出版業界の危機:出版不況が深刻化、有名雑誌の休刊・廃刊が相次ぐ

■有名雑誌の休刊相次ぐ、電子書籍普及と経費増が追い打ち

 出版業界の経営環境が一段と厳しさを増している。帝国データバンクの2023年度の業績調査によると、出版社の36.2%が赤字を計上し、この割合は過去20年で最大となった。減益を含めた業績悪化企業は6割を超え、多くの出版社が苦境に立たされている実態が浮き彫りとなった。

 2024年に入り、有名雑誌の休刊・廃刊が相次いでいる。月刊芸能誌『ポポロ』や女性ファッション誌『JELLY』、アニメ声優誌『声優アニメディア』などが休刊を発表した。また、英文月刊誌『Eye-Ai』を発行していたリバーフィールド社が4月に破産するなど、業界全体に暗い影が広がっている。背景には、購読者の高齢化や若者層における電子書籍の普及、ネット専業メディアの台頭がある。

■出版不況による倒産・廃業ペース、過去5年で最多の見通し

 出版社を取り巻く環境は一層厳しさを増している。「再版制度」により約4割の出版物が返品される在庫負担に加え、物価高騰による紙代やインク代、物流コストの上昇が収益を圧迫している。2024年1-8月の出版社倒産・廃業件数は、前年と同等のペースで推移しており、2024年通年では過去5年間で最多となる可能性が高い。

 業界では生き残りをかけた取り組みも見られる。大手書店による返本削減や、特色あるテーマで業績を伸ばす雑誌の存在など、明るい兆しもある。しかし、ヒット作の創出は容易ではなく、経営体力の疲弊した中小出版社の淘汰が進むと予想される。出版業界は大きな転換点を迎えており、今後の動向が注目される。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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