【2025年経済総括:東京商工リサーチ】万博の熱狂と構造課題が映した日本経済

■期待薄から転換、万博・農業・企業不祥事に見る一年の試練

 2025年は、期待と不安が交錯するなかで、社会と経済の構造課題が改めて浮き彫りになった一年であった。大阪・関西万博の評価、農業倒産の増加、企業不祥事の余波はいずれも、短期的な成果と中長期的な課題の両面を示している。

■大阪・関西万博の成果と国費負担、真価はレガシー活用に

 東京商工リサーチは12月29日、2025年の社会・経済動向を振り返る分析を公表した。大阪・関西万博は事前の低調な見方を覆し、会期後半にかけて来場者数を伸ばした。SNS上の口コミや公式キャラクター「ミャクミャク」の話題性が集客を後押しし、総来場者は約2901万7900人に達した。運営収支は約230億〜280億円の黒字が見込まれるものの、約9.7兆円に上る関連インフラ整備費は含まれておらず、国費負担総額は約1647億円とされる。万博の真価は、終了後のレガシー活用に委ねられる。

 一方、万博会場建設を巡っては、下請業者への工事費未払い問題が表面化した。未払い総額は10億円超とされ、複数の民事訴訟が提起されている。盛況の裏側で、建設現場が抱える歪みが露呈した形であり、華やかな成果と同時に構造的課題の清算が問われている。

■大型粉飾の余波、与信と監査に突き付けられた課題

 産業面では、農業倒産が深刻さを増した。2025年1〜11月の倒産件数は92件と2年連続で過去最多を更新し、酪農など畜産分野が中心となった。「令和の米騒動」は価格高騰を再燃させ、流通業と飲食業で明暗を分けた。さらに、大型粉飾決算の発覚は、与信や監査の在り方に再考を迫り、企業を見る目の解像度向上が不可欠であることを示している。短期的な数字では測れない課題への対応力が、今後の重要な評価軸となりそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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