立花エレテックは上値試す、24年3月期は再上振れの可能性

 立花エレテック<8159>(東証プライム)はFAシステム事業、半導体デバイス事業、施設事業などを展開している。電機・機械・電子・情報の分野において製品と技術をトータルで提供する技術商社である。長期ビジョンには「安定成長で200年続く企業」を掲げ、新しい時代に適合した営業戦略、体質改善のための基盤強化、継続して2000億円以上の売上を計上できる顧客基盤獲得を推進している。24年3月期(23年11月7日付で上方修正)は、不透明感を考慮して営業・経常利益横ばい予想としているが、第2四半期累計の進捗率が高水準であることなどを勘案すれば、通期会社予想は再上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は急伸して上場来高値圏だ。指標面の割安感も評価材料であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。

■電機・機械・電子・情報の技術商社

 1921年創業でFAシステム事業、半導体デバイス事業、施設事業などを展開している。電機・機械・電子・情報の分野において製品と技術をトータルで提供する技術商社である。23年4月1日時点でグループは同社および連結子会社16社で構成され、本社は大阪市西区、営業拠点は国内19拠点、国内子会社は6社・29拠点、海外子会社は中国やASEANに9社・14拠点に展開している。

 セグメント区分はFAシステム事業、半導体デバイス事業、施設事業、その他としている。23年3月期のセグメント別売上高構成比はFAシステム事業が51%、半導体デバイス事業が39%、施設事業が8%、その他が3%、営業利益構成比はFAシステム事業が59%、半導体デバイス事業が39%、施設事業が2%、その他が▲0%だった。全社ベースの海外売上高比率は18%だった。仕入先構成比は三菱電機および三菱電機グループが39%、ルネサスエレクトロニクスが19%、外資系メーカーが9%、その他が34%だった。

 FAシステム事業は、プログラマブルコントローラーやインバーターなどのFA機器部門、生産設備を監視・計測・制御するシステム構築やソリューションを提供するFAシステムソリューション部門、産業用ロボットや放電加工機などの産業メカトロニクス部門、コネクターやエンベデッド機器などの産業デバイスコンポーネント部門で構成されている。主要仕入先は三菱電機および三菱電機グループである。

 半導体デバイス事業は、マイコンやASICなどの半導体、およびメモリーカードや密着イメージセンサーなどの電子デバイスを展開している。主要仕入先はルネサスエレクトロニクスや外資系メーカーである。

 施設事業は、空調機器、LED照明、太陽光発電システム、昇降機、受変電設備機器、監視制御装置などを展開している。その他(MS事業)は、電子機器設計・製造受託のEMS事業、立体駐車場・流通向けラック用金属部材加工・製造受託のMMS事業などで構成されている。

 電機・機械・電子・情報分野の技術商社として、工場内の制御技術からITソリューションまでワンストップで提供できる幅広い製品ラインアップ、従業員の約4分の1が技術者という高い技術力、そして提案・開発・調達力によるソリューションやエンジニアリング・サービスを特徴・強みとしている。

■中長期経営計画NEW C.C.J2200

 21年9月に創業100周年を迎え、21年11月に22年3月期~26年3月期を対象期間とする中長期経営計画「NEW C.C.J2200(C.C.J=Change、Challenge、Jump―up)」を策定・公表した。長期ビジョンには「安定成長で200年続く企業」を掲げ、中計の5年間を「200年企業になるための基盤づくり」のステージと位置付けた。

 目標値には売上高2200億円(FAシステム事業1140億円、半導体デバイス事業780億円、施設事業210億円、MS事業70億円、海外事業25年12月期300百万USドル)、営業利益70億円、および戦略取り組みビジネス(売上+見積商談)500億円を掲げている。

 基本戦略としては、新しい時代に適合した営業戦略(モノ売りからコトも含めた提案をできる営業力・技術力の向上)、体質改善のための基盤強化(社内実務のOA化と新しい時代を見据えた人事制度改革)、継続して2000億円以上の売上を計上できる顧客基盤獲得を推進している。

 重点取り組み施策として、FAシステム事業はM2Mビジネス、システムビジネス(ハードにシステムを組み合わせた提案)、ロボットビジネス、3Dプリンタービジネスの推進、半導体デバイス事業は仕入先開拓による品揃え強化、保有技術力のブラッシュアップ、施設事業は地域のサービスレベルの均一化による関東・中部の顧客基盤確立、MS事業はアジアにおける幅広い製造委託先の開拓、海外事業は拠点のローカル化によるアジアでのローカルマーケット開拓を推進する。

 株主還元も強化する方針だ。23年6月に自己株式取得(上限100万株、発行済株式総数の4%)を発表した。そして26年3月期までの3年間で300万株(発行済株式総数の12%)の自己株式取得を行い、同期間の会計年度ベースにおいて総還元性向50%以上を目指すとしている。

 なお23年3月期に売上高が2272億円となって売上高の目標を達成したが、引き続き中長期経営計画「NEW C.C.J2200」の戦略取り組みを加速し、常に2000億円以上の売上を維持できる顧客基盤づくりを推進する方針としている。

