【どう見るこの相場】円安のウラに円高?電力株はともに業績上方修正のファミリー企業のサポートも受けベース銘柄復活

■超強気相場の裏を読む、電力株のベース銘柄復活に期待

 「理屈はあとから貨車で来る」とは、超強気相場のキャッチコピーである。買うから上がる、上がるから買うが繰り返される。ご意見無用である。それにしてもである。前週1月29日からスタートした業績相場は、やや極端ではないか?天国銘柄と地獄銘柄が厳しく峻別される決算プレーが続いているからだ。例えば業績上方修正に増配が加わった東京鉄鋼<5445>(東証プライム)は、即ストップ高したのに、業績を下方修正したアルプスアルパイン<6770>(東証プライム)は、年初来安値へ売り叩かれなお下げ止まらないし、業績を下方修正して赤字転換したあおぞら銀行<8304>(東証プライム)は、ストップ安を交えて急落した。こうも一方的な集中と離散が続くと、却って超強気相場の裏側のどこかに弱気相場が仕込まれていないかといささか心配にはなる。

 米国のマーケット事情も、これと変わらないようにみえる。前週末2日に発表された1月の雇用統計で、非農業部門の雇用者数が、市場予想を上回ったことから、FRB(米連邦準備制度理事会)の3月19日、20日開催の次回FOMC(公開市場委員会)での早期利下げは遠退いたとして10年物国債利回りは上昇し、日米金利の再拡大から為替は円安・円高となった。投資セオリーからすれば、長期金利の上昇はハイテク株にとっては逆風で売りとなるはずである。ところがフィラデルフィア半導体株指数(SOX)も、画像半導体大手のエヌビディアも急伸して史上最高値更新となった。これは長期金利上昇の裏側に長期金利の低下、円安・ドル高の裏側に円高・ドル安が隠れているのではないかと投資家心理は揺さぶられる。

 とくに為替相場は、わが日本銀行が3月18日、19日に開催する次回金融政策決定会合が要注目となっている。というのも日銀が、今年1月開催の金融政策決定会合後に発表した政策委員の「主な意見」では、異次元金融緩和策の出口戦略を見据えたマイナス金利政策の解除への言及が相次いだからだ。金融引き締め、利上げ、金利の復活に進み、日米金利差の縮小となれば、当然、円安・ドル高が円高・ドル安に方向性が変わることになるはずだ。

 この為替シナリオ通りになるならば、今週週明けに売りスタートするかもしれない円高メリット株の裏側には円高メリット株買いも潜んでいるに違いないのである。円高メリット株の代表株といえば、ニトリホールディングス<9843>(東証プライム)などのSPA(製造小売り)株とされている。しかしかつては電力株が主役の座にあった。円高不況時には、円高差益還元、電気料金引き下げが経済対策の大きな柱として取り上げられ、円高メリット株の優等生であった。ところが福島原子力発電所のメルトダウン事故である。公益企業としての安定供給責任の先行きも懸念され、原油価格上昇に円安・ドル高も重なって業績は急悪化しマーケットの売り銘柄にメルトダウンしてしまった。

 電力会社の電源は、ベース電源、ミドル電源、ピーク電源で構成される。ベース電源とは発電コストが安く昼夜を問わず発電されている主要電源である。これと同様に機関投資家のポートフォリオでも、電力株は常に組み入れられたベース銘柄であった。しかし原発事故以来の業績悪化以来、ファンドマネジャーは難しい判断を迫られたことが想像される。

 ところが、雲行きが変わる可能性も兆している。例えば中部電力<9502>(東証プライム)は、1月31日に燃料価格の低位安定とともに2024年度も前年度と同程度の電気料金引き下げを行う負担軽減策を発表した。またこの日は電力6社が、揃って今3月期業績を上方修正し、黒字転換幅を拡大させた。この業績上方修正にはプラス反応した電力株とマイナス反応した電力株とに別れマチマチとなったが、ここに円安の裏側に円高が隠れていることが加われば、電力株のベース銘柄復活が期待できることになる。

 しかも、強力側面サポートもありそうなのである。ファミリー企業の電力会社系列の電力工事株に業績上方修正に増配、自己株式取得などが相次いでいる。業績上方修正にプラス反応した電力会社と電気工事会社の相乗効果が、マーケットへのベース銘柄復活の訴求力を高めそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・Media-IR 株式投資情報編集部)

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