【編集長の視点】新日鐵住金は反落も今期業績の再下方修正を織り込みボトムアウト期待は根強い

編集長の視点

 新日鐵住金<5401>(東1)は、52.5円安の2205.5円と4営業日ぶりに反落して始まっている。今年2月12日につけた昨年来安値1773.5円から500円幅、3割高の底上げをして、目先の利益を確定する売り物が先行している。ただ同社株は、今年2月に今3月期第3四半期(3Q)決算の開示に合わせて今期通期業績の再下方修正を発表し、世界同時株安の波及もあって株価は昨年来安値へ落ち込んだものの、この今期下期で業績は底打ち、悪材料織り込み済みとの市場コンセンサスも形成されており、下値にはなお下げ過ぎ訂正買いも続いており、寄り付きの安値からはやや下げ幅を縮めている。今年3月5日から開催されている中国の全国人民代表大会で、鉄鋼業の過剰設備を解消する構造改革を含む5カ年計画が明らかにされ、前日14日には、同社の持分法適用会社のブラジルのウジミナス社の約300億円の増資引き受けが決定し経営再建が進むことも前向きに評価されている。

■業績は今期下期を底に来期経常利益は3000億円とV字回復観測も

 同社の今期業績は、昨年10月、今年2月と期初予想が2回下方修正され、売り上げ4兆9700万円(前期比11.4%減)、経常利益2000億円(同55.7%減)、純利益1400億円(同34.7%減)と見込まれている。海外鉄鋼市場で、中国鉄鋼メーカーによる過剰生産、輸出拡大で厳しい競争環境が続き、原油価格の急落でエネルギー向け鋼材需要も低迷していることなどが要因となっている。ただこれに対応して、同社自身が、今期期末に君津製鉄所の第3高炉を休止し、子会社の日新製鋼<5413>(東1)の子会社化の検討を開始するなどの構造改革を実施し、子会社の大阪製鐵<5449>(東1)が、東京鋼鐵<5448>(JQS)を株式公開買い付けするなどのグループ再編も進めている。またブラジルのウジミナス社の増資引き受けでは、構造改革の進展で長期的に成長が見込まれる南米市場でのグローバル拠点の競争力強化につながる見込みで、業績底打ち期待につながっている。

 これを受けて国内証券各社も、目標株価については、このところの株価下落に対応して引き下げたが、投資判断そのものは、最上位の「強気」を継続し、業績そのものも今期下期を底にボトムアップするとみている。一部証券会社では、来期の2017年3月期経常利益を3000億円、再来期の2018年3月期経常利益を3300億円とV字回復観測している。

■上値抵抗線の25日線を上抜きPER14倍台、配当利回り2%の下げ過ぎ訂正が再加速も

 株価は、今年2月に今期業績の再下方修正と日新製鋼子会社化検討、自己株式取得、年間配当45円予想などの好悪材料を発表し綱引きして2360円の高値をつけたが、日銀のマイナス金利導入を嫌った全般相場急落とともに昨年来安値1773.5円まで突っ込んだ。同安値から証券各社の強気投資判断継続で、それまで上値抵抗線だった25日移動平均線を上抜き、2月急落幅をほぼクリアーし売り買い交錯となっているが、PERは14倍台、配当利回りは2.04%となお下げ過ぎを示唆している。2月高値抜けからまず年初来高値2479円を目指す一段高が有力となる。(本紙編集長・浅妻昭治)

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