全国の米卸業者1822社の実態、小規模企業の3割が資金繰り悪化リスクに直面

■売上1億円未満の小規模企業555社、在庫不足で経営圧迫

 帝国データバンクは6月11日、全国の米卸業者の実態に関する調査結果を発表した。調査によると、全国の米麦卸売業は1,822社で、売上1億円未満の小規模企業が全体の30.5%を占めた。従業員5人未満の企業も6割を超え、規模の小ささが際立つ。とくに在庫不足が深刻化する中、小規模卸は得意先への供給が困難になり、資金繰りへの影響が懸念されている。構造的課題に直面する米卸業界の持続可能性が問われている。

 米の価格高騰や品薄状態は「令和の米騒動」とも呼ばれ、家庭や外食産業に影響を与えている。政府の備蓄米放出により市場の安定を図る動きがある一方で、流通経路の複雑さが価格上昇要因として指摘される。米卸業者の多くは生産から小売までの多段階流通に関わり、精米や配送機能を担う重要な存在となっている。企業の約4分の1が小売と兼業しており、多様な事業展開により収益確保を図っている。また、大手卸では無洗米や冷凍食品など加工品への取り組みも進んでおり、事業の柔軟性が差別化の鍵となる。

 代表者の平均年齢は63.6歳と高齢化が進み、後継者不在による事業継続リスクも大きい。設備や取引構造の面では、大規模企業ほど整備が進み、安定供給が可能となる一方、小規模事業者は在庫や物流で後手に回る現状がある。中長期的には、農業従事者の減少や米価の低迷といった構造問題の解消が求められる。今後は、生産・流通・販売の各段階での改革に加え、行政と連携した価格形成の仕組みづくりが、業界の安定と成長の鍵を握る。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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