Jトラスト、25年12月期大幅増益予想で1Q順調、韓国・東南アジアの金融事業が好調、割安感で投資妙味際立つ
- 2025/6/9 07:35
- アナリスト銘柄分析

Jトラスト<8508>(東証スタンダード)は日本、韓国・モンゴル、およびインドネシアを中心とする東南アジアにおいて金融事業を展開し、成長に向けて継続的にポートフォリオ再編や事業基盤拡大を推進している。25年12月期は大幅営業増益で増配予想としている。第1四半期は大幅増益(営業利益は黒字転換)と順調だった。日本金融事業が堅調に推移したほか、韓国及びモンゴル金融事業の業績改善、投資事業の回収金計上等が寄与した。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は4月の安値圏から反発して戻り歩調だ。低PER、高配当利回り、1倍割れの低PBRといった指標面の割安感も評価材料であり、出直りを期待したい。
■日本、韓国・モンゴル、東南アジアで金融事業を展開
日本、韓国・モンゴル、及びインドネシアを中心とする東南アジアにおいて金融事業(銀行、信用保証、債権回収、その他の金融)を展開し、さらなる成長に向けて継続的にポートフォリオ再編や事業基盤拡大戦略を推進している。
24年12月期のセグメント別利益(全社費用等調整前営業利益)は日本金融事業が70億40百万円、韓国及びモンゴル金融事業が9億64百万円、東南アジア金融事業が15億09百万円、不動産事業が3億61百万円、投資事業が15億95百万円の損失、その他が2億11百万円の損失だった。不動産事業では前期計上した負ののれん発生益が剥落した。収益はM&A・事業再編・不良債権処理などで変動する可能性がある。
■成長加速に向けて事業基盤拡大
日本金融事業は、主に日本保証が信用保証/消費者・事業者向け金融事業、パルティール債権回収が債権回収業、Jトラストグローバル証券(以下:JTG証券)が証券業、Nexus Cardがクレジットカード事業を展開している。
韓国及びモンゴル金融事業は、主に韓国・JT貯蓄銀行と韓国・JT親愛貯蓄銀行が銀行業、韓国・TA Assetが債権回収業を展開している。なおJトラストアジアが保有するモンゴルJ Trust Credit NBFI(以下:JTM)の全株式を25年4月に譲渡完了し、JTMを連結対象から除外した。
東南アジア金融事業は、インドネシアでJトラスト銀行インドネシア(以下:BJI)が銀行業、Jトラストインベストメンツインドネシア(以下:JTII)が債権回収業、TA Assetインドネシア(以下:TAID)が債権回収業、カンボジアでJトラストロイヤル銀行(以下:JTRB)が銀行業を展開している。なお23年6月に、Jトラストオリンピンドマルチファイナンス(以下:JTO)の株式を譲渡(譲渡実行日はインドネシア金融庁の承認後)する株式売買契約を締結した。これによりJTOは連結除外となる。
24年9月にはBJIが、24年のマーケターズ・エディターズ・チョイス・アワードで「グリーン・セービング・プログラム・オブ・ザ・イヤー」を受賞した。また25年1月にはBJIがINDONESIA WOMEN‘S OPEN 2025にメインスポンサーとして協賛した。25年4月にはBJIが愛媛銀行と業務提携した。愛媛銀行の取引先の海外進出やBJIの取引先とのビジネスマッチングなどを支援する。
不動産事業は、主に同社、Jグランド、ライブレント、グローベルス<193A>が展開している。23年2月に同社がミライノベートを吸収合併、23年5月にJグランドがライブレントを子会社化、25年3月にJグランドが子会社グランド保証を設立して家賃保証事業に参入、25年4月にグランド保証がクレディセゾンと業務提携して家賃保証サービスの提供を開始した。なおグローベルスは25年5月29日付で、TOKYO PRO Marketに上場している普通株式に関して、6月26日開催予定の定時株主総会の特別決議を経た上で上場廃止を申請すると発表した。上場廃止は7月25日予定である。
投資事業はJトラストアジアが展開している。なおJトラストアジアは販売金融事業のタイGLH社に出資したが、17年10月にタイGLH社CEO此下益司氏がタイSECから偽計および不正行為で刑事告発された。このため現在はタイGLH社、此下益司氏、およびGLH社の関連取締役に対して、刑事告発手続き、会社更生法申し立て・補償請求・賠償請求などの訴訟を提起している。
GLH社に対する訴訟の解決・債権回収については、勝訴判決に基づいて履行を受けるなど解消に向けた動きが進展している。
