【どう見るこの相場】選挙結果で政局不透明、市場は海外勢の動向と半導体活況に注目
- 2025/7/22 08:32
- どう見るこの相場

■参院選で与党過半数割れ、石破政権の行方不透明に
7月20日投開票の参議院議員選挙は、大手メディアの事前情勢分析通りに自民・公明の政権与党が改選過半数を割り、非改選も含めて参議院で少数与党となった。昨年10月27日投開票と衆議院議員選挙と同様の選挙結果で、これで石破茂首相は、衆議院選挙、東京都都議会議員選挙、今回の参議院選挙と3連敗したことになる。
にもかかわらず石破首相は、21日の記者会見で比較第1党を確保したことから、国政の停滞は許されず責任政党の党首として政権運営を担う続投の意向をアピールした。果たしてこの意向通りに政権運営が継続されるのかまだ不確かである。自民党内で「石破下ろし」に火がつかないのか、連立政権の枠組みを組み替え大連立などのサプライズがあるのかないのか、野党の出方次第では政権交代劇場に発展するのかしないのかなどなど、政局自体がなお流動的であるからだ。
■日経平均、選挙結果を織り込み済みか:海外勢の売り転換に警戒
となると、3連休明けのきょう22日の東京市場は神経質なオープニングになるはずである。まずネガティブ・ファクターとして昨年10月の衆議院議員選挙と今回の参議院議員選挙では、事前の株価動向が、まったく逆であることがあげられる。昨年10月の衆議院選挙では、大手メディアの政権与党の過半数割れの選挙情勢分析で日経平均株価は、公示日の3万9910円から下げ足を速め、3万7913円と売られ1996円安、5%の急落となった。ところが今回は、同じく過半数割れの大手メディアの事前情勢分析のもかかわらず日経平均株価は、公示日の3万9785円から持ち堪え、3連休前の18日には小反落したものの3万98819円と33円高し一時、4万円大々台にタッチする場面もあった。
選挙後は、昨年10月では事前に日経平均株価が1996円安していただけに織り込み済みとして買い戻しが先行して3連騰の急反発で、11月に入って早々、折からの米国の大統領選挙でのトランプ優勢が伝えられてダウ工業株30種平均(NYダウ)が最高値を更新したことにもサポートされて、日経平均株価もほぼ公示日水準をクリアした。 しかし今回は、事前に政権与党の過半数割れは織り込み済みとして小幅高しているのである。しかも、この小幅高を支えたのが連続して日本株を買い越していた海外投資家という需給要因もある。海外投資家は、政治の不安定化を最も嫌うとされているだけに、3連休明けにドデンと売り転換してこないかウオッチは欠かせない。
■既存政党後退で「多党化」進む日本政治、市場も同様の傾向
ただこれ以外は、マーケットを取り巻くカタリスト(株価材料)に参議院選の前と後では大きな変化はない。8月1日に最終期限が迫った「トランプ関税」の日米交渉も、参議院選挙の争点となった消費税減税に関連する財政拡張を見越した長期金利の上昇も、為替相場の円安・ドル高も、ブレークスルーされる兆しはない。ただ参院選後は、石破茂首相が、サンドバック状態でよりパンチを受けやすくなるということだけかもしれない。
そこで参考にしたいのが、一部専門家の選挙結果分析である。今回の参議院議員選挙では、自民・公明、立憲民主党を含めて既成政党が後退し、新興政党が台頭するパラダイムシフト(規範変遷)が起こったとしているからだ。政権交代可能な二大政党制から多党化制への転換である。若者の政治参加、SNSの影響力の拡大などが要因とされる。この分析通りなら、マーケットはすでに「相場多党化制」にトライしてきている。今年4月以来の「TACOトレード」は結局、米国のトランプ大統領の朝令暮改策に一喜一憂し株高・株安、長期金利上昇・下落、円高・円安が交錯する「日替わりメニュー」を続け、セクターローテーションとしてもハイテク株、バリュー株、円高メリット株、円安メリット株、地政学リスク関連株などなど循環物色し「多党化相場」を続けてきたことになる。
■九州経済、半導体活況で新局面へ:関連銘柄に熱視線
とすれば、ポスト参議院選挙相場では、このセクターローテーションで石破首相の「比較第1党」ではないが「比較第1セクター」が注目されるはずである。足元の「比較第1セクター」は何になるのか?「エヌビディア祭り」、「TSMC(台湾積体電路製造)祭り」ということになる公算大である。エヌビディアもTSMCも、好決算発表で株価が急伸し、エヌビディアの時価総額は世界初の4兆ドル超、TSMCのADR(米国預託証券)の時価総額も1兆ドル超となり、これが東京エレクトロン<8035>(東証プライム)やアドバンテスト<6857>(東証プライム)などの半導体関連大手の上場来高値追いをサポートして日経平均株価を押し上げ効果を発揮した。
なかでもTSMは、好決算発表とともに日本子会社(JASM)が計画していた熊本第2工場の年内着工も明らかにした。同工場は、第1工場が、2024年2月に開所し2024年12月に本格稼働を開始したあと、米国工場の建設を優先するとして着工の先延ばしも観測されていたもので、この表明を受けて3連休前の18日は、関連株が軒並み年初来高値を更新する「TSMC祭り」の様相を呈し、熊本第1上場が開所した2024年初に次ぐ「九州シリコンアイランド相場2.0」への期待を高めた。
この「九州シリコンアイランド相場2.0」は、引き続き業種も値ごろも所属市場もバラエティに富む。半導体関連のハイテク株はもちろん地銀株などのバリュー株、インバウンド関連株、福証単独上場銘柄などであり、「比較第1セクター」関連の出遅れ株として待機投資をするのも、一考余地がありそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)