カナモトは上値試す、23年10月期増収増益予想

 カナモト<9678>(東証プライム)は建設機械レンタルの大手である。重点施策として国内営業基盤拡充、海外展開、内部オペレーション最適化によるレンタルビジネスの収益力向上を推進し、環境対策機への資産シフトなどによってサステナビリティへの取り組みも強化している。22年10月期は全体として建設機械レンタル需要の本格回復が遅れ、将来を見据えた人財投資による販管費の増加なども影響して減益だったが、23年10月期は需要回復などで増収増益予想としている。災害復旧・防減災・老朽化インフラ更新など国土強靭化関連工事で需要が堅調であり、積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は順調に水準を切り上げて戻り歩調だ。指標面の割安感も評価材料であり、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。

■建設機械レンタルの大手

 建設機械レンタルの大手で、海外向け中古建設機械販売、土木・建築工事用鉄鋼製品販売、IT機器・イベント関連レンタル、福祉用具レンタルなども展開している。M&Aも活用し、北海道を地盤として全国展開と業容拡大を加速している。営業拠点数(22年4月末時点)は単体ベース215拠点、グループ合計541拠点となっている。海外は7ヶ国に拠点展開している。

 21年4月には子会社アシストが、19年12月に子会社化した什器備品・ウォーターサーバーレンタルのコムサプライを吸収合併した。21年5月にはシステムソリューション商社の岩崎(札幌市)と業務提携した。21年9月には子会社のニシケンが子会社の九州建産を吸収合併した。22年6月には道東・道北を中心に建設機械レンタル・販売を行う子会社のサンワ機械リース(18年8月子会社化)を吸収合併した。22年7月には子会社のNEK(岩手県奥州市)がセントラル(岩手県奥州市)から建設機械等リース・レンタル・販売事業を譲り受け(22年6月30日付)、社名をセントラルに変更した。

 22年10月期のセグメント別業績(収益認識会計基準適用のため売上高増減率は非記載、利益への影響軽微)は、建設関連事業の売上高が1704億33百万円で営業利益が21年10月期比11.8%減の115億09百万円、その他事の売上高が175億94百万円で営業利益が11.0%増の12億32百万円だった。

 建設関連事業の地域別レンタル売上比率は、北海道地区が23.5%、東北地区が22.2%、関東甲信越地区が22.3%、西日本地区が13.6%、九州・沖縄地区が14.5%、海外が3.9%だった。

 収益面では建設工事の影響を受けやすく、売上高が第4四半期(8~10月)から第1四半期(11月~1月)にかけてピークとなり、第2四半期(2~4月)および第3四半期(5~7月)は減少する季節特性がある。なお収益認識会計基準適用に伴って建設機械等レンタル基本約款の改定を行い、21年11月から売上認識の始点を従来の出荷日基準から引渡日基準に変更した。

■サステナビリティを意識した事業展開を推進

 中期経営計画「Creative 60」(22年12月9日に下方修正)では、目標値として、最終年度24年10月期の売上高2030億円(当初計画は2280億円)、営業利益146億円(同230億円)、ROE6.5%(同10.0%)、EBITDA612億円(同727億円)などを掲げている。さらに2030年ビジョンでは、2030年に売上高2250億円、営業利益200億円、ROE8%以上、総還元性向50%超を目指すとしている。
 
 当初想定よりも厳しい事業環境が継続しているため目標数値を見直した。重点施策については、国内営業基盤拡充、海外展開、内部オペレーション最適化によるレンタルビジネスの収益力向上への取り組みを踏襲しつつ、さらにサステナビリティを意識した事業展開や、さまざまな社会環境変化(トランスフォーメーション)への積極対応による事業のレジリエンスを強化する方針としている。

 国内営業基盤拡充では、グループの総力を結集して既存エリアの深掘り、未進出エリア・低シェア領域の開拓、非建設分野への進出を推進している。さらに今後の強化分野として、維持補修分野への参入強化、再生可能エネルギー分野への参入強化、ICT・IoTソリューションの開発、地方再強化などを推進する。

 海外展開では、海外戦略2.0(Next Generation)へのバージョンアップによって、グローバルポートフォリオの最適化、カナモト版グローバルプラットフォームの確立、ノンオーガニック戦略(海外でのM&Aの取り組み)、海外売上比率10%への布石を推進している。

