【アナリスト水田雅展の銘柄分析】川崎近海汽船は16年3月期増額含み、割安感を見直して反発

銘柄分析

 川崎近海汽船<9179>(東2)は近海輸送と内航輸送を展開している。株価は高値圏からやや水準を切り下げたが、1月8日の年初来高値から約半年が経過して日柄調整一巡が期待される。16年3月期業績は増額含みであり、指標面の割安感を見直して反発展開だろう。

 石炭・木材・鋼材輸送などの近海部門、石炭・石灰石・紙製品・農産品輸送やフェリー輸送などの内航部門を展開している。

 中期成長に向けた新規分野として、13年10月オフショア・オペレーションと均等出資で合弁会社オフショア・ジャパンを設立した。日本近海における海洋資源開発・探査・掘削設備・洋上再生可能エネルギー設備に関わるオフショア支援船業務に進出する。オフショア支援船は16年2月竣工予定だ。なお15年5月1日付でオフショア支援船事業推進室を新設した。

 15年3月には、18年春予定で岩手県宮古港と北海道室蘭港を結ぶ新たなフェリー航路を開設するべく検討を開始した。宮古港、室蘭港とも近隣に国立公園など観光資源が豊富なため旅客需要も期待できるとしている。

 なお15年3月期の四半期の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)111億91百万円、第2四半期(7月~9月)122億87百万円、第3四半期(10月~12月)119億83百万円、第4四半期(1月~3月)104億85百万円で、営業利益は第1四半期56百万円の赤字、第2四半期8億59百万円、第3四半期9億60百万円、第4四半期5億98百万円だった。第1四半期は所有船のドック入りが集中して修繕費が増加した。

 15年3月期の配当性向は57.8%、ROEは14年3月期比0.2ポイント低下して2.2%、自己資本比率は同3.6ポイント上昇して56.3%となった。

 今期(16年3月期)の連結業績予想(4月30日公表)は売上高が前期比4.7%減の438億円、営業利益が同4.7%減の22億50百万円、経常利益が同9.8%減の22億円、純利益が同3.0倍の15億円としている。配当予想は前期と同額の年間10円(第2四半期末5円、期末5円)で、予想配当性向は19.6%となる。

 近海部門は市況低迷が長期化しているが、バルク輸送では効率配船、木材輸送や鋼材・雑貨輸送では運航効率の向上を図る。内航部門は総じて安定した荷動きを見込んでいる。純利益は前期計上した保有船舶減損損失の一巡が寄与する。

 なお前提は、為替レートが1米ドル=120円(前期は1米ドル=108円13銭)、燃料油価格(国内価格)が5万6600円(前期は6万8175円)としている。会社予想は営業減益だが保守的な印象も強く、円安や燃料油価格下落メリットも寄与して増額含みだろう。

 4月30日に発表した15年度中期経営計画では、目標値を18年3月期売上高495億円(近海部門175億円、内航部門320億円)、営業利益34億円(近海部門5億円の赤字、内航部門39億円の利益)、経常利益35億円、純利益24億円、ROE8.9%、自己資本比率61.1%、DER0.45倍とした。前提の為替レートは1米ドル=120円、燃料油価格は7万1500円である。

 また新造船建造等に対する3年間の合計投資額は133億円とした。期間中の新造船は近海部門の一般貨物船1隻(社船または傭船)、内航部門の石炭船一隻(傭船)、一般貨物船1隻(傭船)、石灰石専用船1隻(社船)、RORO船1隻(社船)、新規事業のオフショア船1隻(共有船)の予定である。

 近海部門では、喫緊の課題である収益改善に向けて、適正な船隊規模による効率配船と新規顧客の獲得を目指す。内航部門では、不定期船輸送における各専用船の安定輸送確保と新規貨物開拓、定期船輸送とフェリー輸送における新規航路の開設を進める方針だ。

 陸上輸送におけるドライバー不足で海上輸送へのモーダルシフトが注目されている。中期的にはオフショア支援船業務も寄与して収益拡大が期待される。

 株価の動きを見ると、高値圏410円~420円でのモミ合いから水準を切り下げて、6月19日には390円まで調整する場面があった。日柄調整局面のようだ。

 6月24日の終値395円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS51円09銭で算出)は7~8倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は2.5%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS784円66銭で算出)は0.5倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線、週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んだが、1月8日の年初来高値440円から約半年が経過して日柄調整一巡が期待される。16年3月期業績は増額含みであり、指標面の割安感を見直して反発展開だろう。

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