【どう見るこの相場】師走相場に「掉尾の一振」勃発!逆日歩銘柄が裏街道の主役に浮上

■師走相場は最終レースさながら、勝ち負け分ける「掉尾の一振」に熱視線

 師走である。礼節一点張りの先生(師)さえも、走り回るといわれる一年納めの月だから、「終わりよければすべて良し」とばかりにマーケットも急に忙しくなる。勝ち組投資家は、年内さらに一回転、二回転もと大勝ちを狙い、負け組投資家も、年内のヤラレを年内のうちに一気に取り返えそうと手ぐすねを引く。「掉尾の一振」に期待して餅代、ミルク代を稼ぎ、越年資金も確保しようと周辺から株高、株高と煽り立てられると、誘い込まれる投資家心理を抑えるのは難しい。

 となると、どうしたって師走相場はギャンブルめく。それは競輪・競馬の最終レースに似ているかもしれない。1レース目から連敗が続けば、残り少なくなった軍資金を高オッズの大穴株に賭け、連勝続きの当たり屋は、低倍率だが間違いのない大本命車券・馬券にロットで勝負を掛ける。結果、どちらがオケラ街道を肩を落としてトボトボと家路につくのかは、競輪・競馬の神様にしか予見できない「ゼロ・サム」の厳しさである。

■AI株派vsバリュー株派が激突、日米金融政策の分岐で相場は二極化

 もちろん株式投資をギャンブルなどといったら怒られそうである。株式投資は、成長分野にリスクマネーを供給する国民経済的になくてはならない経済行為であり、高齢化社会の老後生活に安定をもたらす資産形成方策でもある。そのため銘柄スクリーニングは、フアンダメンタルズ(基礎的諸条件)のリサーチはもちろん、企業業績の分析、需給動向のチェックなどと万全を期す。それでも浮上する銘柄は、場味にもつられ勝ちで千差万別であり、強気、弱気さえも分かれる。

 現に足元でもAI(人工知能)株派とバリュー株派に二極化している。これは、日米の中央銀行の金融政策の方向性の違いが要因となっている。米国のFRB(連邦準備制度理事会)が、12月9日~10日に開催予定のFOMC(公開市場委員会)では、政策金利引き下げの確率が80%に高まっていると分析されている。金利低下ならAI株優位となる。一方、日本銀行が12月18日~19日に開催を予定している金融政策決定会合では政策金利引き上げの下馬評が高い。すでにこれを先取りして長期金利が歴史的水準にまで上昇し、利ザヤ拡大期待で銀行株などバリュー株買いが進んでいる。

■強気と弱気が激突、逆日歩発生で売り方が買い方に転じる局面も

 どちらに与するかで、「掉尾の一振」銘柄をゲットできるか、「掉尾の三振」銘柄につまずくかも決まるだけに、軽々には判断も難しい。ということならそれ以外の可能性も想定したい。相場格言の「人の行く裏に道あり花の山」でいうところの師走相場の裏街道銘柄である。その可能性が浮上するのは、師走相場特有の需給相場を展開する逆日歩のつく信用好需給株である。強気と弱気、売り方と買い方の攻防のなか、あるいか売り方が逆日歩に迫られて泣く泣く買い方に回る相場イメージも想定されるからである。

 もちろん相場格言には「逆日歩に買いなし」と「逆日歩に売りなし」とする相反する教えがある。前者は、売り方の買い戻しが終了すれば株価の急失速は間違いなしとするアンタッチャブルの教えであり、後者は売り方の買い戻しが続く限り株価は上昇するとする勝利の方程式の教えである。

■相場格言通りの値動きが示す師走相場の妙味

 実は、前月11月の最終週にこの2つの相場格言通りに株価が推移した銘柄がある。「逆日歩の買いなし」の格言通りに推移したのはAmazia<4424>(東証グロース)で、前週末28日に信用取引の臨時措置解除が響いてストップ安した。一方「逆日歩に売りなし」の格言通りとなったのはLink-Uグループ<4446>(東証プライム)で、28日に株価は続急伸し東証プライム市場の値上り率ランキングの第2位にランクインした。両銘柄とも逆日歩のつく信用好需給銘柄だが、リスクとリターンの差は紙一重、背中合わせであることを示唆している。

 裏街道銘柄のリスクの大きさを度外視することは難しいが、逆に師走相場で腕に覚えのある投資家にとっては格好のアタック対象としても浮上する。株不足で逆日歩のつく信用好需給株は、全市場を見回すと300銘柄を超えている。このなかの相当部分は、売り方の年内手仕舞いへ便乗チャンスがあるはずである。信用需給が大取組ランキングの上位銘柄、投資採算的にバリュー株素地のある銘柄、時節柄のシーズンストック人気が後押しとなる銘柄などが余力を発揮し、「掉尾の一振」銘柄の有力候補の一角に名乗りを上げそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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