけに中国は先進国向け輸出に関連する生産は軌道に乗っていないということだ。

 20年度、そして来21年度も、新型コロナ禍が長引いて経済は上向かないとすれば、「世界大恐慌」に近いことになりかねない。そうした事態はあまり考えたくないが、可能性はないとはいえない。

 「バブル崩壊」でも長らく日本経済の惨状を見ることになったわけだが、新型コロナ禍でも見たくもないものを眺めることになるかもしれない。画期的なワクチン開発などがあれば大きく救われるが、それが遅れるとすれば新型コロナ禍が長期化することを覚悟する必要がある。

(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営~クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリスト。2012年から当「経済コラム」を担当)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■国際特許分類や元素リストを用いて多様な解決策を自動生成  AGC<5201>(東証プライム)は1…
  2. ■Newton・GR00T・Cosmosを軸にロボット研究を高速化  NVIDIA(NASDAQ:…
  3. ■700億パラメータ規模の自社LLMを金融仕様に強化、オンプレ環境で利用可能  リコー<7752>…
2025年11月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

ピックアップ記事

  1. ■鶏卵高騰・クマ被害・米政策転換、市場が注視する「3素材」  2025年11月、師走相場入りを前に…
  2. ■AI株からバリュー株へ資金移動、巨大テックの勢い一服  「AIの次はバリュー株」と合唱が起こって…
  3. ■日銀トレード再び、不動産株に眠る超割安銘柄  今週の投資コラムは、政策金利据え置きの投資セオリー…
  4. ■日銀据え置きでも冴えぬ不動産株、銀行株が主役に  株価の初期反応が何とも物足りない。10月30日…
  5. ■造船業再生へ3500億円投資要望、経済安全保障の要に  日本造船業界は、海上輸送が日本の貿易の9…
  6. ■高市政権が描く成長戦略、戦略投資テーマ株に資金集中  「連立政権トレード」は、早くも第2ラウンド…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る