【どう見るこの相場】高配当利回りの増配ストーリー銘柄に「相場の神様」が三度ベルを鳴らし「天井半日」超え

■瞬速で織り込む相場:投資家が知るべき新常識

 昨今のマーケットは、超スピード相場である。好材料にしろ悪材料にしろたちまちのうちに株価に織り込んでしまう。かつて相場格言では「天井三日、底百日」などとされていた。しかし、そんなまどろっこしいところなどとっくにお目にかかれない。その日の前場と後場で株価の方向性が変わることも珍しくなく、「天井半日、底三日」と言い換えた方が、そのスピード違反ぶりを的確に表しているようである。相場の調整には「値幅調整」と「日柄調整」とがあるといわれるが、いまや「日柄調整」は死語と化した感も強い。

 例えば、米国のトランプ大統領が、発動した相互関税が引き金となった「トランプ・ショック」である。株安、債券安、ドル安のトリプル安で、ニューヨーク工業株30種平均(NYダウ)は、4営業日で約4600ドル下落し、ツレ安した日経平均株価も、約4600円の急落となった。ところがNYダウは、今年5月早々に急落前の水準を回復し日経平均株価はそれより早く4月末に修復完了となった。「底四日」である。かつての数々の「ショック安」では、半年、1年と底値圏をさまよい、あのバブル相場崩壊後のデフレ相場では、「失われた30年」とまでいわれたのである。

■「トランプ・ショック」再燃も「底三日」:市場の回復力に注目

 足元の相場は、前週末23日に日米両市場とも「金曜日の引けボケ」で折からの梅雨空のようにぐずつき気味である。米国国債の格下げ、減税法案可決による財政悪化懸念、長期金利の上昇にトランプ大統領のEU(欧州連合)への追加関税が重なって、「トランプ・ショック」のぶり返しのようだが、これもまたまた「底三日」を試す展開も想定される。また、トランプ大統領が承認と伝えられた日本製鉄<5401>(東証プライム)のUSスチールの買収計画が、きょう週明けに上下どちらにどんなスピードで株価に織り込まれるのかも、見物である。

 というのも好材料の織り込みスピードも、ことのほか超高速だからだ。これを個別銘柄ベースで示した先行例が、まだ1週間も経っていないのに、もう旧聞に属してしまったクレハ<4023>(東証プライム)である。同社株は、5月12日に3月期決算の開示とともに自己株式取得と消却、さらに配当は未定としながらもDOE(株主資本配当率)5%を導入する配当政策の変更を発表し、株価は、翌13日にストップ高した。ただ高値での滞空時間は短く、今度は、19日にはDOE導入により今2026年3月期の年間配当を216円(前期実績86.7円)に大幅増配すると正式発表し、株価は13%超の急伸を演じ、東証プライム市場の上昇率ランキングのトップに躍り出た。ただまた高値滞空は短く前週末は下値を確かめる動きを余儀なくされている。

■短期的な高騰後も期待!高配当銘柄の複数回チャンス

 しかし個別銘柄ベースの超スピード相場は、「天井半日」と諦めて早々に追随買いを見送るのは余りにも淡泊で、もう少し粘ってみる価値があるかもしれない。これは、クレハの配当支払予定日は今年6月3日で配当金受領による配当の再投資が想定されるほか、今年9月末の中間配当の権利取り、来年3月末の期末配当の権利取りと高配当利回りを見直すチャンスが少なくともあと3回あるからだ。名作ミステリーの題名の『郵便配達は二度ベルを鳴らす』ではないが、スケジュール的に「相場の神様は三度ベルを鳴らす」展開も想定範囲内になることになる。

 そこで今週の当コラムでは、東証プライム市場の高配当利回りランキングの上位を占める高配当銘柄に注目することにした。この上位銘柄には、クレハと同様に配当方針変更による増配銘柄、今期業績が減益転換予想でも増配銘柄、増配のほか自己株式取得や株式分割を含むダブルセット・トリプルセット予定の銘柄など増配ストーリー性を内包しているからである。業績を未定としていながら今期配当だけは開示している証券株や預金金利より配当利回りが上位にあって「貯蓄から投資へ」が期待できる銀行株を含めて「チャンス3回」を粘り強く狙うのも一考余地がありそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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