川崎近海汽船は近海部門が8期ぶりに黒字化、一段と飛躍めざす中期計画を策定

■「SOx規制」の費用増など乗り越え3年後の純利益24%増加めざす

 川崎近海汽船<9179>(東2)の前3月期(2019年3月期)の業績は、近海部門が構造改革の進展やバイオマス燃料や石炭輸送の増加、市況の改善などにより8期ぶりに黒字転換し、主要3事業(近海部門・内航部門・OSV:オフショア支援船部門)がそろって収益を上げる決算になった。

■トラックドライバー不足が深刻化する中で海上輸送への需要など訴求

 これを受け、2020年1月実施の「SOx規制」(船舶用燃料油の低硫黄化環境規制)にともなう費用増などを乗り越えて一段と飛躍する目的で、「2019年度中期経営計画」(2020年3月期~2022年3月期)を策定した。モーダルシフトの拡大などを念頭に、顧客のニーズに沿った輸送サービスの提供に努め、計画到達年度の数値目標として、親会社株主に帰属する当期純利益は21.0億円(19年3月期の実績比24%の増加)などを掲げた。

■内航部門はモーダルシフトをはじめニーズに沿った輸送サービスを提供

 中期計画では、投資規模を3年間で総額143億円の予定とし、計画期間中の新造予定船は近海部門で5隻、内航部門で3隻、OSV部門で1隻を予定。連結売上高は、今期・20年3月期に479.0億円(同4.7%の増加)とし、到達年度には532.0億円(同16.3%の増加)とした。経常利益は20年3月期に費用先行型の15.5億円(同24.3%減)を見込むが、到達年度には32.0億円(同56.3%の増加)とした。

 近海部門の戦略は、市況動向と顧客のニーズをしっかりと把握したうえで、必要な船隊整備を行い、8期ぶりの黒字化に続いて長期的な収支の安定を目指す。前3月期の近海部門は、構造改革の進展に加え、ウッドペレットなどのバイオマス燃料やロシア炭の輸送が増加した。今期・20年3月期も荷動きは堅調で、傾向的な拡大を見込む。

■清水/大分航路はデイリー化により1便当たりのトラック積載台数も増加

 内航部門では、トラックドライバー不足が社会問題化する中で、陸上輸送から海上輸送への転換を図るモーダルシフトを促進し、顧客のニーズに沿った輸送サービスを提供し、海上輸送需要の掘り起こしなどに取り組む。前3月期は、清水/大分・定期船航路でデイリー化を実施したところ、1便当たりのトラック積載台数そのものもデイリー化前を上回って増えたという。

 フェリー輸送では、前期、八戸/苫小牧航路に就航した新造船「シルバーティアラ」の寄与などにより、トラック、旅客、乗用車とも輸送量が増加した。新規に開設した宮古/室蘭航路は、無料の高速道路である三陸復興道路が全線開通すれば利便性の向上が見込まれ、新たな需要が拡大するとみられている。

 OSV部門では、洋上風力発電設置事業など、政府の策定する海洋基本計画に沿った事業への参画と、海洋資源エネルギー開発に関わる事業を中軸として積極的な営業展開を図る。現在の5隻(19年3月末現在)のうちの1隻「あかつき」は、海洋研究開発機構の地球深部探査船(掘削船)「ちきゅう」の支援活動を行ったことで知られる。18年8月には、千葉県館山市の西方海上で自力航行が不能となった全長約333メートルのタンカー(原油27万トン積載)をOSV部門の船団が曳航し、無事に荷揚げさせたあと中国の修繕ヤードまで回航したという。

■定款を一部変更し再生可能エネルギー関連事業にも積極的に取り組む

 また、同社は4月26日、定款の一部変更も発表し、環境への取り組みの観点からも今後需要の拡大が予想される再生可能エネルギーへの積極的な取り組みを表明すること、及び今後可能性のある投資案件に対応するため、事業目的に「再生可能エネルギー関連事業」「他の事業に対する貸付、保証及び投資」を加えた。(HC)

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