クレスコ、26年3月期2桁増益予想、受注好調と不採算案件一巡で収益改善

 クレスコ<4674>(東証プライム)は独立系システムインテグレータである。ビジネス系ソフトウェア開発や組込型ソフトウェア開発のITサービスを主力に、顧客のDXを実現するデジタルソリューションも強化している。26年3月期は2桁増益予想としている。受注が好調に推移し、人件費の増加などを吸収する見込みだ。中間期が増収増益と順調であり、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は8月の戻り高値圏から反落して上値を切り下げる形となったが、高配当利回りなども支援材料であり、調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。

■ITサービスを主力としてデジタルソリューションも強化

 独立系のシステムインテグレータで、ビジネス系ソフトウェア開発や組込型ソフトウェア開発のITサービスを主力としている。さらに成長戦略として顧客のDXを実現するデジタルソリューションも強化している。

 セグメント区分は、ITサービス(エンタープライズ、金融、製造の各分野のコンサルティング・開発・保守の総合サービス)と、デジタルソリューション(自社製品Creage、インテリジェントフォルダなど、顧客のDXを実現する製品・サービスからなるソリューション群)としている。

 25年3月期のセグメント別業績はITサービス事業の売上高が540億82百万円で営業利益(全社費用等調整前)が76億77百万円(内訳はエンタープライズの売上高が220億50百万円で営業利益が24億98百万円、金融の売上高が171億65百万円で営業利益が23億92百万円、製造の売上高が148億66百万円で営業利益が27億86百万円)、デジタルソリューション事業の売上高が46億77百万円で営業利益が1億67百万円、営業利益調整額が▲18億60百万円だった。収益面では案件別の採算性が影響し、企業のIT投資関連のため年度末にあたる第4四半期の構成比が高くなる特性がある。

■M&A・子会社再編

 M&A・アライアンスおよびグループ子会社再編では、23年2月に日本ソフトウェアデザイン(JSD)を子会社化、23年3月にフォーラムエンジニアリング<7088>およびインドのSRM Globalとの3社共同でフォーラムエンジニアリングのインド現地法人コフナビインディア社(22年10月設立)に出資、23年9月に飲食業界のDX推進支援の拡大に向けてベトナムのレストラン&リテールテックスタートアップ企業CAPICHI社と資本業務提携、23年12月にセキュアイノベーションと資本業務提携、24年4月にジェット・テクノロジーズを子会社化、24年6月に子会社クレスコ ワイヤレスの全株式を譲渡した。

 24年7月には同社、連結子会社のJSDおよびメクゼスの3社の組織再編を実施した。メクゼスがJSDを吸収合併(合併後の商号はメクゼス)し、同社がJSDの一部事業(JSDが名古屋営業所において営む事業の全て)を譲り受けた。24年4月には子会社のクレスコ・ジェイキューブが高木システムを吸収合併、25年10月には子会社のクレスコ北陸がエイプスを子会社化、また子会社のクレスコ・ジェイキューブがアイエステクノポートを子会社化した。

■働き方改革や健康経営を推進

 24年4月に発表した新中期経営計画2026(24年度~26年度)では、成長に向けた方向性として「IT・技術を通じて顧客の競争優位性を創出し、ともに社会を前進させるデジタル価値創造企業を目指す」を掲げた。目標値としては30年までに売上高1000億円企業を目指し、27年3月期売上高700億円、営業利益80億円、営業利益率11.5%、ROE15%を掲げた。配当性向は25年3月期より40%に引き上げる。またサステナビリティ経営関連の目標としては女性管理職比率13%、エンゲージメントスコア70などを掲げた。

 重点戦略としては、共創型モデル確立、品質リーダーシップ発揮、人的資本経営推進、技術・デジタルソリューション拡張、事業連携促進、デジタル変革実現、グループ一体経営を掲げた。

