価格転嫁率40.6%、消費者離れと取引先反発の懸念で1年前と同水準

■川下産業ほど転嫁率は低く、医療・福祉分野では14.4%と深刻

 帝国データバンクが実施した「価格転嫁に関する実態調査」によると、仕入れコスト上昇分に対する価格転嫁率は40.6%となった。前回調査から4.3ポイント低下し、1年前の水準に戻った。全体の77.0%の企業が多少なりとも価格転嫁できているが、「全く価格転嫁できない」企業も11.2%と依然として1割を超えている。

 項目別では原材料費の転嫁率が48.0%と最も高く、人件費は31.3%、物流費は34.7%、エネルギーコストは29.5%にとどまった。サプライチェーン別では、川上に位置する「化学品卸売」や「鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売」で6割を超える一方、川下の「飲食店」「食品スーパー」「旅館・ホテル」では3~4割程度で前回より低下した。また「医療・福祉・保健衛生」は診療報酬などが公的に定められているため、14.4%と極めて低い。

 価格転嫁の進展には、消費者の購買力向上、企業間の協力、政府支援の3要素が不可欠だ。実質賃金は2022年から3年連続でマイナスとなり、2025年1月も3カ月ぶりにマイナスに転じた。物価と賃金の好循環は十分に進まず、個人消費の回復も鈍い。サプライチェーン全体への適切な利益分配による賃金の引き上げや雇用の安定を通じて消費意欲を高めることが、価格転嫁を進める重要な鍵となる。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■東京大学発スタートアップが開発、19自由度のヒューマノイドロボット  東京大学発スタートアップH…
  2. ■売却面積は約1.6倍に、総額1,785億円超の譲渡価額  東京商工リサーチは6月30日、2024…
  3. ■従来の検索では見つけられなかった本との出会いを創出  富士通<6702>(東証プライム)傘下の富…
2025年8月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

ピックアップ記事

  1. 【ダブルセット・フルセット銘柄、夏休み明けも底堅さに期待】 ■上方修正・増配・株式分割の好材料銘柄…
  2. ■上方修正・下方修正問わず買い集まる異例の展開  3連休入りした9日の成田空港では、夏休みを海外で…
  3. ■株主還元強化が市場の安心材料に  東京エレクトロン<8035>は8月1日、2025年3月期の業績…
  4. ■市場の霧が晴れ始めた、個別銘柄の好調が投資家を惹きつける  前週31日の植田和男日銀総裁の記者会…
  5. ■利上げか、現状維持か?日銀総裁の決断で明暗分かれる8月相場  日銀の金融政策を巡る不確実性が続く…
  6. ■選挙惨敗の石破首相に退陣要求、政局混迷の行方  まるで狂言の『乳切木』(ちぎりき)を観るようであ…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る