タイにおいては、21年3月の控訴審判決でJトラストアジアによる権利行使は適法であるとしてGLH社の請求を全面的に棄却したが、この控訴審判決を不服とするGLH社の上告受理の申し立てが最高裁判所において22年8月31日付で受理の決定がなされた。ただし最高裁判所における審理においても、引き続き主張が認められるよう尽力するとしている。GLH社に対する会社更生の申し立てについては、最高裁判所において21年12月に申し立てが却下されたが、民事訴訟については第1審の審理が継続している。GLH社が同社に対して提起していた損害賠償を求める訴訟については、24年2月にタイの民事裁判所による判決の言い渡しがあり、GLH社の請求が全て却下された。
英領バージン諸島においては21年5月に、控訴裁判所が昭和ホールディングスによる上訴を棄却した。そして22年5月には、民事訴訟における支払命令(約95百万米ドル)判決が確定した。キプロスにおいては21年8月に、此下益司氏ならびにキプロス所在4社に対して約130百万米ドルの賠償を求める訴訟を提起し、裁判所が被告らに対する全世界的資産凍結命令を発令した。
日本では21年6月に、A.P.F.GROUP、昭和ホールディングス、ウェッジホールディングスに対して、約24百万米ドルの支払いを求める損害賠償請求訴訟を東京地裁に提起した。日本における損害賠償請求訴訟については、22年3月の東京地方裁判所による第一審判決で損害賠償請求が認められなかったが、判決内容を十分に精査し、弁護士とも協議のうえ今後の対応を検討するとしている。
シンガポールにおいては、23年4月にシンガポール高等法院が被告らに対して連帯で約1億24百万米ドルおよび21年8月1日からの利息の支払い等を命じる判決(第1審判決)を言い渡し、控訴審においてシンガポー高等法院上訴部が23年11月22日付で第1審判決を維持する判決を言い渡した。さらに24年1月11日付で控訴裁判所が控訴を棄却し、23年4月の第1審判決が確定した。24年3月にはシンガポール高等法院がJトラストアジアの申し立てに基づき、GLH社の清算手続開始を決定し、GLH社に対して清算人を選任した。24年5月には、24年1月11日付の確定判決により約1億24百万米ドル(判決言い渡し当時の為替レート1米ドル=146円換算で約181億円)および21年8月以降の利息に係る判決債権を有しているが、同判決に基づき、キプロスにおいて此下益司氏実質的に保有している銀行預金口座等に対する強制執行を実施し、合計約8億47百万円(1ユーロ=167円、1米ドル=155円で換算)を差し押さえて回収した。なお24年3月の清算人選任に対してGLHの親会社であるGLが控訴を行っていたが、24年8月に控訴裁判所からGLによる控訴が撤回されたとの連絡を受けた。これにより、GLHの清算手続開始決定が確定した。25年1月には21年8月1日からの利息の支払い等を命じる判決に基づき、キプロスにおいて此下氏が実質的に保有している銀行預金口座および此下氏が実質的に保有している企業の銀行預金口座に対する強制執行を実施し、約6億07百万円を差し押さえて回収した。
その他事業は主にJ Sync(旧Robotシステム)がグループのシステム開発・運用・管理業務を展開している。J Syncは22年3月に不動産クラウドファンディングシステム「fundingtool」の提供を開始した。
KeyHolder<4712>については、保有する同社株式の一部をミクシィ<2121>が設立したミクシィエンターテインメントファンド1号投資事業有限責任組合など5社に譲渡(20年12月)し、持分法適用関連会社となっている。
■27年12月期に向けた「J TRUST VISION」
25年12月期~27年12月期を対象期間とする「J TRUST VISION」では、最終年度27年12月期の目標値(証券業を除く)に、営業収益1568億円、営業利益174億円、当期純利益114億円を掲げている。
営業利益174億円(24年12月期実績62億円比112億円増益)の内訳としては、日本金融事業が保証事業と債権回収事業の安定成長により70億円から75億円へ5億円増益、韓国及びモンゴル金融事業が事業再構築完了により9億円から55億円へ46億円増益、東南アジア金融事業が成長加速により15億円から53億円へ38億円増益、不動産事業が安定的な事業拡大により3億円から11億円へ8億円増益、投資事業・その他事業が裁判関連費用剥落などにより15億円の損失から4億円の損失へ11億円増益の計画としている。
また27年12月期営業利益174億円は、日本・韓国・東南アジアの各金融事業において見通しを立てやすい事業領域でのベースラインの計画としており、さらなるアップサイド要因として、日本の証券業におけるプライベートバンキング事業の預かり資産1兆円への拡大、BJIの資本増強による貸出残高拡大、投資事業におけるGLH社向け債権回収などにより「174億円+α」を目指すとしている。
