キユーピーと広島大学の共同研究、世界で初めてアレルギー低減卵の安全性を確認

■熱や消化酵素に強いアレルゲン「オボムコイド」を含まない鶏卵の作出

 卵アレルギーは、日本では約1%の人が罹患していると推定される食物アレルギーの一種。卵アレルギーの原因となるのは、卵白に含まれるタンパク質の一部で、その中でも「オボムコイド」と呼ばれるものが最も強いアレルゲンとして知られている。オボムコイドは、熱や消化酵素に対して非常に強い耐性を持っており、加熱や消化の過程で分解されにくいため、体内に入った際に免疫系を刺激しやすい。

 キユーピー<2809>(東証プライム)と広島大学は、卵アレルギーで苦しむ人をゼロにしたいという共通の目標のもと、アレルギー低減卵の開発に取り組んできた。その成果として、2020年には、オボムコイドを含まない鶏卵を作出することに成功した。この鶏卵は、遺伝子組み換えではなく、鶏の卵巣にあるオボムコイド遺伝子を特定し、その発現を抑制するRNA分子を注射することで作製された。この方法は、鶏自体の遺伝子を変えるわけではなく、卵巣内で一時的にオボムコイド遺伝子の働きを止めるだけなので、安全性や倫理性に配慮したもの。

■学術誌『Food and Chemical Toxicology』2023年5月号に掲載

 このオボムコイドを含まない鶏卵の安全性を検証するために、動物実験を行った。その結果、オボムコイドを含まない鶏卵は、通常の鶏卵と比べて、栄養価や消化吸収率に差がなく、また副作用や毒性も認められなかった。これは、世界で初めての報告であり、アレルギー低減卵の開発における大きな一歩と言える。その研究成果に関する論文は、学術誌『Food and Chemical Toxicology』2023年5月号に掲載されることになった。

 キユーピーと広島大学は、今後もアレルギー低減卵の研究を進めていく。特に、オボムコイドを含まない鶏卵が、実際に卵アレルギー患者に対して有効かどうかを確かめるために、臨床試験を行う予定。また、オボムコイド以外のアレルゲンも低減することができるかどうかも検討していく。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■7日間摂取試験でBCAAやタウリン増加、血液健全性を維持  吉野家ホールディングス<9861>(…
  2. ■日本味と匂学会で優秀発表賞を受賞、応用研究に期待  花王<4452>(東証プライム)は9月24日…
  3. ■GHG削減価値をデジタル証書化、荷主に割り当て  商船三井<9104>(東証プライム)は9月19…
2025年11月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

ピックアップ記事

  1. ■日銀トレード再び、不動産株に眠る超割安銘柄  今週の投資コラムは、政策金利据え置きの投資セオリー…
  2. ■日銀据え置きでも冴えぬ不動産株、銀行株が主役に  株価の初期反応が何とも物足りない。10月30日…
  3. ■造船業再生へ3500億円投資要望、経済安全保障の要に  日本造船業界は、海上輸送が日本の貿易の9…
  4. ■高市政権が描く成長戦略、戦略投資テーマ株に資金集中  「連立政権トレード」は、早くも第2ラウンド…
  5. ■全市場のわずか1.4%、希少な高配当利回り銘柄が浮上  株式市場では、高配当利回りを持つ10月決…
  6. ■「高市祭り」への期待と警戒交錯、資金は安定配当株へシフト  10月終盤相場は、「高市祭り」か「高…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る