【株式評論家の視点】ナノキャリアは中外製薬とのsiRNA医薬品の共同研究など注目、800円どころで下値を確認

株式評論家の視点

 ナノキャリア<4571>(東マ)

は、2008年3月に東京証券取引所マザーズに上場。東京大学の片岡一則教授、東京女子医科大学の岡野光夫教授らが研究してきたミセル化ナノ粒子技術による医薬品の開発を目的に1996年に設立。2000年に千葉県柏市に研究所を設置し本格始動。抗がん剤の開発を主力に、技術革新に挑んでいる。14年に本社機能と研究所機能を統合し、研究開発体制の強化を図り、現在臨床試験を国内外で実施している。

 同社は、中外製薬株式会社とsiRNA医薬品に関する共同研究契約を15年2月24日に締結していたが、本共同研究契約について延長することを決定したと3月3日に発表。これまで両社で、中外製薬が選択した抗体およびsiRNAと、ナノキャリアの基盤技術であるActive型NanoFectR技術を融合し、より画期的なファースト・イン・クラスのがん治療薬の開発を目指した共同研究を推し進めてきたが、より良い製品を創造し、新しい医薬品を開発するためにも共同研究を18年2月24日まで1年間延長し、両社にて引き続き研究を継続することに合意。本共同研究を通じて、全身投与による核酸医薬品のターゲット性能を高め、様々ながんへの応用を達成するため、中外製薬の豊富な経験を取り込み、革新的な新規siRNA医薬品の開発につなげるとしており、今後の展開は注目される。

 2017年3月期第3四半期業績実績は、売上高が1億4300万円(前年同期期比63.2%増)、営業損益が19億3200万円の赤字(同14億3000万円の赤字)、経常損益が17億5300万円の赤字(同13億7100万円の赤字)、最終損益が17億5600万円の赤字(同13億7300万円の赤字)に着地。

 17年3月期業績予想は、売上高が1億8200万円(前期比25.2%減)、営業損益が34億5200万円の赤字(同20億8200万円の赤字)、経常損益が34億1000万円の赤字(同23億8100万円の赤字)、最終損益が34億7500万円の赤字(同25億3700万円の赤字)を見込んでいる。

 株価は、昨年4月19日につけた昨年来の高値2095円から同11月9日安値799円まで調整を挟んで同12月13日に1020円と上昇。3月9日安値800円と売り直されて下値を確認している。中外製薬とのsiRNA医薬品の共同研究のほか、新規開発パイプラインでは、同社独自の先進基盤技術である抗体/薬物結合型ミセル「ADCM (Antibody/Drug-Conjugated Micelle)」を用いた次世代型医薬品パイプラインの開発を推進していることが注目される。がん細胞へのターゲティング性能を高め、毒性を軽減することで治療域を拡大する新規医薬品の開発を進めているほか、国内の大手企業数社との共同研究等により、開発パイプラインを精力的に拡充しており、今後の動向に市場の関心が向かうと予想する。18年3月期研究開発費はピークと観測されており、800円どころでの下値固めから徐々に上値を試す展開が期待される。中長期的な視点で押し目買い妙味が膨らみそうだ。。(株式評論家・信濃川)

 

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