JAXA、ISSで低重力下の筋応答解明、有人月・火星探査へ基盤データ

■「きぼう」のMARSで4種類の重力環境を再現、筋量・筋機能の閾値を検証

 JAXAは3月16日、国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」日本実験棟で、可変人工重力研究システム「MARS」を用いた低重力ミッションを米航空宇宙局(NASA)と共同実施したと発表した。日米協力枠組み「JP-US OP3」のもと、微小重力から1Gまでの人工重力環境下でマウスを飼育できる世界唯一の装置を活用し、将来の有人探査に向けた基盤データの構築を進めた。

■4種類の重力環境でマウスを約1か月飼育

 国際研究チームは、JAXA、筑波大学、東北大学、ハーバード大学などで構成され、「きぼう」に搭載したMARSを使って、マウスを微小重力、0.33G、0.67G、1Gの4種類の重力環境で約1か月間飼育した。姿勢保持に重要な抗重力筋であるヒラメ筋を対象に、遺伝子発現、筋量、筋力、筋電図などを統合的に解析した結果、微小重力下で生じる筋量低下(萎縮)は重力レベルに応じてほぼ直線的に変化し、筋量と筋機能の維持には少なくとも0.67Gが必要であることが示された。

■筋量維持は0.33G、筋機能維持は0.67G

 さらに、筋量の維持には0.33Gでも一定の効果が確認された一方、遅筋から速筋への筋線維タイプ変換の抑制や筋機能の維持には0.67Gが必要であることが分かった。血液中成分の網羅的解析では、重力環境の違いを反映する11種類のバイオマーカー候補も同定した。血液検査という低侵襲な手法で、生体がどの程度の重力影響を受けているかを推定できる可能性を示した点も重要である。

■月・火星探査と地上医療への応用に期待

 今回の成果は、重力を定量的なパラメータとして生体応答を体系的に理解した世界初の成果と位置付けられる。月や火星を含む将来の長期有人探査における医学的リスク評価や対策立案に向けた科学的基盤となるほか、加齢や疾患に伴う筋力低下の理解と予防への応用も期待される。研究成果は、米科学振興協会(AAAS)のオープンアクセス誌『Science Advances』に3月14日午前3時(日本時間)付で掲載された。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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