【どう見るこの相場】トランプ大統領の発言が市場心理を揺さぶり、3R関連株やリユース関連銘柄に資金流入が拡大

■大統領の交渉術が金融市場を左右し投資家心理に波及

 米国のトランプ大統領は、ギリシャ神話に登場するミダス王にそっくりである。ミダス王は、神様から食べ物だろうと愛する娘だろうと指先で触るすべてのものを金に変える能力「ミダス・タッチ」を授けられる。トランプ大統領の指先も、「ディール(取引)」の能力が授けられているようで、すべてを「タリフ(関税)」に変えてきた。その「トランプ・タッチ」能力からして、「MAGA(米国を再び偉大に)」もウクライナやパレスチナの地政学リスクもいとも簡単に解決可能と豪語したままである。

 FRB(米連邦準備制度理事会)のクック理事に解任通告したのも、ジャクソンホール会議で、雇用情勢の悪化は認めながら、なお政策金利の引き下げは経済データ次第と煮え切らないパウエル議長にさらにプレッシャーを強める「トランプ・タッチ」ではないかと勘繰りたくなるほどでである。本人は、今年のノーベル平和賞の受賞を自薦するなど痛く執心しているようであり、今年10月の受賞者決定に向け、ノルウェー政府やノーベル財団に得意技のディールを発揮するかどうかも今秋のイベントとして要注目である。

■金関連株、安全資産需要の高まりで底堅さを発揮

 そしてトランプ大統領が、何といってもミダス王にそっくりなのは、その「トランプ・タッチ」が、すべての金融資産を金に乗り換えさせてしまうのではないかというところにある。米国市場の3連休前の前週末29日にニューヨーク商品取引所の金先物価格は、1トロイオンス=3516.1ドルと前日比41.8ドル高と4日続伸した。これは、トランプ大統領のクック理事解任が、中央銀行としてのFRB(米連邦準備制度理事会)の独立性を損ない、ドルや米国債の信認を低下させるとともに、FRBの利下げによるドル先安観から逆の動きが期待される金先物価格への買いが強まったためとマーケットコメントされている。同じ安全資産の米国債は売られ長期金利は上昇したのに、金先物価格は買い増勢となった。

 当コラムでは、再三にわたり安全資産株として金関連株を取り上げてきた。金先物価格も、マーケット全般が、リスクオフに傾くたびに動意付き、例えば今年8月8日には一時、1トロイオンス=3534.1ドルと4月22日以来3カ月ぶりに最高値を更新した。ただこの急伸はスイスから輸入される金地金に追加関税が掛けられる可能性があるとされたことが引き金で、関税が免除されることが判明して上げ幅が縮小し、金関連株の株価も、不完全燃焼に終わっている。しかし金先物価格は、その後も上値追いは限定的なものの下値は3300ドル台で踏み止まり底固く推移しており、9月16日、17日に開催予定のFRBのFOMC(公開市場委員会)での政策動向待ちとなっている。6会合ぶりの利下げ再開なら、もともと金利のつかない金融商品である金先物価格は、相対的に優位となり再度の最高値追いも想定されることになる。

■住友金鉱、通期上方修正で成長余地拡大、金価格上昇が収益押し上げ

 前週末29日の東京市場でも、金関連株の本命である産金株が、軒並み年初来高値を更新する人気となった。投資採算的に割高水準まで買い上げられていることは否定できず、三井金属<5706>(東証プライム)は、今3月期業績の上方修正やAIデータセンター向けの銅箔増産で1万円大々台の乗せPERは35倍と市場平均を上回ってきた。しかし例えば、菱刈鉱山やコテ金鉱山で産金活動を続けるリード株の住友金属鉱山<5713>(東証プライム)の業績動向を精査するとなお上値余地を示唆する部分もみえてくるのである。

 同社株も、今年8月7日に今3月期第1四半期(1Q)決算とともに今3月期通期業績の上方修正を発表した。このうち金価格は、前年同期の1トロイオンス=2337.5ドルが、3280.3ドルへ40%も上昇するとともに第2四半期、通期の金価格も期初予想から上方修正した。通期価格は、期初予想の2800ドルを3070.1ドルに引き上げたもので前期実績(2584.7ドル)の18.7%上昇としているが、足元の金先物価格からはなお保守的な想定価格であることは間違いなく、今後の金先物価格の動向から目が離せない。

 金関連株は、この産金株のほか3Rとしてリサイクル(R・資源回収)・リデュース(R・資源再生)・リユース(R・中古品再販)関連株があり、個別の株高材料が表面化した銘柄もある。主力の産金株と異なり小型株、割安株などバラエティーに富んでおり、産金株と並んで「トランプ・タッチ」関連の「ミダス王」相場の一角で存在感を発揮する展開も期待できそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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