【介護離職問題】介護離職者の半数以上が休業・休暇制度未利用、企業規模で支援格差が顕著に

■介護休業・休暇制度の未利用率54.7%、企業規模による格差拡大

 団塊世代が75歳以上となり介護離職問題が深刻化する中、東京商工リサーチの調査で企業規模による支援格差が明らかになった。介護離職発生率は7.3%で、離職者のうち54.7%が介護休業・休暇制度を利用していない。この結果からは制度の認識不足や利用しにくい環境が課題としてうかがえる。「仕事と介護の両立に十分に取り組んでいる」企業は19.8%にとどまり、特に中小企業での対応の遅れが目立つ。介護や育児休業・休暇が「発生していない」との回答は大企業22.7%に対し、中小企業61.7%と3倍近い開きがあった。

■就業規則の明文化率、大企業73.4%に対し中小企業は48.2%

 制度の整備状況にも格差が見られる。育児支援の独自休暇制度は大企業52.7%に対し中小企業32.2%、両立支援策の就業規則やマニュアルでの明文化も大企業73.4%に対し中小企業48.2%にとどまる。「取り組みや整備した制度はない」との回答は大企業9.7%に対し中小企業は30.0%に達した。介護離職者の男女比では、男性が多いとの回答が46.7%、女性が多いとの回答が39.5%で、やや男性の方が多い結果となった。

 介護休業期間の93日間についての認識も企業規模で異なり、「長い」と回答した割合は大企業16.0%に対し中小企業35.0%と開きがある。両立支援が「十分でない」理由も、大企業は「職場の雰囲気」(18.8%)や「介護休業が社員に浸透していない」(37.0%)を挙げる一方、中小企業は「自社に前例が少ない」(50.5%)や「代替要員確保の難しさ」(62.6%)を理由としている。

 将来の介護離職者数については「増える」との予測が65.2%を占め、両規模とも危機感を共有している。介護休業期間が「短い」と回答した企業の92.6%が「介護の終わりの予測が難しい」と指摘し、「施設の空きが少なく復職までに時間を要する」(49.3%)という懸念も強い。改正育児・介護休業法の周知徹底や相談窓口の設置など、特に中小企業への支援拡充と企業・社員双方の意識改革が急務となっている。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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