【どう見るこの相場】高市内閣の積極財政で金利上昇、AI株変動でも内需株は広範に上昇

■「トリプル安」も怖くない!?逆張りのバリュー株ローテーションからは銀行株になお上値余地

 「神風」と歓迎したのに、飛んだ「大逆風」になってしまった。AI(人工知能)半導体世界トップのエヌビディアである。今年11月19日に発表した2025年7月~9月期業績が、市場予想を上回り株価が急反発し、つれて日経平均株価も1286円高と急反発し一時、5万円大々台を回復し、株安、円安、債券安のトリプル安にストップを掛けお助けマン銘柄への期待を高めた。ところが3連休前の21日は、エヌビディアの株価が前日に3%超も急落したことが響いて、日経平均株価も、関連株の値崩れで1198円安と急反落して4万9000円台を割れ、一転して悪役銘柄に成り下がってしまった。東京市場の3連休の最終日の前日24日の米国市場でも、2.04%高と急反発しており、再び「神風」として関連株買いを牽引するか要注目となる。

■21.3兆円の経済対策後も市場は警戒先行、長期金利17年半ぶり高水準

 もともとトリプル安は、高市内閣が、「責任ある積極財政」を掲げ、国債増発も辞さない財政拡張的な政策へ舵を切ったことがトリガー(引き金)となった。3連休前の21日に閣議決定された21.3兆円にも及ぶ「しょぼくない」経済対策も、マーケットでは関連銘柄探しよりもまず警戒感が先行した。国債は売られて長期金利は一時、17年半ぶりの高水準まで上昇した。AI関連株も、日米両市場でハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)の大規模なデーターセンター投資の回収可能性についての疑義が高まり、エヌビディアの高値波乱要因になっている。また高市首相の台湾有事の際の国会答弁で悪化した日中関係も、マーケットには先の読めない難問提供となっている。

■高市内閣30日、市場は慎重姿勢維持も株価は依然高水準を確保

 高市内閣は、11月21日に発足30日を迎えた。日経平均株価は、自民党総裁選挙で高市総裁が誕生した翌月曜日の10月6日水準よりはまだ680円上方に位置しているが、内閣発足時の10月21日水準からは690円下ぶれ、「高市トレード」期待で11月4日の取引時間中につけた上場来高値からは4000円強も下のポジションに位置する。まさか2022年に就任したばかりの英国のリズ・トラス首相が打ち出した「財源なき大規模減税」が、債券安・通貨安・株安のマーケットの洗礼を浴び、同首相が就任してわずか44日後に退陣を余儀なくされた「トラス・ショック」の悪夢の再現にまでは至らないだろが、市場の不安定化要因とする警戒感は尾を引きそうだ。

■東証プライム81.6%が上昇、実質プラスで広範な買い優勢

 ただ3連休前の21日のマーケットでは、救いがなかったわけではない。TOPIX(東証株価指数)が取引時間中に一時、プラス圏浮上したのを裏付けるように、東証プライム市場では値上がり銘柄数が、1317銘柄と81.6%を占めて値下がり銘柄数の273銘柄、16.9%を大きくオーバーした。また日経平均株価の1198円安も、指数寄与度の大きいアドバンテスト<6857>(東証プライム)、ソフトバンクグループ<9984>(東証プライム)、東京エレクトロン<8035>(東証プライム)のAI関連3銘柄合計で日経平均株価を1325円引き下げおり、これを差し引けば実質では前日比プラスとなったことになる。

■バリュー株へ資金流入鮮明、銀行株が上方修正で市場を牽引

 これはマーケットが、「AI株売り、バリュー株買い」へセクターローテーションを強めたことを示唆している。内需株・ディフェンシブ株シフトであり、むしろトリプル安を手掛かりとする逆張りである。これは3連休前の21日に年初来高値を更新した163銘柄からも窺える。なかでも銀行株は、163銘柄のうち13銘柄を占めており、債券安による長期金利の上昇、利ザヤ拡大期待による逆行高である。実際に今年11月の中間決算発表時に銀行株は上方修正ラッシュとなった。上場企業全体では、全体の3割が上方修正されたと分析されているが、これが銀行株では全体の5割を上回った。

 この逆張りセクターローテーションで浮上した銀行株が再注目されている。同株は年初来高値圏にありながらPER・PBRが市場平均を下回り、増配が相次ぐ点で投資妙味が高い。12月18~19日の日本銀行の金融政策決定会合で政策金利が利上げか据え置きかは不透明だが、長期金利の上昇は保有国債の含み損拡大回避につながるとの視点もあり、据え置きでもポジティブ評価が広がる可能性がある。年末の資金需要期を控え、銀行株への逆張り買いは有力な選択肢となる見通しだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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