加賀電子は戻り歩調、25年3月期は上振れ余地

 加賀電子<8154>(東証プライム)は独立系の大手エレクトロニクス総合商社である。半導体・電子部品等の商社ビジネス、電装基板製造受託サービスのEMSビジネスを展開し、成長戦略として収益力強化、経営基盤強化、新規事業創出、SDGs経営を推進している。25年3月期は営業・経常利益横ばい予想としている。需要面は下期からの本格回復を見込み、利益面では人件費の増加を販売数量と販売ミックスによって吸収する見込みだ。第1四半期が社内計画を上回る進捗だったことを勘案すれば、通期予想にも上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価(効力発生日24年10月1日で株式2分割)は地合い悪化の影響を受けた8月の安値圏から反発して戻り歩調だ。指標面の割安感も評価材料であり、上値を試す展開を期待したい。なお11月6日に25年3月期第2四半期決算発表を予定している。

■独立系の大手エレクトロニクス総合商社

 独立系の大手エレクトロニクス総合商社である。半導体・電子部品等の商社ビジネス、および電装基板製造受託サービスのEMSビジネスを展開している。またM&Aにより、加賀FEI(旧:富士通エレクトロニクス)やエクセルなどを子会社化している。

 24年3月期のセグメント別売上高構成比は電子部品事業(半導体、電子部品、EMS)が87%、情報機器事業(パソコン・周辺機器、各種家電、写真・映像関連商品)が8%、ソフトウェア事業(CGアニメ映像制作、アミューズメント関連商品)が0%、その他事業(エレクトロニクス機器修理、アミューズメント機器製造販売、スポーツ用品販売など)が4%、営業利益構成比は電子部品事業が81%、情報機器事業が11%、ソフトウェア事業が1%、その他事業が6%、調整額が0%だった。

 中期経営計画に沿ったセグメント区分は電子部品事業、EMS事業、CSI事業(情報機器事業)、その他事業(ソフトウェア事業、その他)としている。24年3月期の売上構成比は電子部品事業が66%、EMS事業が22%、CSI事業が8%、その他事業が3%、営業利益構成比は電子部品事業が55%、EMS事業が29%、CSI事業が11%、その他事業が5%だった。

■収益力強化や新規事業創出を推進

 中期経営計画2024では基本方針に、更なる収益力の強化、経営基盤の強化、新規事業の創出、SDGs経営の推進を掲げている。株主還元については連結配当性向の目安を25~35%に置き、安定的かつ継続的に充実化する。

 重点アクションとして、さらなる収益力の強化では成長分野(モビリティ、通信、環境、産業機器、医療・ヘルスケア)への選択と集中、EMSビジネスおよび海外ビジネスの強化・拡大、経営基盤の強化ではコーポレートガバナンスの強化、効率的なグループ運営、人的資本への投資、新規事業の創出では新規分野への取り組み、ベンチャー投資によるオープンイノベーションの推進、非連続な成長を狙うM&Aへの挑戦を掲げている。

 SDGs経営についてはサステナビリティ中長期経営計画(21年11月公表)に基づいて、持続可能な社会の実現と持続的なグループの成長の両立を目指すとしている。23年10月には、くすりの窓口およびツルハとの3社共同で国内初となる企業向け処方薬デリバリーサービスを開発し、第1号案件として本社ビル内に処方箋受付機と受取ロッカーを設置・運用開始した。また生物多様性の保全活動に向けた取り組みとして同社本社ビル屋上に「ビオトープ」を設置した。ビオトープとは「地域の野生生物が暮らす、あるまとまった空間」のことである。24年3月には経済産業省と日本健康会議が進める健康経営優良法人認定制度において健康経営優良法人2024(大規模法人部門)の認定を受けた。23年に続き2年連続となる・

 24年1月には、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応方針を決議・公表した。ROEについては、直近の実績が22年3月期15.7%、23年3月期19.6%となり、凡そ7~8%と認識している株主資本コスト(22年3月期7.5%、23年3月期8.1%)を優に超える水準で推移している。今後も資本コストを上回る収益性でROEを持続的に向上させ、事業や成長性に対して株式市場から正当な評価を受けることでPBRを改善し続けるために、中期経営計画2024で定めた諸施策の着実な実行による事業成長と収益性の維持・向上、配当による株主還元や機動的・戦略的な自己株式取得などによる株主満足度の向上、サステナビリティ経営の推進、積極的なIR活動の維持・強化に取り組む方針としている。

 なお24年4月には子育て世帯に様々なサービスを提供するTIMERS(タイマーズ)への出資を発表、24年5月にはノーコードIoT・DXプラットフォーム事業を展開するミークへの出資を発表した。

 24年7月には、子会社エクセルおよびアルファバスジャパンと共同で2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の運営参加サプライヤーとして協賛し、環境に配慮した中国ALFA社製小型EVバスを提供すると発表した。

