【どう見るこの相場】パンデミック懸念乗り切りのサードチョイスに準安全資産株の高配当銘柄が浮上余地

どう見るこの相場

 ベテラン投資家の脳細胞は、かなり破壊され思考停止状態となっているのではないか?もちろんこれは新型肺炎ショックで、追証売りに迫られる投資家が少なくないことが第一だろう。と同時に、これまで長く信じられていた兜町の通例が、まるで通用しないことも少なからず影響しているのに違いない。例えば今回の調整パターンである。兜町では相場の調整には、女性的な下げと男性的な下げとの2通りがあると区別されてきた。女性的な下げとは、値幅より日柄をダラダラと掛けて下げてやっと底入れするパターンである。一方、男性的な下げとは、セリングクライマックスを伴って急落、一気に底打ちするパターンである。ところが今回の新型肺炎ショックは、今年年初からもう2カ月も下値を探り、2月の最終週には日経平均株価が週間で2243円も急落しているのに、日柄的にも値幅的にボトムアウト感はなく泥沼化が懸念され、これまでのどの調整パターンとも異なっている。

 また、相場格言の「知ったら仕舞い」も、まったく役立たずであった。株安のカタリスト(変動誘発材料)が、新型肺炎の発生・感染拡大と判明し知った段階で悪材料は出尽くし、織り込み済みとなって底打ち反転するはずなのに、逆に知れば知るほど株価は下げに拍車を掛けた。これは、中国が、感染発生当初に報道規制を強め、WHO(世界保健機関)は、なぜか緊急事態の宣言に躊躇し、日本では、専門家がヒトからヒトへの感染はないと見立て違いを犯し、訪日予定の習近平中国国家主席に忖度したとも一部推測されているのを裏付けるように、春節入りに際して中国人旅行客の入国を制限しなかった脇の甘さを露呈し、主要3閣僚が対策本部会合を欠席し、下船させた大型クルーズ船の日本人乗客から陽性患者が、6名も発生する失態を演じ、ついには全国一斉の学校閉鎖を要請する場当たり的な政治決断をするなどなど、危機管理能力への疑念は強まりこそすれ弱まることはなく、混乱が混乱を呼んだからだろう。

 危機意識は、一般消費者と兜町の方がよっぽど鋭敏だった。一般消費者は、ドラッグストアの陳列棚が空っぽになるほど使い捨てマスクを備蓄買いして自己防衛に走り、兜町は、新型肺炎関連株を買い進めてパンデミック(世界的大流行)懸念を先取りした。その関連株買いは、当初のマスク株、防護服株の防疫関連株買いが、テレワーク関連株、自宅学習関連株、ドラッグストア株にまで買いの手を広げるなど横展開し、足元ではキャッシュポジションを高めるべく損失覚悟の換金売りを出してショック安として、政府当局者に対して強い警告を発信した。

 ショック安がいつ収束するのか、先行きは不透明である。新型コロナウイルスを封じ込みパンデミックの感染者増加がピークアウトするのが大前提だ。これを株価面で先取りする時期は、ドラッグストアの店頭に増産要請効果でマスクが山積みされるころなのか、兜町恒例の彼岸底の春分の日なのか、東京オリンピックの中止・延期の政治決断の期限とされる5月末なのか、それとも新型コロナウイルスのワクチンや治療薬が開発され、治療法が確立されるまで待たなくてはならないのか、さまざまな相場シナリオが想定される。

 そのなかでファーストチョイスの投資スタンスは、リスクオフの換金売りでキャッシュポジションを高めることだった。セカンドチョイスは、安全資産買いの「質への逃避」で、現に米国の10年物国債利回りは、債券買いで過去最低の利回りまで低下し、金先物価格も、足元では利益確定売りで続落したが一時は7年ぶりの高値まで買い進まれた。この国債利回りの急低下は、今年3月17日から開催予定のFRB(米連邦準備制度理事会)のFOMC(公開市場委員会)で政策金利の引き下げに踏み込むとみられたことによる。とすればサードチョイスが浮上する。金利低下でよりバリュー(投資価値)が増す高配当銘柄へのアプローチである。折から3月期期末月入りであり、株価が下げれば逆相関で配当利回りが上昇することになり、準確定利付き投資物件の安全資産として配当権利取り余地を示唆してくれる。高配当利回りランキング上位銘柄、連続増配銘柄などがセレクト対象となる。

【関連記事情報】
【特集】高配当利回りランキングの上位銘柄には業績上方修正・増配株もランクイン

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■東京大学発スタートアップが開発、19自由度のヒューマノイドロボット  東京大学発スタートアップH…
  2. ■売却面積は約1.6倍に、総額1,785億円超の譲渡価額  東京商工リサーチは6月30日、2024…
  3. ■従来の検索では見つけられなかった本との出会いを創出  富士通<6702>(東証プライム)傘下の富…
2025年8月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

ピックアップ記事

  1. ■株主還元強化が市場の安心材料に  東京エレクトロン<8035>は8月1日、2025年3月期の業績…
  2. ■市場の霧が晴れ始めた、個別銘柄の好調が投資家を惹きつける  前週31日の植田和男日銀総裁の記者会…
  3. ■利上げか、現状維持か?日銀総裁の決断で明暗分かれる8月相場  日銀の金融政策を巡る不確実性が続く…
  4. ■選挙惨敗の石破首相に退陣要求、政局混迷の行方  まるで狂言の『乳切木』(ちぎりき)を観るようであ…
  5. ■九州地盤銘柄に割安感、福証単独上場企業にも注目集まる  東京エレクトロンやアドバンテストなどの半…
  6. ■参院選で与党過半数割れ、石破政権の行方不透明に  7月20日投開票の参議院議員選挙は、大手メディ…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る