【編集長の視点】オール・リスクオフ相場下でマザーズ銘柄に局地戦様相、バリュー株のニッチ投資で追随も一考余地=浅妻昭治

 いきなり大発会から日経平均株価は5日続落、1335円安となった。とっくに正月のお屠蘇気分などはケシ飛んで、リスクオフ、売り優勢の本気モードである。年明けとともに中東の地政学リスク、中国ショック、北朝鮮の核実験、さらに円高、原油安とこれだけワールドワイドに悪材料が続けば無理もないところだ。カレンダー通りに「盆と正月が一緒にきた」ようなもので、楽しさ倍増の「盆と正月」ではなく、この例えの本来の意味である「猫の手も借りたい」ほどの半端でない忙しさを余儀なくされた。

 3連休明け後の先行きも、楽観できそうもない。年明け以降の悪材料の落としどころがみえてきて、初めて株価に織り込み済みとなるが、この大前提はなお展望難である。次に、今週から始まる米主要企業の10~12月期決算発表を手掛かり材料に、米国ニューヨーク・ダウ平均株価が持ち直すのか、さらに1月末から本格化する日本企業の今3月期第3四半期決算発表で、業績の上方修正などが続くことがポイントとなるが、これも期待通りに「ストップ世界同時株安」となってくれるかどうかはなはだおぼつかない。例えば昨年12月調査の日銀短観では、日本の大企業製造業の今2015年度下期の想定為替レートは、1ドル=118円となっており、3連休中には実際の為替水準が、1ドル=116円台まで円高が進んだことから、業績上方修正の伸びしろが大きく狭まっていることからでも明らかだからだ。

 それではすべてがネガティブかといえば、そうでもない部分もあるのがマーケットのややこしさ、難しさであるとともに面白さでもある。3連休前もストップ高し昨年来高値を更新する銘柄が、極くわずかだが存在していた。いわゆる小型材料株であり、自動運転関連株、フィンテック関連株、電力小売り完全自由化関連株などのテーマ株で、このテーマ株が、LINEの早期上場(IPO)観測などからさらに拡大する兆しもある。もちろん逃げ足の速い短期資金主導のテーマ株物色といわれれば、否定しようもないが、マーケットにはこれに同調して局地戦に打って出る買い気、リスクオンのムードも存在していることも窺わせる。

 こうしたマーケットの動向は、ディテール(細部)に目をこらすとほかにも明らかとなる。その代表は、各市場の株価指数の続落日数、下落率の違いである。日経平均株価、TOPIX(東証株価指数)、東証2部総合指数は、揃って年初から5日続落しているのに、日経JASDAQ平均は、年明け4日は反落、5日は反発したあと3日続落となり、東証マザーズ指数は4日、5日と続伸したあと3日続落となった。年初来下落率も、日経平均の7.01%、TOPIXの6.46%、東証2部指数の2.95%に対して、日経JQSDAQ平均が2.00%、マザーズ指数が、1.46%と相対的に軽微にとどまった。

 なかでもマザーズ指数は、連休前8日に日経平均に比べて特異的な動きをした。マザーズ指数も日経平均も、寄り付き直後にその日の安値をつけ、取引時間中は前日比プラスまで戻したあと、再度、下値を探り続落したが、引け値のその日の安値に対する上昇率は、日経平均が1.07%、マザーズ指数が2.10%となった。両指数とも続落し「五十歩百歩」であることは否定できないものの、マザーズ市場には確かに買い気、リスクオン・ムードがあることを示唆しているとも受け取れることもない。これは、マザーズ市場には内需業態株が多く、さらに買い主体も、外国人投資家などの機関投資家よりも個人投資家のウエートが高い新興市場特有の構造要因が働いている結果とも推察される。もしこの推論が正しいとすれば、今後も先行きが不透明化する相場環境下、マザーズ市場のわずかな違い、細部をテコにしたニッチ(隙間)投資から逆行高する銘柄が浮上する可能性はあり、局地戦銘柄として注目は怠れないことになる。

 では具体的にどのようなマザーズ株をマークしたらよいのか?ポイントとしてまず上げたいのが、低PER・低PBR・配当利回りランキングで選別し、このいずれでも上位にランクされるバリュー株である。ベンチャー投資の代表市場のマザーズ市場でバリュー株シフトを勧めるのは奇異に映るかもしれないが、ここで選別されるバリュー株は、今後、市場で強まるテーマ株買いの一角に浮上する素地を内包しているからで、その多くが値ごろ妙味十分であるだけに、株価高変化の期待も高めよう。(本紙編集長・浅妻昭治)

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