
■ロシア声明予告と併せ、国際政治の緊張が一層深まる
トランプ大統領は7月11日、フィリピン、スリランカ、ブラジルなど8カ国に対し新たな高関税を通知した。中でもブラジルには50%の関税を課す方針を示し、ルラ・ダシルバ大統領は強く反発している。さらに、トランプ氏は7月14日にロシアに関する重大声明を発表すると予告し、ウクライナへの追加兵器供与やロシアへの新たな制裁の可能性にも言及した。また米国内では、出生地主義に関連する大統領令が再び差し止められるなど、内政・外交の両面で緊張が高まっている。
■米国主導の関税圧力、世界経済に深刻な影響
一連の関税政策は、世界経済に大きな影響を及ぼすと見られている。国際通貨基金(IMF)の試算では、発動から2年で世界のGDPを0.6%押し下げる可能性があるとされる。米中間で高関税が全面的に導入された場合、米国のGDPは1.7%、世界全体では1.0%の下落が見込まれている。
最大の打撃は米国自身に及ぶとされる。輸入品価格の上昇により、消費者と企業の負担が増し、経済厚生の低下を招く。中国では輸出減少によって1.9%のGDP減が予測され、アジア諸国も米国向け輸出の減退やサプライチェーンの混乱に直面する。ただし、日本、韓国、台湾などは関税率が相対的に低いため、影響は限定的とみられる。
一方、米中対立の中で一部諸国が貿易転換効果の恩恵を受ける可能性はあるが、米国が全方位的に関税を引き上げる場合、そうした利益も相殺される。金融市場への波及も顕著で、ドル高と金利上昇により新興国は通貨安や資金流出のリスクを抱え、経済不安定化の要因となっている。
関税政策の不確実性は企業の投資判断を鈍らせ、サプライチェーンの再構築を迫るなど、経済活動全体に影を落とす。トランプ氏の通商戦略は、米国の経済的地位の強化を意図しているが、国際的な信頼関係の動揺や、世界規模での成長鈍化という大きな代償を伴っている。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)