【2025年経済総括:東京商工リサーチ】株高の陰で倒産増加が示す企業の試練

■市場最高値更新の一方、中小企業に重くのしかかる構造的逆風

【株価は史上最高水準、実体経済との乖離鮮明】

 東京商工リサーチは12月28日、2025年の経済環境と企業動向を総括する調査・分析結果を発表した。日経平均株価が史上初めて5万円を突破し、金・銀価格も最高値を更新するなど、市場指標は景気回復を印象づけた。一方で、円安や金利上昇、人手不足といった構造的課題が企業経営を圧迫し、金融市場と実体経済の間で明暗が交錯する一年となった。

■企業倒産2年連続1万件超へ、物価高と人手不足が直撃

【倒産件数は右肩上がり、負債総額は縮小】

 特に企業倒産は増勢をたどった。2025年の全国企業倒産は1~11月累計で9372件と前年同期を上回り、前年に続き2年連続で年間1万件を超えることが確実となった。負債総額は大型案件の減少により縮小したものの、倒産件数は四半期ごとに増減を繰り返しながら、基調としては右肩上がりで推移した。

【小・零細倒産が中心、価格転嫁の遅れが経営を圧迫】

 倒産の特徴として、負債1億円未満が7割超を占め、小・零細規模の倒産が目立った点が挙げられる。前年に比べ100億円超の大型倒産は半減し、中堅以下の倒産が件数を押し上げた。背景には人手不足や物価高、円安による輸入コスト上昇があり、価格転嫁の遅れや収益を伴わない賃上げが資金繰りを悪化させた企業が多かった。

【コロナ後の負債と金利上昇、複合リスクが経営を直撃】

 加えて、ゼロゼロ融資などコロナ関連借換保証の返済開始、金利上昇、米国の関税措置といった複合的リスクが経営基盤を揺さぶった。こうした環境下で、企業はコスト削減と収益改善を同時に迫られ、審査部門の強化や経営戦略の見直しに動く動きも広がった。2025年は異例の事態が相次ぎ、企業統治やリスク管理の重要性が改めて浮き彫りとなった。

【トランプ関税と新政権、企業が求めるのは物価安定】

 政治面では、米国で第2次トランプ政権が発足し、大幅な関税引き上げが世界経済に波紋を広げた。国内企業は自社への直接影響は限定的とみる一方、日本経済全体の景気後退を強く懸念している。国内では新政権発足を受け、企業が求める政策は物価の安定と内需拡大が中心だ。物価・為替・需要をいかに安定させ、企業が足元の経営を立て直せるかが、次の年への重要な課題となる。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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