【編集長の視点】ラクオリア創薬は年初来高値を更新、1Q決算発表を先取りしM&A効果やパイプライン開発進展を再評価

 ラクオリア創薬<4579>(JQG)は、前週末21日に41円高の500円と急反発して引け、今年2月6日につけた年初来高値478円を一気に更新した。同社株は、5月12日に今12月期1月~3月期(第1四半期、1Q)決算の発表を予定しているが、今年4月14日に発表した連結決算開始に伴う今12月期の事業収益アップを見直し、M&A効果やヒト領域と動物薬のパイプライン(新薬候補)の開発などが順調に推移していることを再評価してバイオ株買いが再燃した。前期決算でも、1Q業績が黒字転換して着地したことに反応して500円台まで上値を伸ばしており、再現期待も高めている。

■テムリックの連結子会社化でがん疾患領域/希少疾患領域にも事業領域を拡大

 同社は、今年2月に簡易株式交換によりテムリック(東京都新宿区)を連結子会社しており、これに伴い初めて連結ベースの今12月期業績を開示した。事業収益を11億7600万円、営業利益を7億9100万円の赤字、経常利益を7億9900万円の赤字、純利益を8億円の赤字と見込んだ。利益は、今年4月13日に円高による為替差損などで下方修正された単独決算よりやや悪化するものの、事業収益は、単独業績の11億円(前期比56%増)よりもアップする。ラクオリア創薬は、主に痛みと消化器疾患を2大指向領域とする創薬ベンチャーだが、テムリックは、がん領域に特化して創薬事業を展開しており、がん疾患領域/希少疾患領域への積極的な進出を狙っていたラクオリア創薬の事業領域の拡大として寄与することを示した。

 ラクオリア創薬のパイプラインも、ヒト領域と動物薬領域合計で主に6プロジェクトが順調に進展中である、このうち犬の変形性関節症を対象疾患する「EPA拮抗薬」は、今年1月に米国で販売が開始され年間1000万頭の犬が治療を受けている。ヒト領域でも、Meiji Seikaファルマに導出した統合失調症を対象疾患とする化合物「ジプラシドン」は、国内フェーズ3を実施中で2019年春に承認申請を予定、2020年に販売開始見込みで、患者数は国内で71万3000人、市場規模は約1600億円と想定されている。また韓国でフェーズ3を実施中で2018年に初回承認申請を予定し2019年に販売開始を見込み、中国でも臨床試験を準備中の胃食道逆流症を対象疾患とする化合物「RQ-00000004」の市場規模は、韓国で約500億円、中国で約2600億円と見積もられている。

 足元の業績そのものは、研究開発費や支払ロイヤルティ増加などで赤字継続となるが、ただ中期経営計画(単独決算)では、国内バイオベンチャーでトップクラスのインフラを最大限に活かして相次いで開発化合物を創出、2019年12月期には売り上げ14億円、営業利益1300万円、経常利益1200万円、純利益600万円の黒字計上を目指している。なお、前期1Q業績は、動物薬開発進展によるマイルストーン収入5億9200万円を計上したことなどで、四半期として黒字転換した。

■25日線から逆行高特性を際立たせて年初来高値を上抜き昨年来高値へキャッチアップ

 株価は、昨年4月の韓国での統合失調症薬の物質特許査定などでストップ高して昨年来高値654円まで買われ、その後300円台下位でダブル底を形成し、今年2月には前期業績の一転した上方修正や動物薬の一時金受領などが続いて478円高値までリバウンドした。同戻り高値後は、ほぼ往って来いの397円安値まで調整したが、積極的な中期経営計画などをテコに底上げ、上昇転換した25日移動平均線にサポートされて下値を切り上げ、前週末に2月高値を上抜き一気に年初来高値を更新した。地政学リスクなどを背景になお波乱懸念のある全般相場下、バイオ株の逆行高特性を発揮して、次の上値ターゲットとして昨年4月につけた昨年来高値654円へキャッチアップしよう。(本紙編集長・浅妻昭治)

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