
■国内主力工場の閉鎖、地域経済に打撃か?部品メーカーへの波及も懸念
5月14日に発表された自動車大手7社の2025年3月期連結決算では、各社の厳しい経営状況が明らかとなった。最終赤字を計上したのは日産自動車1社のみであるものの、スズキを除く6社が前年同期比で減益となり、自動車業界全体として収益性の悪化が際立った。7社全体の最終利益は、前期比で1兆7040億円の大幅減となった。一方、売上高は円安とグローバル販売の好調を背景に初めて100兆円を突破し、100兆6767億円に達した。しかし、増収が収益改善には結びついておらず、構造的な課題が浮き彫りとなっている。
■日産、国内主力工場を閉鎖へ、世界で7拠点削減、再建へ痛み伴う構造改革
とりわけ厳しい状況にある日産自動車は、6708億円の巨額赤字を計上し、経営再建に向けた抜本的な構造改革を打ち出した。その一環として、約2万人規模の人員削減に加え、国内外7工場の閉鎖を含む大規模な拠点再編に踏み切る。
5月17日の各社報道によれば、国内では主力工場である追浜工場(神奈川県横須賀市)および子会社・日産車体の湘南工場(同県平塚市)の閉鎖に向けた調整が進められている。海外では、メキシコなど4か国の5工場が閉鎖対象となる見込みだ。
自動車業界全体を取り巻く経営環境も一層厳しさを増している。2026年3月期には、米国による関税措置や為替変動が各社の業績に大きな影響を及ぼすことが懸念される。トヨタ自動車は、これらの影響を1800億円と試算し、最終利益は前期比34.9%減の3兆1000億円にとどまると見込んでいる。ホンダは関税のマイナス影響を6500億円と見積もり、最終利益は70.1%減の2500億円と大幅減を予測している。日産自動車も、最大4500億円の為替変動リスクを警戒している。
東京商工リサーチの調査によれば、自動車大手7社の直接・間接取引先は全国で約7万社に及ぶ。なかでも、国内工場の閉鎖が検討されている日産の取引先は広範にわたり、その業績悪化は地域経済に深刻な影響を及ぼす恐れがある。米国の関税政策に加え、電気自動車(EV)へのシフトや業界再編の動きなど、自動車産業は2025年に大きな転換期を迎える。日産の大規模な工場閉鎖計画は、その荒波の象徴といえるだろう。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)