【どう見るこの相場】内憂外患の日本、市場はリスクオフへ、「新選挙関連三羽烏」に注目

どう見るこの相場

■米、イラン核施設を電撃空爆、緊張激化へ

 「2週間以内」と言っていたのが、わずか「2日」である。米国が、イランの核施設3カ所を空爆した。例の地下深い分厚いコンクリートに覆われた目標構築物も破壊する「バンカーバスター(地中貫通爆弾)」も投下したと伝えられた。この米国のトランプ大統領の前言を翻すような不意打ちは多分、「トランプ・ディール(取引)」に違いなく、同大統領が圧力を掛けているように、イランが無条件降伏するのか、それともイランも報復攻撃に出て地政学リスクの「パンドラの函」が開きさらにエスカレーションするのかは、まだ不透明である。

■都議選敗北で与党苦境、参院選にも影響か

 この米国のイラン攻撃が伝えられた前日22日は、東京都議会議員選挙の投開票日でもあった。ここでも政権与党の自民・公明党は、獲得議席数を減らし、自民党は、第一党を都民ファーストに再奪還された。この選挙は、7月3日公示、20日投開票で予定されている参議院選挙の前哨戦と位置付けられていた。昨年10月の衆議院選挙で、自民・公明は過半数を割り「少数与党」に転落し苦しい政権運営を強いられたが、参議院選挙でもこのまま厳しい都民の審判が続くようなら過半数割れとなり、政局波乱から野党の結束状況次第では、政権交代のカゲもちらつくことになる。

 内憂外患である。きょう週明けの株式相場は、まずリスクオフでスタートすることが懸念させる。ただそのなかでも一部リスクオンとなるセクターも一部あるはずである。外患関連では、地政学リスクが買い材料となる防衛関連株や金先物関連株が予想される。内憂関連でも、同様なリスクオンとなるセクターが予想される。このキーストックとして週明けの株価動向が注目されるのが、「新選挙関連三羽烏」というのが、当コラムの見立てである。

■木徳神糧が「三羽烏」新メンバーに浮上

 当コラムでは、以前から再三再四にわたりこれでもかこれでもかと「選挙関連三羽烏」としてイムラ<3955>(東証スタンダード)、ムサシ<7521>(東証スタンダード)、麻生フォームクリートの3社を取り上げてきた。政局の波乱時には先見性を発揮して株価が動意付く習性を手掛かりとしていた。ところがその麻生フォームクリートが、今年1月に株式公開買い付けされ3月に上場廃止となり、一角が崩れてしまった。そこで当コラムでは、今回、諸般の事情を考慮した「三羽烏」の一角に木徳神糧<2700>(東証スタンダード)を補充してみることにした。

 この補充には少々、前置きが必要だろう。木徳神糧は、選挙関連の資機材を手掛けるイムラやムサシとは異なり、ダイレクトには選挙関連銘柄とは言いにくい。しかし東京都都議会議員選挙にしろ参議院選挙にしろ、選挙の争点は物価高対策である。現金給付か消費税減税かと与野党が国民に信を問うことになっているが、物価高のシンボルがコメ価格の高騰である。総務省が、前週末20日に発表した全国の消費者物価指数は、前年同月比3.7%上昇と8カ月連続の上昇で、とくに「コメ類」は同101.7%上昇と諸悪の根源となった感があった。木徳神糧は、このコメ流通の一角を担うコメ卸で、間接的に物価高問題への関連性が取り沙汰されていたのである。

■木徳神糧が大臣発言に反論、市場価格操作を否定

 というのも、コメ政策の失政と失言で更迭された前大臣の後任に就任したた小泉進次郎農林水産大臣が、同社を名指ししないまでも、コメ卸のなかには営業利益が500倍増益にもなったケースがあると取り上げる発言をしたからである。小泉大臣は、備蓄米の放出を前大臣の競争入札方式とは異なり、集荷業者や卸売業者を中抜きし直接、小売り事業者に売り渡す随意契約方式に変更し、小売り価格が、5キロ=2000円台に低下するコメ価格の沈静化を実現した。と同時にコメ流通プロセスの不透明性にも言及し、あたかもコメ卸が荒稼ぎをしているかのような発言につながった。

 木徳神糧も、大臣発言を黙って認めたわけではない。今年6月11日には社長コメントを発表し、同社が、コメの市場価格を釣り上げたり、買い占めや出し惜しみによって流通を阻害した事実は一切ないと否定した。確かに今年5月8日に開示した同社の今2025年12月期第1四半期(2025年1月~3月期、1Q)の米穀事業の営業利益は、前年同期比5倍増益で着地したが、これについても高騰する仕入れ価格の価格転嫁、値引き販売減少による利幅の改善、工場統廃合による生産性の向上によることを明らかにした。この好決算とともに株式分割(基準日・6月30日、1株を5株に分割)も同時発表し、株価はストップ高を交えて上場来高値1万5070円まで約6割高と急騰した。

■株式分割後の展開に市場が注視

 株式分割の権利付き最終日は、今週後半の26日であと4日を残す。権利取りで一段高があるのか、権利落ち後に株価波乱があるのか、前日投開票された東京都都議会選挙や参議院選挙とも絡んで政治株価化する可能性も捨て切れない。実は同社の同業他社のコメ卸のヤマタネ<9305>(東証プライム)も、前月5月末に株式分割(1株を2株に分割)しており、分割権利をすんなり落とし、足元では分割権利落ち後の理論価格水準で推移しており、この比較も働くことになる。

 この木徳神糧にしろイムラにしろムサシにしろ、足元では野党が石破内閣への内閣不信認決議案提出を見送り衆参同時選挙が遠退いたにもかかわらず高安マチマチで小動きにとどまった。しかし通常国会が閉会し、事実上の参議院選挙がスタートしたここから株価がどう動くのか見通しにくい。相場全般が、内憂外患状態のまま推移する可能性があるということでもあり、選挙関連の「新三羽烏」の株価動向をウオッチしつつ、選挙関連・政局関連銘柄に打診買いをするのも、あるいはリスク低減対策として有効かもしれない。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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