【どう見るこの相場】観光立国日本の強み発揮、関税無縁の訪日消費が外貨獲得の柱に

■インバウンド関連株は「トランプ関税」のリーチ圏外で小型割安株特性を発揮

 「たかが1%、されど1%」である。米国のトランプ大統領が、8月1日に発動する日本への相互関税の税率を25%と通知してきた。「解放の日」とデモンストレーションして発表した今年4月2日の税率は、24%だった。わずか1%のアップである。しかし、この1%が、何だか1980年代の日米自動車摩擦当時に、米国の労働者が、日本車をハンマーで打ち壊した光景が、昨日のようにまざまざと思い起こさせる。ことほど左様に、トランプ大統領は、日本の民主主義と平和外交の基本になっている日米関係が、国民感情的に分断されることをいとわないようにも感じられる。

■米国相互関税、8月1日まで発動猶予で市場に安堵感広がる

 ただマーケットの初期反応は、4月2日とはやや異なった。4月2日は、株安、債券安、ドル安のトリプル安の「トランプ・ショック」となったが、今回は、株も債券も為替もそこまでは崩れていない。相互関税の発動が、90日間停止され7月9日まで猶予され、この交渉期限が今度は8月1日まで延長されたことがポジティブに評価されているのかもしれない。またまた「トランプはいつも尻込みする(TACO)」を期待する「TACOトレード」先取りである。ということは、8月1日まで米国との間に妥協が見込めないケースでは、トリプル安に見舞われるリスクも覚悟しなくてはならないことにもなる。

 このケースでは、「トリプル・リスク」の圏外に位置する輸出関連株が急浮上するはずである。輸出関連株なのに「トランプ関税」が課税されないからだ。そんなフェイクっぽい関連株があるのかと疑われそうだが、あるのである。インバウンド(訪日外国人観光客)関連の国際観光産業株である。国際観光は、「見えざる貿易」ともいわれており、立派な外貨獲得産業だからだ。しかも外国人観光客が、わざわざ日本に足を運んで外貨を消費してくれるのだから、トランプ大統領の課税の手が届かないリーチ圏外に位置する。

■2024年訪日客消費額、半導体等電子部品を抜き外貨獲得第2位に

 この外貨獲得額の大きさはバカにならない。2024年の訪日外国人旅行者数は3686万9000人(前年比47.1%増)、その消費額は、8兆1257億円(同53.1%増)と過去最高に達し、外貨獲得額1位の自動車の18兆3260億円の輸出額に及ばないものの、半導体等電子部品の6兆1543億円を上回り第2位にランクインした。先行きも基幹産業化が予測されており、検討が開始された第5次観光立国推進基本計画でも、前計画の目標が踏襲され2030年に外国人観光客6000万人、消費額15兆円を目指すことになっている。しかも資源小国の日本の「貿易立国」政策は、米国との間で数々の貿易摩擦を生じさせてきたが、観光資源大国の日本の「観光立国」はその心配の圏外に位置することになる。

 足元のインバウンド需要も、好調に推移している。日本政府観光局が今年6月18日に発表した今年5月の月次訪日外客数は、369万3330人と前年同月を21.5%上回り、5月として過去最高だった前年同月を上回った。今週16日には今年6月の推計値が発表予定であり、好調持続を確認することになる。夏のバカンスシーズン入りを前に為替相場も、トランプ関税の影響で円安・ドル高に傾いていることからインバウンド関連株にはフォローの風となりそうだ。バリュー株揃いのホテル・旅館株、ブランド品を格安販売のリユース株、「爆買い」が続いている100円ショップ株、鉄道株、航空株などに幅広く網を張り「夏の陣」に備えることも有望となりそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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