【どう見るこの相場】緊急事態宣言の再発出を催促し「巣ごもり投資」関連株に「自助」待機

どう見るこの相場

 何だかややこしいことになってきた。米国の大統領選挙を通過し、米国製薬大手のファイザーが、画期的な新型コロナウイルスのワクチンを開発し、前週末13日の米国のダウ工業株30種平均(NYダウ)は、今年2月につけた史上最高値にあと70ドルと迫り、その前日の12日には日経平均株価も、2万5000円台央と上値を伸ばし29年ぶりの高値となった。あとは景気敏感株かハイテク株か、バリュー株かグロース株かどちらを選ぶかセクター・ローテーションの問題が残るだけのはずだった。ところが新型コロナウイルス感染症が、世界的に再拡大し、ロックダウン(都市封鎖)の動きも伝えられ、景気の先行き懸念が再び台頭し、前週末の最高値目前のNYダウにもこのカゲが見え隠れして、日経平均株価も調整場面となった。

 米国では1日当たりの新規感染者が、14日に18万人を超えて連日の過去最高更新となり、バイデン次期大統領は、感染抑制を最優先政策と位置付けているが、トランプ大統領からの政権移行がスムーズに運ばず、公衆衛生上のリスクとなっている。日本でも、東京都の新規感染者が、12日以来3日連続で300人を超え、全国レベルでも14日に1715人に達し、今年8月7日の1591人を上回り連日の過去最高更新と悪化した。しかし菅偉義首相は、緊急事態宣言の再発出を見送り、推進中の「GoToキャンペーン」も見直さないと発言している。首相が掲げる政策理念の「自助、共助、公助」のうち、カネを伴う「公助」は回避してあくまで国民各位の「自助」による封じ込めを期待し、「GoToキャンペーン」を利用するのもしないのも、「カラスの勝手でしょう」ということのようである。

ただ、緊急事態宣言の発出は、兜町にとって悪い印象はない。今年4月の発出では、所得・休業補償のために1人当たり一律10万円を給付する特別定額給付金とセットになり、現金給付総額12兆8803億円の一部が、貯蓄に回って退蔵されることなく、折からのテレワークの推進とともに市場に流入してきたからだ。巣ごもり投資家の大活躍は、記憶に新しいところで、米国市場でプレゼンスを高めた逆張り個人投資家のロビンフッダーに負けず劣らずのインパクトを与えた。東京市場の巣ごもり投資家は、マスク・消毒剤の防疫関連株から巣ごもり消費関連株、テレワーク関連株、オンライン診療・教育株、新規株式公開株などで取っ替え引っ替え幅広く資金を高回転させ、日経平均株価が、今年3月のコロナ・ショック安からV字反騰する牽引役となった。

 この4月の先行例からすれば、個人投資家は「自助」レベルで緊急事態宣言の再発出を催促し、「カラスの勝手流」にこれを先取り、スタンバイすることもあ有効な投資戦略となるはずだ。現に前週末にはマスク株や空気清浄機株などの防疫関連株が、大きく動意付いており、関連株への幅広い波及を示唆した。そこで今週の当コラムでは、なかでも巣ごもり投資家の市場進出で業績がV字回復した証券株と10万円の現金給付により高機能家電製品への買い替え需要を享受した家電量販店株、ホームセンター株に注目することとした。市場の主流銘柄から外れ地味な存在であることは否定できないが、セクター・ローテーションの有力な一角を占め、再出番となることを期待したい。

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