【どう見るこの相場】9月相場が二極化と多極化の混在ならば食品卸の割安株の「ジャイキリ」の可能性にトライ

■天皇杯で熊本が神戸を撃破!J2最下位からの奇跡のジャイキリ(番狂わせ)

 今週の当特集は、門外漢を承知で敢えてサッカーの天皇杯から話を始めることにしたい。天皇杯は、プロリーグのJ1、J2、J3からアマチュア、大学生、高校生までカテゴリーに関係なくすべてのチームに出場資格があり、トーナメント方式で日本一を決める伝統のあるスポーツイベントである。試合は、45分ハーフの90分で争い、決着がつかなければ延長戦を戦い、それでも勝負がつかなければ、最後はペナルティキック(PK)戦で雌雄を決する。

 トーナメント方式の面白さで、一発勝負の怖さと運なども味方してカテゴリーの下のチームが、上のチームを破る「ジャイアントキリング」もよく起こる。昨年は、JリーグのJ2に所属するヴァンフォーレ甲府が、並み居るJ1チームを打ち破って日本一に輝き「ジャイキリ」(ジャイアントキリング:番狂わせ)を実現した。今年も、8月30日に準々決勝を終わってベスト4が出揃ったが、この準々決勝でもJ2のロアッソ熊本が、J1のヴィッセル神戸をPK戦で打ち破った。熊本のJ2での順位は現在、20位でJ3への降格圏ギリギリに位置し、対して神戸は、昨3日に逆転勝利してJ1の首位に返り咲き優勝争いのトップに躍り出ており、まさに「ジャイキリ」となった。

■33年ぶり高値更新のTOPIXに隠れた「ジャイキリ」候補は?

 なぜ天皇杯の話を持ち出したかといえば、前週1日の9月相場の月初商いには、これも個人的な思い入れで申訳ないが、小さな変化ながら「ジャイキリ」を予兆させるような値動きがあったからだ。日経平均株価は、5営業日続伸し、東証プライム市場の売買代金も3兆円台と活況を取り戻し、東証株価指数(TOPIX)は、終値でバブル相場崩壊後の高値を33年ぶりに更新した。ただこの日経平均株価とTOPIXを比べると、日経平均が前場の日中高値から、大引けにかけ値を消して値上がり幅を縮小させたのに対して、TOPIXは高値で強張るなどの対照的な動きをみせた。

 これは、ハイテク・グロース株の東京エレクトロン<8035>(東証プライム)やアドバンテスト<6857>(東証プライム)が、その後に発表される米国の8月の雇用統計に警戒感を強めて前場高から後場安に転じたことが要因となった。それにもかかわらず東証プライム市場では、値上がり銘柄数が79%、年初来高値更新銘柄が291銘柄に達するなど幅広く物色され、TOPIXの33年ぶりの高値更新につながった。米国市場でも、雇用統計発表後にダウ工業株30種平均(NYダウ)は反発したものの、10年物国債利回りは上昇しナスダック総合株価指数は、6営業日ぶりに反落し、画像処理半導体で世界トップのエヌビディアも、1.71%安と売られた。

 このFRB(米連邦準備制度理事会)の金融引き締め策が長期化すればバリュー株、ピークアウトが近ければグロース株をそれぞれ選好する二極化相場は多分、9月19日、20日開催のFOMC(公開市場委員会)まで続く可能性があり、レーバーデーの3連休を終わって市場復帰する海外投資家がこれを増幅させることも考えられる。しかし、少なくとも1日の東京市場の銘柄物色の広がりからは、グロース株とバリュー株がせめぎ合う二極化相場と、カテゴリーに関係なく銘柄物色の幅が広がる多極化相場が混在することも予兆させるのである。

■天皇杯と株式市場の共通点は?「ジャイキリ」を狙う食品卸株の魅力

 多極化相場ならば、天皇杯と同様すべてのカテゴリーの銘柄に可能性があり、主力株をオーバーパフォームする「ジャイキリ」にトライする期待も高まるはずだ。そこで注目したいのが、食品卸株である。食品卸株は、8月29日にヤマタネ<9305>(東証プライム)とヨシムラ・フード・ホールディングス<2884>(東証プライム)のそれぞれが発表したM&Aが株価急動意のカタリスト(株価材料)となった。ヤマタネは、弁当給食向け冷凍宿品のトップ企業を69億円超、ヨシムラ・フードは、北海道産ホタテを仕入れ・加工する会社を60億円超でそれぞれ子会社化し、株価は揃って年初来高値を更新し、ヤマタネは前週末1日も高値追いとなった。

 折から福島原発の処理水の海洋放出で中国が日本産水産物で全面輸入禁止により水産卸市場の水産物価格急落が伝えられ、岸田内閣が水産事業者への支援策や国内新販路開拓を訴え、また9月からは食品メーカーの値上げも相次ぐ厳しい経営環境にある。そうしたなかで「アフター・コロナ」のリベンジ消費やインバウンド需要の回復などで業績を上方修正し、高利益進捗率を示した割安な食品卸株などに「ジャイキリ」を狙ってみるのも一法となりそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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