 事業別戦略としては、ITサービス事業のエンタープライズ分野ではワンストップサービスの提供拡大・効率化、主力業界の深耕、エンタープライズ領域のさらなる拡大、新しい価値のサービスの顧客との共創、金融分野ではバックエンド領域の拡大、データ連携・処理技術(ミドルウェア)の強化、共創をテーマとした業務推進、さらなるデータ利活用、業務知識の強化・法規制対応、製造分野ではインフォテインメント系の統合・充実、サイバーセキュリティ対応・セーフティな製品設計、モビリティ領域への集中、モビリティサービスの実装、顧客企業のITケイパビリティ強化、デジタルソリューション事業ではクラウド・オートメーション領域の継続的なアップデートへの取り組み、プリセールス・カスタマーサクセスの強化、経営課題の解決に寄与するソリューションの拡充、クレスコブランドのデジタルソリューション開発・実装、ブランド力向上による業界内の地位確立を推進する。24年7月にはグループ内AI技術活用等に取り組む仮想組織「生成AIビジネス変革研究室」を設立、25年7月には新たな開発拠点「Teq-C」を開設した。

 25年5月には子会社アイオスが三菱UFJ信託銀行と、システム開発とそれに付帯関連するIT技術者の長期的・安定的な確保を目的として、10年間のパートナーシップ基本合意書を締結した。25年8月には子会社クレスコ・イー・ソリューションが、セゾンテクノロジーによるERPモダン化共同推進に技術パートナーとして参画した。

 健康経営・社会貢献関連では、25年3月にスポーツ庁が認定する「スポーツエールカンパニー2025」に認定(3年連続)された。また経済産業省と日本健康会議が選定する健康経営優良法人認定制度に基づく健康経営優良法人2025(ホワイト500)に認定された。健康経営優良法人は19年から6年連続、ホワイト500は2年連続となる。25年9月には大学生や専門学校生向けIT体験イベント「Sapporo IT CAMP 2025」にサポート企業として参画した。25年10月には厚生労働省が定める「女性の職業生活における活躍状況が優良な企業」として最高位である「えるぼし認定」の三ツ星を取得した。

■デジタルソリューションや自社オリジナル製品を拡大

 オリジナル製品・サービスではIoTのKEYAKI、AIのMinervae、クラウドのCreageを3大ブランドと定義し、ソフトウェア開発・システム開発の需要喚起を推進している。

 23年10月にはホテルの部屋割り業務最適化ツール「RooMagic」をリリース(JR九州ホテルズで導入)した。23年11月には歯のパノラマレントゲン画像から個々の歯を識別する情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラムの特許を取得した。24年8月にはホテルの部屋割り業務最適化ツール「RooMagic」の新バージョンをリリース(横浜ベイシェラトンホテル&タワーズで導入)した。24年8月には新サービス「業務整理ワークショップ」をリリースした。24年11月には自動車産業サイバーセキュリティガイドライン対応サービスの提供を開始した。25年3月には生成AIを活用した「社内DX推進支援サービス」の提供を開始した。

■26年3月期2桁増益・大幅増配予想

 26年3月期の連結業績予想は売上高が前期比8.9%増の640億円、営業利益が17.0%増の70億円、経常利益が13.5%増の71億40百万円、そして親会社株主帰属当期純利益が11.2%増の49億円としている。配当については25年5月9日付で配当方針の変更を発表し、26年3月期より配当性向の目処を従来の40%から50%へ引き上げるとともに、中間配当を実施することとした。これに伴い26年3月期の配当予想は前期比16円増配の58円(第2四半期末29円、期末29円)としている。連続大幅増配で予想配当性向は48.8%となる。

 中間期の連結業績は、売上高が前年同期比8.6%増の309億52百万円、営業利益が4.3%増の27億20百万円、経常利益が3.8%増の28億67百万円、親会社株主帰属中間純利益が9.3%増の20億54百万円だった。

 小幅ながら概ね計画(25年5月9日公表の期初計画値、売上高311億円、営業利益28億70百万円、経常利益28億90百万円、親会社株主帰属中間純利益19億50百万円)水準の増収増益と順調だった。ITサービス事業おいて一部案件の計画延期や不採算プロジェクト発生の影響があったものの、全体として受注が高水準に推移し、ITサービス事業における前期の不採算プロジェクトの影響一巡、デジタルソリューション事業におけるM&A効果なども寄与した。