 DX化の推進については全社レベルの情報の一元化・標準化を目指し、新ITシステムの導入が27年9月までに完了見込みとなっている。新システムの導入により、高収益体質への変革を目指して、より高度な業務、将来の発展のための業務へと人材の流動化を推進する。

■サステナビリティ経営

 サステナビリティ経営については、23年4月1日付でサステナビリティ委員会を設置するとともに、サステナビリティ基本方針として環境(E)面では環境ソリューションビジネスと環境負荷低減に向けた取り組み、社会(S)面では人基軸経営と地域社会との連携、ガバナンス(G)面では法令・規則遵守のコンプライアンスやリスクマネジメントを強化している。

 なお23年4月に「なごみ会」(社員が自慢に思える会社を目指して活動する会)が発足した。また地域・社会との共生に向けた取り組みとして、里山保全活動である大阪府枚方市「なごみの里」が23年4月に完成し、23年10月には枚方市主催の環境フェスタにおいて「なごみの里」地域貢献活動のPRを行った。23年12月にはフェンシング フルーレ日本代表の松山恭助選手とスポンサー契約を締結した。

■24年3月期は上振れの可能性

 24年3月期の連結業績予想(23年11月7日付で上方修正)は、売上高が23年3月期比0.6%減の2260億円、営業利益が0.8%増の104億円、経常利益が0.0%減の110億円、親会社株主帰属当期純利益が4.3%減の75億円としている。配当予想は23年3月期比10円増配の100円(第2四半期末50円、期末50円)としている。3期連続増配で予想配当性向は32.8%となる。

 第2四半期累計は、売上高が前年同期比4.3%増の1148億11百万円、営業利益が20.3%増の57億75百万円、経常利益が13.0%増の65億58百万円、親会社株主帰属四半期純利益が9.1%増の45億09百万円だった。主力のFAシステム事業の好調が牽引し、第2四半期累計として過去最高業績だった。なお営業外収益では為替差益が1億62百万円減少、特別利益では投資有価証券売却益が1億67百万円減少した。

 セグメント別に見ると、FAシステム事業は売上高が9.3%増の588億99百万円で営業利益が23.6%増の32億76百万円だった。主力製品が順調に伸長して増収増益だった。売上高は第2四半期累計として過去最高だった。FA機器部門では半導体製造装置関連や物流関連の設備投資案件により、プログラマブルコントローラー、インバーター、ACサーボが大幅に増加した。FAシステムソリューション部門では低圧配電制御機器が増加した。産業メカトロニクス部門ではレーザー加工機や自動化設備が大幅に増加した。一方で、産業デバイスコンポーネント部門のタッチパネルモニターなどが減少した。

 半導体デバイス事業は売上高が0.8%減の442億07百万円だが、営業利益が14.9%増の24億62百万円だった。電子デバイスで液晶やコネクターが減少したが、半導体が堅調だった。

 施設事業は売上高が4.2%増の91億41百万円で営業利益が204.0%増の93百万円だった。売上高は第2四半期累計として過去最高だった。給湯器関連が前期の大幅伸長の反動で減少したが、物流倉庫などのリニューアル需要によりLED照明や昇降機の更新需要が増加した。大型再開発案件向けの受配電設備の増加も寄与した。

 その他は売上高が8.8%減の25億63百万円で、営業利益が56百万円の損失(前年同期は24百万円の損失)だった。EMS事業は家電向け液晶基板ビジネスが好調だったが、MMS事業において物流倉庫案件の計画変更や金属部材の価格高騰の影響を受けた。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が558億80百万円で営業利益が27億50百万円、第2四半期は売上高が589億31百万円で営業利益が30億25百万円だった。

 第2四半期累計が想定以上に好調だったため、通期予想は前回予想に対して売上高を30億円、営業利益を9億円、経常利益を10億円、当期純利益を5億円、それぞれ上方修正した。修正後の通期予想は不透明感を考慮して営業・経常利益横ばい予想としているが、第2四半期累計の進捗率が売上高51%、営業利益56%、経常利益60%、当期純利益60%と高水準であることなどを勘案すれば、通期会社予想は再上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は保有株式数および継続保有期間に応じて贈呈

 株主優待制度(詳細は会社HP参照)については、保有株式数および継続保有期間に応じてクオ・カードを年1回贈呈(定時株主総会終了後の6月下旬に発送)している。年4回(毎年3・6・9・12月末)を基準に同一株主番号で必要株数を継続して保有している株主が対象となる。

■株価は上値試す

 23年6月5日発表の自己株式取得(上限100万株・30億円、取得期間23年6月6日~24年3月31日)については、23年12月31日時点での累計取得株式総数が79万1500株となっている。

 株価は急伸して上場来高値圏だ。指標面の割安感も評価材料であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。1月30日の終値は3115円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS304円96銭で算出)は約10倍、今期予想配当利回り(会社予想の100円で算出)は約3.2%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS3388円58銭で算出)は約0.9倍、時価総額は約780億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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