トランプ関税が日本経済に深刻な影響:実質GDP成長率を0.5ポイント下押し、企業倒産も3.3%増加

■日米初の関税協議、トランプ大統領「日本が最優先」と強調

 日米両政府は2025年4月16日(日本時間17日)、トランプ政権による関税措置をめぐる初の閣僚級協議を米ワシントンで開催した。日本からは赤沢亮正経済再生担当相が出席し、トランプ大統領との面会後、ベッセント財務長官やグリア通商代表部代表らと協議に臨んだ。両国は、建設的な早期合意を目指す方針で一致。今月中に次回の閣僚級協議を開催するほか、事務レベルでも協議を継続することで合意した。関税措置の見直し・撤廃を求めた日本側に対し、米側から明確な譲歩は示されなかったものの、トランプ大統領は「日本が最優先」と述べ、早期合意への意欲を示した。石破首相は今回の協議を「次につながる協議」と評価し、政府一丸で対応する姿勢を強調した。

■自動車産業を中心に波及:中小企業への負担拡大

 日米関税協議で早期合意へ一致したものの、具体的進展は無かった。この「相互関税」の導入が、日本経済に深刻な影響を及ぼす可能性が浮上している。帝国データバンクが発表したレポートによると、2025年度の実質GDP成長率は最大で従来予測より0.5ポイント低下し、企業倒産件数も3.3%増加する見通しだ。特に自動車関連産業を中心に広範囲に波及する影響は避けられず、中小企業の業績悪化や雇用情勢への打撃が懸念される。

■90日間の猶予も安心できない:2025年度の厳しい経済見通し

 今回の相互関税は、当初日本に対して24%が課される予定だったが、90日間はベースライン関税10%に変更された。しかし、これが継続する場合でも実質GDP成長率は0.3ポイント下押しとなり、輸出や設備投資の伸び率が大幅に鈍化する見込みだ。特に輸出の伸び率は、従来予測より最大で1.7ポイント低下すると試算されている。また、企業収益の減少は労働者の所得にも影響を与え、個人消費の低迷につながる可能性がある。

 シナリオ分析では、90日後に24%に戻った場合、2025年度の倒産件数は約340件増加すると予測される。一方、10%の関税が継続する場合でも倒産件数は約250件増加し、失業率はいずれの場合も0.1ポイント上昇する見通しだ。さらに、当初の24%がそのまま適用された場合には、倒産件数は約452件増加するとみられる。

 今後の焦点は、政府と企業の対応にある。中国をはじめとする各国との報復措置が続く中、日本の産業界からは先行き不安の声が多く聞かれる。建設業や製造業を中心に、米国の保護主義的な政策に対する警戒感が高まっている。政府の経済対策と企業の自助努力が求められる局面だが、一部の企業は「1年後には状況が好転する」との見方を示している。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■国内初、HVO51%混合燃料が建設現場で稼働  大成建設<1801>(東証プライム)とユーグレナ…
  2. ■従来の制作プロセスを刷新しAI時代の人材育成を推進  武蔵精密工業<7220>(東証プライム)は…
  3. ■高速道路で手放し運転が可能に、新開発「Honda SENSING 360+」がACCORDの運転支…
2025年7月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

ピックアップ記事

  1. ■内需株に広がる「トランプ・ディール」回避の波  東京電力ホールディングス<9501>(東証プライ…
  2. ■日米関税交渉、7月9日に運命の日「90日猶予」迫る潮目  「三日、三月、三年」とは、潮目、変わり…
  3. ■祝日と金融政策が交錯する7月  7月は、7月21日が「海の日」が国民の祝日に制定されてからフシ目…
  4. ■「MMGA」効果の造船株・海運株は「海の日」月間キャンペーン相場も加わり一段高を期待  あと1カ…
  5. ■選挙関連の「新三羽烏」の株価動向をウオッチ  足元では野党が石破内閣への内閣不信認決議案提出を見…
  6. どう見るこの相場
    ■米、イラン核施設を電撃空爆、緊張激化へ  「2週間以内」と言っていたのが、わずか「2日」である。…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る