イトーキ×松尾研究所が生産性の共同研究を開始、生産性をAIで可視化

■労働力減少社会を見据え、多様な働き方時代に求められる“生産性”を定義し、生産性の新たな評価モデル構築と計測手法の開発へ

 イトーキ<7972>(東証プライム)は7月29日、松尾研究所(所在地:東京都文京区)とともに、AI技術を活用した「オフィスにおけるマルチモーダルデータ活用による生産性評価研究」を開始したと発表。同研究では、従来のオフィス稼働データや主観的なパフォーマンスサーベイデータに加え、オンライン上の行動履歴やウェアラブルデバイスによるライフログデータを活用し、働く環境・働き方・働く人の生産性との関係性を多面的に分析する。目的は、「生産性の定義と向上に寄与する行動・環境モデルの構築」と「生産性の客観的な計測・検証手法の確立」の2点である。今後は社内実証を経て、大規模実証、サービスとしての展開を視野に入れている。

 近年、テクノロジーの急速な進化により産業構造が変化し、AIによる業務代替や自動化が現実味を帯びる一方、日本では依然として労働生産性の低さが課題となっている。加えて、生産年齢人口の減少や働き方の多様化により、「何が生産性を高めるのか」は組織ごとに大きく異なり、全体像の把握は困難を極める。また、オフィスの存在目的は「生産性向上」であり、オフィスづくりを手掛けるイトーキにとって、「生産性」の解明は事業上の重要課題といえる。

 こうした背景を踏まえ、イトーキは「働く人」を中心に据えたプロダクト開発・空間設計を行う企業として、より高度な分析とエビデンスベースの空間改善を可能とするため、AI分野の第一人者である松尾豊氏が技術顧問を務める松尾研究所と連携した。同研究の目的は、「生産性の定義と向上に寄与する行動・環境モデルの構築」と「生産性の客観的な計測・検証手法の確立」にあり、「スペース稼働データ」や主観的な「パフォーマンスサーベイデータ」に加え、チャット・メール・Web会議ログといったオンライン上のやり取りや、睡眠などのライフデータ(ウェアラブルデバイス活用)を含むマルチモーダルなデータを統合的に分析する点に特徴がある。

 すでに社内では2回の実証実験を実施しており、観察研究ではエリア別にパフォーマンス差が生じていることを確認した。介入実験では、指定エリアで一定時間以上作業を行うことで成果の変化を分析中である。また、ウェアラブルデバイスを活用した分析からは、睡眠時間が5〜7時間の範囲でパフォーマンスが最も高まる傾向が明らかとなったほか、オフィス内での移動の活発化が生産性向上に寄与する可能性も示された。

 今後は、研究初期フェーズにおける仮説検証とPoCを経て、1000人規模での外部実証に進む予定である。さらに、センシングデバイスやWebアプリを活用したデータ収集・分析プラットフォームを構築し、顧客向け評価分析サービスとしての提供を目指す。

 イトーキは、これまでも経済産業省「健康経営オフィスレポート」(2015年)への参画や、自社のオフィス投資によりエンゲージメントスコア80%以上を達成するなど、人的資本経営の実践に取り組んできた。今後も「働き方」全体にアプローチし、データドリブンなオフィスの構築・運用の提案を通じて、生産性を高めるオフィスの持続的なアップデートを図る。働く「人」に寄り添いながら、企業の経営課題解決に貢献していく方針である。

※マルチモーダル:異なる種類のデータを組み合わせて解析する技術
※PoC(Proof of Concept):新技術やアイデアの実現可能性を検証する試行

【イトーキのワークプレイス事業について】
株式会社イトーキは1890年創業。ミッションステートメントに『明日の「働く」を、デザインする。』を掲げ、オフィス家具の製造販売、オフィス空間デザイン、働き方コンサルティング、オフィスデータ分析サービスのほか、在宅ワークや家庭学習用家具、公共施設や物流施設向け機器など、“Tech×Design based on PEOPLE”を強みに、さまざまな「空間」「環境」「場」づくりを支援している。

 ハイブリッドワークが普及し、働く場所や働き方の多様化が進む中で、生産性や創造性を高める空間DX、最適なオフィス運用を伴走型で支援するコンサルティングサービスなども展開している。外部デザイナーやパートナー企業との協業も積極的に行い、新しいワークスタイルとワークプレイスの提案を続けている。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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