【株式評論家の視点】JR九州は不動産開発に期待、底堅い展開へ

株式評論家の視点

 JR九州(九州旅客鉄道)<9142>(東1・売買単位100株)は、10月25日に東京証券取引所市場第一部に上場した。JR九州グループの中期経営計画2016-2018(平成28年度からの3か年計画)において、同グループの“あるべき姿”を「安全とサービスを基盤として九州、日本、そしてアジアの元気をつくる企業グループ」と表している。その“おこない”として、全ての事業を、手間をかけ「誠実」に行うとともに、将来を見据え、既存事業の拡大、サービスや品質の向上、東京や海外での事業展開、シニアビジネスや農業など新規事業への参入など「成長と進化」に果敢に挑戦し、「地域を元気に」するため、鉄道会社の強みを活かしたまちづくり、沿線の各地域に根差した活動に取り組んでいる。

 基幹事業である鉄道事業においては、「ななつ星in九州」やD&S列車を中心とした観光需要の創出、インターネット予約システムによる商品展開やプロモーション強化、訪日外国人需要の獲得などの各種営業施策の実施による収入拡大に尽力。建設グループにおいては、新幹線建設工事をはじめとする実績を基盤に九州内外における、同社グループ外からの受注拡大に注力。駅ビル・不動産グループにおいて、福岡都市圏をはじめ、九州内主要都市における開発候補地の取得にも積極的に取り組んでいる。流通・外食グループにおいては、同社グループが保有する駅や開発物件における立地特性も活かし、既存店舗の収益力の拡大を図っている。その他グループにおいては、ホテル事業では訪日外国人客も含めたリピーター及び新規顧客の獲得。シニア事業では「SJR大分」開業による収益基盤の構築、ビジネスサービス業においては取引先への提案力の向上によるさらなる同社グループ外からの受注拡大に注力している。

 今2017年3月期第1四半期業績実績は、売上高が794億5600万円、営業利益が123億6400万円、経常利益が129億8300万円、純利益が71億6400万円に着地。

 今17年3月期業績予想は、売上高が3788億円(前期比0.2%増)、営業利益が518億円(同2.5倍)、経常利益が535億円(同67.0%増)、最終損益が382億円の黒字(同4330億8900万円の赤字)の黒字転換を見込んでいる。上場時は国土交通省所管の独立行政法人、鉄道建設・運輸施設整備支援機構(横浜市)が保有する全ての株式を売り出し、公募増資は実施せず、不動産開発に充当する。配当は期末一括37.5円を予定している。

 株価は、10月25日に公開価格2600円を19.2%上回る3100円で初値をつけ、高値3120円と買われている。安値は2908円、この日の大引けは2990円。26日は、2957円(33円安)で始まったあと3040円(50円高)と切り返し、3000円前後で堅調に推移している。九州中心に長期保有目的による売出株の取得が多く需給は良好と見られている。東京・新橋でNTT都市開発と組んで地上27階建ての複合ビルを開発。19年をめどに上層階でホテルを開業する計画で、不動産開発に対する期待感がある。今期予想PER12倍台と割安感があり、2900円どころが下値になると予想されることから、堅調展開が続く可能性はある。(株式評論家・信濃川)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■9割超が対策を実施も、「WBGT」の認知は依然として低調  帝国データバンクの調査により、「熱中…
  2. ■「変身と成長」掲げ1300億円の積極投資、収益構造の転換図る  吉野家ホールディングス<9861…
  3. ■人手不足を補いながら顧客満足度の向上に貢献  シャープ<6753>(東証プライム)は5月20日、…
2025年6月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30  

ピックアップ記事

  1. ■選挙関連の「新三羽烏」の株価動向をウオッチ  足元では野党が石破内閣への内閣不信認決議案提出を見…
  2. どう見るこの相場
    ■米、イラン核施設を電撃空爆、緊張激化へ  「2週間以内」と言っていたのが、わずか「2日」である。…
  3. ■イスラエル・イラン衝突でリスク回避売りが優勢に  イスラエルのイラン攻撃を受け、13日の日経平均…
  4. ■ホルムズ海峡封鎖なら「油の一滴は血の一滴」、日本経済は瀬戸際へ  コメ価格が高騰する「食料安全保…
  5. ■トランプリスク回避へ、大谷・藤井・大の里株が浮上  『おーいお茶』を展開する伊藤園<2593>は…
  6. ■昭和の象徴、長嶋茂雄さん死去  またまた「昭和は遠くなりにけり」である。プロ野球のスパースター選…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る