 内部オペレーションの最適化では、レンタルビジネスの収益性向上に向けた営業戦略とITの融合、商品企画・研究開発への資源投資、工事現場に必要な技術・システムの開発、業務効率向上、原価コントロール、長期的な安定稼働、人財の確保・育成などを推進している。

 また環境対策機への資産シフトなどによって、サステナビリティへの取り組みも強化している。21年7月には、ESG経営に基づくガバナンス強化に向けて、金融安定理事会(FSB)によって設置された気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明するとともに、TCFDコンソーシアムに参画した。21年12月には自社HPにサステナビリティページを開設した。

 なお22年10月には新潟営業所が、ネクスコ・エンジニアリング新潟から、令和4年度の集中豪雨における高速道路事業の継続に係る対応への災害支援企業として表彰された。22年11月には、国土交通大臣から「令和4年度建設工事統計調査」への調査協力に対する感謝状を授与された。

■23年10月期増収増益予想

 22年10月期の連結業績(収益認識会計基準適用のため売上高の前年同期比増減率は非記載、利益への影響は軽微)は、売上高が1880億28百万円(収益認識会計基準適用前の21年10月期は1894億16百万円)で、営業利益が9.5%減の132億29百万円、経常利益が10.5%減の137億80百万円、親会社株主帰属当期純利益が6.3%減の83億45百万円だった。配当は21年10月期比5円増配の75円(第2四半期末35円、期末40円)とした。

 収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高が37億90百万円減少、売上原価が37億90百万円減少、営業利益、経常利益および税金等調整前四半期純利益がそれぞれ0百万円減少している。

 売上面では、公共投資は堅調に推移したが、建設需要の地域間格差や、一部の現場における資材価格高騰に伴う工事遅延・進捗鈍化なども影響して、全体として建設機械レンタル需要の本格回復が遅れた。利益面は、将来を見据えた人財投資による販管費の増加なども影響して減益だった。

 建設関連事業は売上高が1704億33百万円で営業利益が11.8%減の115億09百万円だった。地域別に見ると北海道5.5%増収、東北7.3%減収、関東甲信越0.6%減収、西日本0.7%減収、九州沖縄1.1%増収だった。中古建機販売はレンタル用資産の運用期間延長を進めているため15.1%減収だった。その他事業は鉄鋼関連、情報関連、福祉関連とも堅調に推移して、売上高が175億94百万円で営業利益が11.0%増の12億32百万円だった。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高467億30百万円で営業利益33億11百万円、第2四半期は売上高469億85百万円で営業利益37億87百万円、第3四半期は売上高451億13百万円で営業利益20億64百万円、第4四半期は売上高492億円で営業利益40億67百万円だった。

 23年10月期の連結業績予想は売上高が22年10月期比5.3%増の1980億円、営業利益が5.8%増の140億円、経常利益が2.3%増の141億円、親会社株主帰属当期純利益が0.7%増の84億円としている。配当予想は22年10月期と同額の75円(第2四半期末35円、期末40円)としている。

 不透明な状況が続くが、全体として建設機械レンタル需要が緩やかに回復することを見込み、先行投資による費用増を吸収して増収増益予想としている。事業環境の変化を考慮して中期経営計画の24年10月期目標数値を下方修正したが、災害復旧・防減災・老朽化インフラ更新など国土強靭化関連工事で需要が堅調であり、積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。

■株主優待制度は毎年10月末対象、優待内容を変更

 株主優待制度は毎年10月末時点の株主を対象として実施(詳細は会社HP参照)している。なお22年10月末対象から、保有株式数および継続保有期間に応じて優待品(北海道商品)を贈呈する方法に変更した。

■株価は上値試す

 12月9日に自己株式取得を発表した。上限110万株・20億円で、取得期間は22年12月12日~23年4月21日としている。

 株価は順調に水準を切り上げて戻り歩調だ。週足チャートで見ると13週移動平均線が支持線の形となっている。指標面の割安感も評価材料であり、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。12月21日の終値は2258円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS231円87銭で算出)は約10倍、今期予想配当利回り(会社予想の75円で算出)は約3.3%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS3571円98銭で算出)は約0.6倍、そして時価総額は約875億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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