建設技術研究所、道路橋のレーザー打音検査によるリモート検査の実証実験、道路橋のリモート検査に適用可能

■人の手に頼らないロボット点検技術のイノベーション

 建設技術研究所<9621>(東証プライム)は5月30日、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(QST)、国立大学法人東海国立大学機構(名古屋大学)、計測検査、フォトンラボとの共同研究により、これまでの人力打音検査を代替え・定量化する「レーザー打音検査装置」を国内で初めて道路橋の診断支援技術として活用するための実証を行ったと発表。その結果、30m離れた橋梁床版の損傷を斜め下方の地上から検知することができ、レーザー打音検査装置は、道路橋のリモート検査に適用可能であることを示すことができた。

■概要

 同社は、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(本部:千葉県千葉市「QST」)、国立大学法人東海国立大学機構(機構長:松尾清一、「名古屋大学」)、計測検査(本社:福岡県北九州市、「計測検査」)、フォトンラボ(本社:東京都中央区、「フォトンラボ」)との共同研究により、道路トンネルのロボット点検技術として社会実装を進めてきた「レーザー打音検査装置」を道路橋の診断支援技術として活用するための実証を行った。

■社会実装の背景

 橋梁の打音検査は、危険な高所での点検作業における点検技術者の安全性の確保が課題となっている。また、はく落しそうな箇所を確実にたたき落とすことに時間が掛かり、限られた点検時間の中では点検記録の精度も課題となっている。さらに、点検技術者による検査結果のばらつきや、点検技術者の不足も懸念されている、これらを補完・支援するための遠隔・非接触計測技術として、打音可能な飛行ロボットなど、点検支援技術の研究が進められているが、風や雨の気象条件等に使用が制約されている。このため、建設技術研究所とQST、名古屋大学、計測検査、フォトンラボは、レーザー打音検査装置を用いた道路橋の診断支援技術を開発した。

■長距離レーザー打音検査装置を用いた道路橋での実証実験結果

 レーザー打音検査装置は、ハンマーの役割をする打音レーザーと振動を計測する計測レーザーにより、打音検査を遠隔・デジタル化する装置である。道路トンネルの覆工コンクリートに対する社会実装により蓄積した経験や知見を活かし、地上に配置したレーザー打音検査装置から上方の橋梁床版の損傷が検知可能であるか実証した。これまでのレーザー打音検査装置の検査可能な範囲は、トンネル点検時の使用を想定した10m程度だった。このため、10mより高い高架橋や広幅員の橋梁点検への適用を想定し、20m以上の長距離かつ斜め方向からの検査が可能な可搬型の「長距離レーザー打音検査装置」を新しく開発した。実証実験により、開発した「長距離レーザー打音検査装置」の道路橋における欠陥検知の可能性を確認した結果、照射距離を30mまで広げても、点検技術者による従来の点検と同等な欠陥検知が可能であることを確認した。これにより、地上に配置したレーザー打音検査装置は、道路橋のリモート検査に適用可能であることを示すことができた。

■技術のメリット

 「長距離レーザー打音検査装置」を用いた点検は、地上面からの距離が遠い(高い)ほど、一度のレーザー打音検査装置の計測範囲が広がるため、計測作業の効率化が期待でき、かつ、点検技術者の本質的な安全を確保することができる。さらに、点検結果は、振動値として継続的にデータ化することで、浮き・はく離の劣化進行評価の効率化、高度化を図ることができ、点検の優先順位や補修時期などを適切に判断できるようになる。

■今後の展望

 今回の「長距離レーザー打音検査装置」は、道路橋に対して実証を行ったものであり、照射距離30mまでの橋梁点検に適用できることを確認した。今後も、照射距離の違い(橋の大きさ、規模)での適用を確認し、診断能力の向上と計測作業の効率化を図り、インフラ施設の点検・維持管理活動の効率化、高度化に向けた開発を進めることで、利用者の安全性の向上、第三者被害の防止に貢献していくとしている。 

※同研究は、国土交通省道路局が設置する新道路技術会議の技術研究開発制度による、国土交通省中部地方整備局の委託研究「レーザー打音検査装置を用いた橋梁・トンネル等の道路構造物のうき・剥離の定量的データ化による診断技術の技術研究開発」で行われたものである。
(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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