■25年3月期営業・経常利益横ばい予想だが上振れ余地

 25年3月期の連結業績予想は、売上高が24年3月期比2.3%増の5550億円、営業利益が0.6%増の260億円、経常利益が0.1%増の260億円、親会社株主帰属当期純利益が11.5%減の180億円としている。配当予想は第2四半期末110円、期末55円としている。効力発生日24年10月1日の株式2分割後で比較すると24年3月期は年間110円(第2四半期末55円、期末55円)で、25年3月期も24年3月期と同額の年間110円(第2四半期末55円、期末55円)となる。予想配当性向(株式2分割後の会社予想連結EPS342円63銭で算出)は32.1%となる。

 セグメント別の計画は、電子部品事業の売上高が2.1%増の4825億円でセグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が0.1%増の209億円、情報機器事業の売上高が1.6%増の450億円で利益が2.6%増の30億円、ソフトウェア事業の売上高が16.8%増の30億円で利益が8.1%増の4億円、その他事業の売上高が5.4%増の245億円で利益が9.3%増の17億円としている。営業利益(前期比+2億円)の変動要因は販売数量・販売ミックスで+16億円、人件費増加(賃上げ、新卒採用、定期昇給など)で▲15億円、その他経費で+1億円の見込みとしている。

 第1四半期は、売上高が前年同期比6.6%減の1286億38百万円、営業利益が20.6%減の55億50百万円、経常利益が12.5%減の60億45百万円、親会社株主帰属四半期純利益が28.4%減の41億27百万円だった。

 減収減益だった。売上面は電子部品事業における主要顧客の在庫調整、一部の特定大口顧客向け取引縮小などが影響した。利益面は減収影響に加え、賃上げによる人件費の増加、物流コストの上昇なども影響した。ただし社内計画を上回る水準だった。売上総利益率は低採算品の販売縮小により0.5ポイント上昇した。営業外では受取利息・受取配当金が増加、為替差損益が改善、特別利益では前期計上の投資有価証券売却益が剥落した。

 電子部品事業は売上高が7.2%減の1113億20百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が26.9%減の43億31百万円だった。減収減益だった。部品販売ビジネスは前期後半以降に顕在化した主要顧客の在庫調整、子会社エクセルの海外子会社における特定大口顧客向け取引縮小が影響した。EMSビジネスは空調機器向けが主要顧客の在庫調整の影響を受けたが、車載向けの伸長や産業機器向けの回復で増収基調に転じた。

 情報機器事業は売上高が12.0%減の106億06百万円、利益が14.4%減の6億39百万円だった。減収減益だった。パソコン販売は教育機関向けが好調を維持したが、量販店向けが低調だった。またLED設置ビジネスの大口案件が一巡したことも影響した。

 ソフトウェア事業は売上高が9.4%増の6億31百万円、利益が35百万円(前年同期は4百万円の損失)だった。CG映像制作の受注が堅調に推移して増収増益だった。その他事業(エレクトロニクス機器修理・サポート、アミューズメント機器製造・販売、スポーツ用品販売など)は売上高が20.4%増の60億79百万円、利益が58.3%増の4億61百万円だった。パソコン製品・周辺機器のリサイクルビジネス、アミューズメント機器の販売が好調だった。

 なお会社別の営業利益(連結調整前)は加賀電子が21.9%減の44億23百万円、加賀EFIが4.3%増の8億31百万円、エクセルが44.7%減の2億68百万円、中計セグメント別の営業利益(同)は電子部品が32.4%減の24億97百万円、EMSが15.0%減の20億69百万円、CSI(コンシューマー&システムインテグレーター)が14.4%減の6億39百万円、その他が221.0%増の2億60百万円だった。

 通期連結業績予想は据え置いて、営業・経常利益横ばい予想としている。需要面については、上期は前年下期からの在庫調整が継続するが、下期からの本格回復を見込んでいる。利益面では賃上げ等による人件費の増加を販売数量と販売ミックスによって吸収する見込みだ。第1四半期は減収減益だったが、社内計画を上回る進捗だったことを勘案すれば、通期予想にも上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は戻り歩調

 24年8月には、JPX総研と日本経済新聞社が共同で算出を行っているJPX日経インデックス400およびJPX日経中小型株指数の24年度(24年8月30日~25年8月28日)の構成銘柄として選定された。JPX日経インデックス400は2年連続、PX日経中小型株指数は4年連続となる。

 株価(効力発生日24年10月1日の株式2分割後、1株当たり数値は分割後)は地合い悪化の影響を受けた8月の安値圏から反発して戻り歩調だ。指標面の割安感も評価材料であり、上値を試す展開を期待したい。9月27日の終値は2877円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS342円63銭で算出)は約8倍、今期予想配当利回り(会社予想の110円で算出)は約3.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2871円11銭で算出)は約1.0倍、時価総額は約1652億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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