
■自動車関税「一致せず」、首脳会談は平行線のまま
米国のドナルド・トランプ大統領が掲げる「相互関税」方針をめぐり、日本企業の間で懸念が広がっている。東京商工リサーチが6月に実施したアンケートによると、「トランプ関税」が業績に「マイナス」と回答した企業は57.6%に達し、4月の前回調査から5.3ポイント上昇した。自動車への追加関税問題をめぐり、石破茂首相がG7カナダ・サミットで米国側と直接交渉を行ったものの、合意に至らなかった。「双方の認識は一致していない」との首相発言が、企業の不透明感をさらに助長するだろう。
■事業縮小や雇用調整の現実味
調査では、「廃業・会社売却」や「一部事業部門の閉鎖・売却」を検討している企業が3.7%を占め、特に製造業、小売業、不動産業、情報通信業で比率が高かった。また、「採用を抑制する」が10.3%、「非正規社員の削減」が2.7%と、企業の約1割が雇用調整に動く可能性を示している。賃上げへの影響については、今年度78.0%、来年度70.8%の企業が「ネガティブな影響はない」と回答しているものの、「賞与増額の見送り」や「ベースアップの縮小」といった慎重な姿勢も垣間見える。
■中小企業は資金繰り、大企業は情報収集に重点
政府や行政に求める支援策として、大企業は「影響の情報提供」(51.7%)を重視する傾向がある一方で、中小企業は「給付金・助成金の支給」(38.6%)や「実質無利子・無担保融資」(31.5%)など、資金面の支援を求める声が目立った。特に中小企業は資金繰りに脆弱であり、今回の関税措置は経営に直接的な打撃を与える可能性がある。猶予期間が1カ月を切るなか、日米間の交渉が停滞する現状に、企業現場は対応の指針を見出せずにいる。
■官民の連携と機動的政策が鍵に
交渉が進まない日米政府の間で、企業は「情報不足」と「資金不足」の二重苦に直面している。石破首相は「早さを優先するあまり国益を損ねてはならない」と述べ、拙速な妥協を避ける構えを見せるが、企業の不安を和らげるには、より踏み込んだ説明と具体的な支援策が必要である。野党からも「足元を見られるな」との声が上がるなど、政治判断が問われる局面となっている。国家間の交渉と並行して、企業現場の声を反映する官民連携の枠組み構築が急務である。企業の持続可能性を保つためにも、政策の柔軟性と機動力が強く求められている。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)