 ITサービス事業は売上高が0.1%増の265億33百万円、営業利益(全社費用等調整前)が6.8%減の32億85百万円だった。

 内訳として、エンタープライズは売上高が6.1%増の112億79百万円、営業利益が17.0%増の12億79百万円だった。増収・大幅増益だった。売上面は情報・通信・広告分野におけるアプリケーション開発支援業務が増加し、利益面は前年同期の人材紹介・人材派遣分野で発生した不採算プロジェクトの影響が一巡したことも寄与した。

 金融は売上高が0.4%増の84億72百万円で、営業利益が26.3%減の8億49百万円だった。大幅減益だった。一部大型案件延期などで銀行・保険分野の受注が伸び悩んだことに加え、その他分野の子会社における不採算プロジェクト発生も影響した。なお延期した案件については下期立ち上げ見込みとしている。

 製造は売上高が8.7%減の67億81百万円で、営業利益が9.6%減の11億56百万円だった。減収減益だった。機械・エレクトロニクス分野におけるメーカーの製品開発プロジェクト中止・延期の影響を受けたほか、自動車・輸送機器分野の子会社において収益率の高い案件が減少したことも影響した。

 デジタルソリューション事業(ライセンス販売など)は売上高が2.2倍の44億19百万円、営業利益が6.1倍の5億01百万円だった。基幹システム導入を主力とする高木システムの新規連結した効果に加え、製品・ライセンスの販売および導入支援が大幅に増加した。

 全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が150億80百万円で営業利益が10億14百万円、第2四半期は売上高が158億72百万円で営業利益が17億06百万円だった。

 通期は期初計画を据え置いて増収増益予想としている。受注が好調に推移し、人件費増加などを吸収する見込みだ。中間期の進捗率は売上高48%、営業利益39%、経常利益40%、親会社株主帰属中間純利益42%とやや低水準の形だが、期初時点で下期偏重の計画である。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は調整一巡

 なお25年5月9日付で発表した自己株式取得(上限100万株または15億円、取得期間25年5月12日~25年11月28日)については、25年10月27日時点で累計取得株式総数が90万3600株、取得価額総額が約14億99百万円となって終了した。

 株価は8月の戻り高値圏から反落して上値を切り下げる形となったが、高配当利回りなども支援材料であり、調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。11月19日の終値は1484円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS120円95銭で算出)は約12倍、今期予想配当利回り(会社予想の58円で算出)は約3.9%、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS747円27銭で算出)は約2.0倍、そして時価総額は約623億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■金融・医療・公共分野に特化した高精度処理、低コストで安全運用可能  NTT<9432>(東証プラ…
  2. ■ジャイアンツ球場隣接の221邸、シニアの健康・交流を支える新拠点に  フージャースホールディング…
  3. ■IT・スタートアップ中心に若手CEO台頭、経営のスピード化が進展  帝国データバンクは10月14…
2025年11月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

ピックアップ記事

  1. ■気温急低下がシーズンストック相場発進を後押し  今週のコラムでは、バリュー株選好の別の買い切り口…
  2. ■「押し」のAI株より「引き」のバリュー株選好で厳冬関連株の先取り買いも一考余地  「押してだめな…
  3. ■鶏卵高騰・クマ被害・米政策転換、市場が注視する「3素材」  2025年11月、師走相場入りを前に…
  4. ■AI株からバリュー株へ資金移動、巨大テックの勢い一服  「AIの次はバリュー株」と合唱が起こって…
  5. ■日銀トレード再び、不動産株に眠る超割安銘柄  今週の投資コラムは、政策金利据え置きの投資セオリー…
  6. ■日銀据え置きでも冴えぬ不動産株、銀行株が主役に  株価の初期反応が何とも物足りない。10月30日…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る