株主還元については「3ヶ年計画期間における配当性向30%以上+累進配当、および資本効率を意識した機動的な自己株式取得を実施予定」としている。
■25年12月期大幅増益予想で1Q順調
25年12月期の連結業績予想は営業収益が前期比5.4%増の1351億円、営業利益が77.5%増の111億円、親会社の所有者に帰属する当期利益が7.6%増の65億円としている。配当予想は前期比3円増配の17円(期末一括)としている。予想配当性向は34.7%となる。
第1四半期は営業収益が前年同期比2.8%減の306億57百万円、営業利益が21億34百万円(前年同期は2億73百万円の損失)、親会社の所有者に帰属する四半期利益が11倍の4億11百万円だった。
大幅増益(営業利益は黒字転換)と順調だった。売上面は販売用不動産の減少等により全体としても減収だが、利益面は日本金融事業が堅調に推移したほか、韓国及びモンゴル金融事業の業績改善、投資事業の回収金計上等が寄与した。
日本金融事業の営業利益は18.0%増の17億26百万円だった。クレジット・信販業務における貸倒引当金積み増しなどで費用が増加したが、債権回収業務やクレジット・信販業務が好調に推移して増収増益だった。
韓国及びモンゴル金融事業の営業利益は3億75百万円の損失(前年同期は12億86百万円の損失)だった。銀行業における利息収支減少等で減収だが、調達金利低下等による預金利息費用の減少、債権売却損の減少等により損失が減少した。
東南アジア金融事業の営業利益は12.6%減の8億96百万円だった。銀行業における貸出金増加等で増収だが、銀行業における預金利息費用の増加や貸倒引当金繰入額の増加等で減益だった。
不動産事業の営業利益は65百万円の損失(同34百万円の損失)だった。販売用不動産における販売収益減少により減収減益だった。投資事業の営業利益は3億53百万円(同9億16百万円の損失)だった。GL社に係る訴訟判決による回収金等を計上して黒字転換した。その他事業の営業利益は18百万円(同2百万円の損失)だった。
通期連結業績予想は据え置いている。セグメント別営業利益の計画は日本金融事業が5.9%増の74億59百万円、韓国及びモンゴル金融事業が83.7%増の17億71百万円、東南アジア金融事業が100.1%増の30億21百万円、不動産事業が161.8%増の9億46百万円、投資事業が49百万円の損失(24年12月期は15億95百万円の損失)、その他事業が2億20百万円の損失(24年12月期は2億11百万円の損失)としている。
日本金融事業は信用保証業務、債権回収業務、証券業務が順調に伸長して増収増益を見込む。韓国及びモンゴル金融事業は、短期延滞債権の回収に注力して貸倒引当金(損失評価引当金)繰入額の減少を見込むほか、大型不良債権のリファイナンシング等による貸倒引当金(損失評価引当金)戻入益を見込む。東南アジア金融事業は、インドネシアでは銀行業務の積極的な貸出残高の増強など、カンボジアでは富裕層を主要顧客とする貸出および運用提案を強化する。不動産事業は総合不動産会社として商品ブランド認知に注力する。投資事業は裁判費用等の回収コストを抑制しつつ、GL社に対する債権回収強化を図る。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株主優待制度は毎年6月末日対象
株主優待制度(詳細は会社HP参照)は毎年6月末日時点で1単元(100株)以上保有株主を対象として実施している。なお25年5月には、株主優待として贈呈予定の東京宝塚劇場公演チケットの公演情報および抽選方法を発表した。
■株価は戻り歩調
なお25年5月14日発表の自己株式取得(上限400万株または15億円、取得期間25年5月15日~25年12月30日)について、25年5月31日時点の累計取得株式数は0株となっている。
株価は4月の安値圏から反発して戻り歩調だ。低PER、高配当利回り、1倍割れの低PBRといった指標面の割安感も評価材料であり、出直りを期待したい。6月6日の終値は423円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS48円96銭で算出)は約9倍、今期予想配当利回り(会社予想の17円で算出)は約4.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結1株当たり親会社所有者帰属持分1184円52銭で算出)は約0.4倍、そして時価総額は約582億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)