【どう見るこの相場】「いさかい」だらけの政界と市場!選挙後の株価急騰は序章にすぎない?

■選挙惨敗の石破首相に退陣要求、政局混迷の行方

 まるで狂言の『乳切木』(ちぎりき)を観るようであった。同狂言は、「いさかい果てての乳切木」で、喧嘩が終わったあとに相手を威嚇する「乳切木(担い棒、ゲバ棒)」を持ち出してももう遅いと笑い飛ばす喜劇である。今回の場合は、「いさかい」は参議院議員選挙で、「乳切木」は日米関税交渉の合意に当たる。参議院選挙は、自民・公明の政権与党が過半数割れの惨敗となって日経平均株価は、4万円割れと続落した。その投開票日のわずか2日後の日米関税交渉合意では、相互関税の税率が当初の25%から15%に引き下げられるポジティブサプライズなって日経平均株価は、2日間で2290円高の急騰を演じた。この時間差が逆で、「乳切木」の日米合意が先になっていたら、石破茂首相の評価も真逆になり、参議院選挙の選挙結果もまったく違ったかもしれないのである。まさに「いさかい果てての乳切木」である。

 参議院選挙後も「いさかい」続きである。まず石破茂首相への退陣要求である。野党各党は、もちろん選挙結果の民意に従った退陣を要求し、あろうことか身内の自民党内部からも選挙結果の責任問題から退陣要求が日増しに高まっていると伝えられている。SNS(ソーシャル・メディア・ネットワーク)への投稿でも「#石破やめるな」が、「#石破やめろ」を上回るなど賑やかになっているようである。石破首相は、米国の相互関税対応の補正予算編成などを理由に続投の意向を表明しており、これが「乳切木」となるのかどうか、「政界の一寸先は闇」といわれるだけにウオッチは怠れない。

■日米中銀の決断で市場は激変か:利下げプレッシャーに挑むFRB、板挟みの植田日銀総裁

 今週週明け後の7月29日から7月31日まで相次いで開催される日米中央銀行の金融政策会合での利下げ・利上げ問題も、大きな「いさかい」が必至のようである。FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は、トランプ大統領が、またまたドル安・円高が米国の国益になるなどと発言して利下げプレッシャーを強めており、ハネ返して政策金利の現状維持を決められるのか世界のマーケットが固唾を飲んで見守っている。一方、日本銀行の植田和男総裁も、参議院選挙の争点となった物価高問題に関して、コメ価格に続いて猛暑による鶏卵価格が高騰する「エッグ・ショック」の再来も懸念されるなか、不透明材料としてきた日米関税交渉が一応の決着をみせただけに、石破内閣による相互関税対応の経済対策との板挟みにあって利上げを決められるか正念場を迎えそうである。

 8月8日をピークに前週からスタートした企業決算の発表も、一種の「いさかい」に違いない。前週末24日、25日に決算を発表したルネサスエレクトロニクス<6723>(東証プライム)、三菱自動車<7211>(東証プライム)、キヤノン<7751>(東証プライム)などは株価が急落しており、米国の相互関税の影響や円高・円安の方向性などが企業マインドに影響し、業績ガイダンスへの葛藤が強まる展開も想定されるからである。

■利上げならメガから地銀株へ、据え置きなら穴株不動産が逆行高

 「いさかい」続きの8月相場では当然、事前・事後の「乳切木」銘柄の見極めがパフォーマンスを大きく左右するはずである。そこで今週の当コラムでは、植田日銀総裁が利上げを決行するか、現状維持にとどめるかに従って「乳切木」銘柄へアプローチすることとした。しかもこの「いさかい」は、どちらが正解でどちらがフェイクになるのではなく、時間差によりどちらも正解になる可能性も含んでいることかもしれないのである。となるかと利上げ決定なら利ザヤ拡大の銀行株であり、為替相場も円高・ドル安に振れるなら円高メリット株である。一方、現状維持ならローン金利の負担増が回避される不動産株とする二正面・時間差作戦である。不動産株は、参議院選挙の争点となった海外投資家への規制強化問題が逆風となる「いさかい」も想定されるなかでの逆行高期待であり、「乳切木」銘柄中の「乳切木」銘柄となる展開も想定される。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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