【小倉正男の経済コラム】脱プラ:H&M=紙袋有料化の意味合い

小倉正男の経済コラム

■遅ればせながら「ユニクロ」も脱プラを表明

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 脱プラの流れに加速が付いている。脱プラでは、日本は世界に遅れていた部類なのだが、走り出すと几帳面というか一斉に動き出す面がある。

 ここ最近でみても、コンビニのミニストップがプラスチック製レジ袋の有料化を実験すると表明。コンビニでは、コーヒーカップを紙製に切り替えるなどの動きをみせていた。「袋は使いますか」。いまはレジでそう聞かれることも多くなっている。

 スーパーの多くは、すでにレジ袋の有料化などでエコバッグ携帯を促進してきている。コンビニでは、それは無理とされてきたが、ようやく動き出している。

 「ユニクロ」のファーストリテイリングも、少し遅ればせながらという感があるが、脱プラを表明した。プラスチック製袋を紙袋に切り替えるというのだが、2020年1月をメドに紙袋を有料化(10円)にするとしている。

 ファーストリテイリングは、何があったのか、やや出遅れることになった。世界に多くの店舗を展開しているアパレル企業にしては、脱プラ動向のスピード感を少し見誤ったのかもしれない。

■H&Mがいち早く紙袋有料化に踏み込む

 日本の脱プラでは、アパレルのH&M(ヘネス&マウリッツ=スウェーデン)がいち早く脱プラを実施した。2018年12月にプラスチック製袋を紙袋に切り替えて、しかも紙袋を有料化(20円)している。

 EU(欧州連合)は脱プラでは先行しており、H&Mが早かったのはおそらくそれと無関係ではない。紙袋有料化は、エコバッグを携帯してショッピングしてくれ、というメッセージということになる。

 2019年4月には、「無印良品 銀座」「銀座ロフト」がそれぞれ新店オープン、リニューアルオープンを機に紙袋に全面的に切り替えた。こちらはさすがに紙袋有料化までは踏み込めなかったが、早い判断だった。
 日本では、流行の発信地である東京・銀座から脱プラが開始されている。

 脱プラは、汚染が酷い海洋を含めての地球環境との調和、すなわち地球環境のサステナビリティの問題であり、確かに避けて通れない局面にある。
 “エコへの転換”といったアジェンダでも、H&M、無印良品などの企業判断には早さや勢いの一端がみえる。

■エコバッグ携帯のショッピングを提唱

 紙袋最大手のザ・パック東京本社で「環境展」をやっているということで取材をさせてもらった。
 紙袋はクラフト紙という包装紙で制作されている。クラフト紙は針葉樹からつくられ、印刷用の紙とは違って漂白はされてはいない。一般に紙袋が木の色、茶色であるのは漂白していないためだ。

 クラフト紙のうち重包装用がセメント、お米などに用いられ、軽包装用が手提げ紙袋などに用いられる。

 紙は木材チップ、パルプからつくられるから自然由来なのだが、自然由来だけに森林保全という環境問題に直面する。紙関連業界各社は、FSC(フォーレスト・スチュワードシップ・カウンシル=森林認証)などで森林保全に取り組んでいる。FSC認証を経た原材料を使用していることが紙製品ビジネスの前提になっている。
 ここでもエコ、環境はサステナビリティの問題であり、避けては通れない。

 H&Mなどの紙袋有料化の動きは、その地球環境のサステナビリティに絡んでいる。お客にできるだけエコバッグ携帯でショッピングをしてくれというわけである。
 紙袋有料化というやり方は日本マーケットになじまない、などと言っていられないわけである。

(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営~クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリスト。2012年から当「経済コラム」を担当) 

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